幼なじみ彼女の労い
冬休みが開けたばかりということもあり、眠気に苛まれながらも、何とか最寄り駅で降りる。
「おかえり。生徒会お疲れ様」
「ただいま。お迎えありがとな」
俺が改札を出ると、ひょっこりこちらを覗いていた香織が、出迎えてくれた。
「生徒会、上手くいってる?」
香織には、先輩がいなくなって、人数が少なくなっていることを伝えていたので、心配してくれている。
「うーん、人数が足りないのがしんどそう」
「やっぱり、言ってた通りだね。あーあ、私が同じ学校だったらな〜、迷うことなく入ってたのに」
「そういえば、あれ以来、なんにも部活入ってないんだよな?」
ふと気になり、香織に聞いてみた。
「うん。入ってない。今まで頑張ってたし、もういいかなって」
「それなのに、同じ学校だったら生徒会に入ってくれるのか?」
「優斗が困ってるし、一緒に居れる時間も増えるもん。悩むことある?」
「愚問だったな」
微笑みながら答えてくれる香織に同意する。
「人数が足りてないこと、谷本くんとか桃ちゃんに相談してるの?」
「いや、まだ香織にしか話してないな」
「じゃあ、2人なら助けてくれるかもよ?」
確かに、谷本と青原さんの人柄と人脈、そしてコミュ力なら、生徒会に入ってくれる生徒を見つけてくれるかもしれない。
そう考えていると、香織が付け加える。
「もしかしたら、2人が生徒会入ってくれるかも?」
「いやいや、2人ともテニス頑張ってるわけだし」
「聞いてみないとわかんないよ。2人とも優しいし、考えてくれるよ」
今度、聞いてみるだけ聞いてみるか。
香織は何か思い出したような表情で、手をぽんと鳴らして話を変える。
「あっ、2人の話で思い出したけど、谷本くんの誕生日、どうなった?」
「ああ、それなんだけど、谷本は用事があるみたいで、プレゼントだけになりそうだ」
「そっか。直接のお祝いはまた次の機会だね」
気づけば家の前まで帰ってきた。
「んー、あとはまた明日かな」
「……今日、お母さんたち、遅くなるみたいなの。ちょっと、寄っていかない?」
香織の控えめなお誘いに喜んで答え、香織のお家にお邪魔する。
香織に促されるままに、ソファに座り、寄り添うように座る。
「谷本くんの誕生日プレゼント、どうしよっか」
「慌てて買わなくて良くなったし、ゆっくり選べるように、休みの日にするか」
「そうだね。桃ちゃんも誘ってみる?」
他愛ない話をしていくうちに、安心感に包まれる。
「桃ちゃんはどんなプレゼントにするのかな」
「うーん、どうだろう、な。お菓子、とか?」
優しい温もりを感じていると、電車の揺れとはまた違う誘われ方をしてくる。
「優斗、もしかして眠たい?」
「ご、ごめん。シャキッとする」
「いいのいいの。休み明けだしね。あっ、そうだ」
香織はすすっと少しだけ俺と距離を開けて、膝の辺りをポンポンと叩きながら話す。
「ちょっと休んでいいよ。ほら、おいで」
「いや、大丈夫だ。悪いし」
「もう、遠慮しないの」
香織は有無を言わさず、俺の体を自分の方に倒し、俺の頭をももの上に乗せた。
「ほら、彼女の膝枕だよ〜」
香織は楽しそうに俺の頭を撫でながらそう話す。
香織の顔を見えるように上を見ていると、こう、顔の手前に柔らかそうな壁が目に入り、雑念がえげつなく湧いてくるので、香織では無い方を向く。
「そっち向いちゃうんだ。まぁいいけど」
俺は引き続き、香織に頭をなでなでされ続ける。
うぬぬ、なんだかんだ眠たくなってきてしまった。
「ほら、ちょっとだけでも休んだら?ちゃんと起こしてあげるから」
「わ、かった。ありがと……」
香織のお言葉に甘えて、膝をかりて、休む。
「よしよし。いい子だね〜」
「香織……楽しく、なってない、か?」
「気のせい気のせい。ほら、ね〜むれ〜」
好きな人の声に包まれ、眠りについた。




