表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/136

幼なじみ彼女と年越し


「今年はありがとうございました。来年も、どうぞよろしくお願いします」

「こちらこそ。良いお年を」


だいぶ時間が経ち、いい頃合となったので、香織とご両親は自宅に帰ることになった。


「優斗、後で電話してもいい?」

「もちろん。待ってるな」


家に戻り、それぞれお風呂等を済ませたあと、リビングでくつろいでいると、スマホが震えた。


『優斗、今大丈夫?』

『大丈夫だぞ。電話するか?』

『さっきはそう言ったんだけど、せっかくだから、会って話したいな。暖かくして、家の前で会わない?』

『そうだな。そうしようぜ』


俺としてもせっかく一緒に居たのに、2人で話す時間がほとんどなかったこともあって、会いたい気持ちがあったので、喜んで返信しつつ、両親に一言伝えてから、家の外に出る。


「あっ、優斗、さっきぶりだね」

「待たせちゃったな。冷えてないか?」


玄関先で段差に座っている香織の隣に座り込んで、香織の両手を取って、暖めるように握り込む。


「うん。大丈夫だよ。それより、無理言ってごめんね?お風呂も入ったのに」

「それはお互い様だろ?気にするなって」


香織の服装は厚手のコートを着ているので分からないが、髪は綺麗に下ろされている。


「それもそっか。今年、終わっちゃうね」

「そうだな。あと少ししかない」

「なんだか、あっという間だったなぁ〜」


そう言って星が僅かに見える、夜空を見上げる香織。


「色んなことがあったな」

「ね。優斗は何が1番思い出に残ってる?」


俺は今年、というか、5月からの約半年を思い出した。放課後の帰り道に香織と再会し、困惑しながらも文化祭行って、本当のことを知って、香織の相談に乗って、夏休みにこれでもかと言うくらい遊んで、付き合い始めて。


本当に色々なことがあったが、一番の思い出と言われたら、あれかな。


「俺は、香織の誕生日かな。多分、一生忘れない」

「ほんと?私の誕生日、そんなに楽しかった?」

「もちろん。すっげぇ思い出に残ってるよ。来年は今年を越えられるように頑張るよ」


嬉しいという気持ちが溢れ出ているのが感じられる笑顔の香織。


「香織の一番の思い出は?」

「そうだな、私はね。夏休み前に、優斗に助けて貰ったことかな」


先輩とのいざこざのことだな。


「あの時ね。信じてた人に酷いことされて、もしかしたら、誰も信じれなくなってたかもしれない。けど、優斗が、私は同じようなことをしてしまったことがあるのに、助けてくれたから。私にもう一度、信じる勇気をくれたから」


香織は俺の手とぎゅっと繋いで続けて話す。


「それだけじゃなくて、美咲ちゃんやお義母さんたち家族や、桃ちゃんや谷本くんっていう、友達を通じて、信じていいんだよって、教えてくれた」

「俺は何もしてないよ。香織は……」

「ううん、優斗のおかげだよ。だから、ほんとに、ありがとね」


俺の方が、と思いながらも、いい言葉が見つからず、続けて香織が口を開いてしまった。


「実はね?」


香織は俺の方をしっかり見て、話し始める。


「お風呂入ったり、寝る準備したりしてる時に、去年の今頃のこと、思い出して。こうして優斗と仲良しに戻ってるどころか、付き合ってるなんて、去年の私が知ったらびっくりするだろうなぁって、思ったんだ」


「それは俺も同じだよ。まさか、トラウマの相手と、付き合ってるなんて」

「あはは、そのことについては、ほんと、ごめんね」


今、自分でトラウマと言葉にして気づいたが、確かに、俺は中学から高一までの約4年間、香織とのことで、トラウマを背負っていたが、今となっては。


「??」


俺が視線を向けた先で、きょとんと首を傾げる香織。

俺の、香織についてのトラウマは、香織が取り払ってくれた。香織と再開して、香織と仲直りして、香織とたくさんの時間を過ごした。


この時間がなければ、俺はきっと、今もクラスでは落ちこぼれ、谷本にも見捨てられていたかもしれない。


「さっきさ、香織は俺のおかげだって、お礼を言ってくれたけどさ。俺も同じだよ」


どう言葉にすれば、きちんとこの気持ちが伝わるのだろうか。言葉を選び、紡いでいく。


「俺も、香織と再開して、勉強教えて貰ったり、一緒に遊んだりして、沢山のものをもらったよ。もう、香織無しの人生なんて考えられないくらい」

「もう、なにそれ」


笑いあってから、そっと口付けを交わそうとした、その時。

香織のスマホから、アラームが鳴り響いた。


「あっ、今年が終わっちゃった」

「そっか、もう新年かぁ」


年が変わる前と、何も変わらない夜空を見上げながら、香織と話す。


「今年は何が待ってるかな」

「楽しいことがいっぱいだといいな」

「大変なことがあっても、私たちなら大丈夫だよ」


微笑む香織にそう言われると、そんな気がしてくる。


「あけましておめでとう。香織」

「うん。今年も、よろしくお願いします」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ