幼なじみと文化祭 その4
俺は香織たちと別れたあと、クラスのお化け屋敷に参加するべく、自分のクラスへと向かっていた。
去っていく時の香織の様子が、トラウマの中の香織と似ている気がして、今の関係について心配になりつつも、今は頭の隅に追いやって、文化祭に集中する。
自分のクラスに辿り着くと、谷本が入口で受付をしていた。今日顔を合わせるのは初めてなので挨拶をしつつ言葉をかける。
「おはよう、谷本。繁盛してるか?」
「おう、橋崎。そこそこだ。そっちは見回りか?」
「あぁ、ここまではな。店番、変わるよ。」
俺の言葉を聞いた谷本は、少し驚いてから、頭をかいて言う。
「橋崎、ちょっとは文化祭楽しんだのか?仕事ばっかりしてるんじゃねぇの?」
「十分楽しませて貰ってるよ。谷本こそ、まだ回ってないだろ?」
ちらりと見たシフト表が合ってればそのはずだ。
「まぁそうだがな。おっ、そうだ。なら俺の話し相手にでもなってくれよ。」
「はぁ?大人しく変わればいいものを……」
「お互い様だ。」
そうして、しばらく谷本と受付に座って話しつつ、お客さんが来たら対応をしていた。
まぁ、こんなのも文化祭の醍醐味だよな。
後々、クラスでの役割を終え、ついに文化部発表の時間が迫ってきた。
俺は、体育館のステージ横で、マイク片手に待機しつつ、再度台本を確認していく。
そこに副会長が心配して来てくれた。
「橋崎くん。緊張とか大丈夫?」
「はい、何とか。舞台袖で準備してる文化部の人達見てたら、司会くらいで緊張してる場合じゃないなって思いましたよ。」
「うん。大丈夫そうだね。それじゃ、頼んだよ。」
そう言って副会長は自分のクラスに向かっていった。
さぁ、いよいよ文化部発表の始まりである。
深呼吸をしてから、大きく息を吸い、発声する。
「皆さま、お待たせ致しました!文化部発表の開始時刻となりましたので、始めさせていただきます。
文化祭の、この舞台のために、たくさんの準備をしてきた文化部の発表を、どうぞ、お楽しみください。」
何度か噛みそうになりながらも、できるだけハキハキと意識して言い切ると、観客席から拍手が起こった。
拍手が収まるのを待ちながら、観客席を見回し、言葉を続ける。
「午後の部、最初に舞台に上がるのは、吹奏楽部の皆さんです!どうぞ!」
吹奏楽部の部長にマイクを変わり、俺は一旦下がる。
ここからは、時間をオーバーしてしまわないよう、一応のタイムキーパーをしながら、観客席の見回りをしなければならない。
俺は、ステージ横で待機している先生に声をかけたあと、ストップウォッチ片手に体育館の後ろ側へと移動し、観客席を見渡す。
すると、右端の方で、1人だけ後ろ、俺の方を見ている香織に気づいた。
香織は、俺に向かって小さくガッツポーズをする。
「頑張れっ!」と言われているようで、嬉しかった。
香織に向かって小さく手を振り返し、自分の仕事へと戻った。
ここから、何事もなく、上手く行けばいいんだが。
俺は、僅かな不安を感じながら、見回りと司会を精一杯務めた。
* * *
何とか無事に、司会をやりきり、文化部発表を終えることが出来た。
トリを務めた軽音楽部のライブの盛り上がりは凄かった。あまりに盛り上がりすぎて、隣にいる先生の顔が強ばってた。
さて、文化祭の体育館の出し物も終わり、あとは各クラスの出し物のみ、ラストスパートだ。
生徒会メンバーで二手にわかれ、ベスト出し物の集計と、写真部とのスライドショー作成を行う。
写真選考に時間がかかったものの、許容範囲である。
その後も忙しなく動き回り、両方とも形になった。
それからしばらくして、文化祭閉場のアナウンスが流れる。
残念そうな表情の生徒や、やりきった表情の生徒などと共に、片付けを行っていく。
準備とは違い、片付けは全校生徒が協力して行うので、あっとゆう間に学校は元の姿に戻った。
程なくして閉会式となり、ベスト出し物が発表される。今年は3年生の焼き鳥の出店が1番投票数が多かったらしい。
その後、スライドショーが流された。何とか文化祭の思い出が詰まった感じにできたと思う。
最後まで流れたあと、拍手が起こり、ホッと胸を撫で下ろす。
生徒会長と、校長先生の挨拶をもって閉会式も終わりを迎えた。
その後、クラスで帰りのHRを終えた。クラスのメンバーは打ち上げに行くらしい。
俺は生徒会の方でまだ用事あるからと断り、生徒会の部室にむかった。
生徒会メンバーと顧問の先生とで、ささやかに文化祭お疲れ様会をした。
無事に文化祭を終えることができた達成感をみんなで分かちあった。
ほどほどにお疲れ様会を楽しんだ後、俺は帰りの電車に揺られていた。
「何とか、無事に終わって良かったな……」
文化祭の余韻に浸りつつ、カバンからスマホを取り出すと、香織からLINEが届いていた。
かおり『文化祭お疲れ様!楽しかったよ』
かおり『今日、いつ頃帰ってくる?』
香織もちょっとトラブルがあったものの、文化祭を楽しんでくれたようだ。
優斗 『今電車だから、あと30分くらいだな』
手癖で返信してから、なんで帰る時間を聞いてきたんだろうと疑問に思ったが、結局香織からの返信も、答えも出ることはなく、駅に着いた。
いつもの帰り道を歩き、自宅が見えてくると、隣の家の前で香織が立っていた。
「あっ、おかえり、優斗。」
「おう。ただいま。なんかあったのか?」
帰りの時間を聞いたのは、こうして会うためだとしても、なんの用事があるのか疑問に思い、香織に聞く。
「優斗、疲れてるとこ申し訳無いんだけど、ちょっと話、できる……?」
目に見えて様子の違う香織に驚き、なんの話が始まるのだろうと、俺の頭は、不安で包まれた。




