雪合戦開催!
すみません、遅くなりました。
「雪たくさんだー!」
「積もってるね〜」
車に揺られること数十分。まともに動いている交通手段が車関連しかないため、混雑していたが、無事着くことができた。
「それじゃ、また夕方に迎えに来るからね」
「わかった。ありがとう」
父さんにお礼を言って、青原さんから送られてきた、公園への地図を見ながら歩く。
近くに着くと、谷本たちの声が聞こえてきた。
「いやー、高校に入って、友達と雪で遊ぶ日が来るとはな。何があるか分からん、なっ!」
「隙あり!」
「……青原よ、雪玉をぶつけたということは、ぶつけられる覚悟があるって事だよな?」
早くも雪で遊び始めている様子の2人に、俺達も合流する。
「おやおや、来たね〜?」
「よっす、橋崎」
「来てやったよ」
公園と言っても、遊具はベンチがいくつかと、ちょっとした滑り台があるだけの公園だ。
「優斗はなんで上から目線なの?」
「面白い人たちだね!」
一応会ったことはあるが、こうして一緒に遊ぶのは初めてなので、改めて美咲を紹介する。
「もう知ってると思うけど、今日こうして集まるきっかけを作った美咲だ」
「橋崎美咲です!お兄ちゃんがお世話になってます!今日は私もお世話になります!」
「元気でよろしい!」
紹介もそこそこに、美咲は青原さんと香織に捕まって、一緒に雪遊びをし始めた。
「なぁ橋崎よ。ほんとお前、前世で何やったんだよ」
「どういう意味だ?」
遊んでる3人の方を指さしながら、話す谷本。
「お隣の幼なじみに中村さんがいる上に、素直で元気な妹までいるなんて。信じられん」
「まぁ確かに、美咲に関しては俺と同じ親から生まれたとは思えない時はあるけどさ」
割となんでもそつなくこなせる美咲。香織みたいになりたいと言う言葉に嘘はないんだろうとわかる。
「さてと、橋崎、せっかく来たんだ。身体動かそうぜ」
いよいよ雪だるまを作り出した女子3人を尻目に、谷本が立ち上がる。
「いいけど、何するんだ?」
「そりゃあ雪合戦だろ」
そういうと、谷本は少し離れたベンチに移動してから、説明し始めた。
「お互い、雪の積もったベンチを遮蔽に使って、相手の雪玉を避けながら相手に当てる。先に3回当てた方が勝ちな!」
「わかった。手加減しないからな」
「こっちのセリフだ!そんじゃ、この雪玉が地面に落ちたらスタートな。行くぞっ!」
谷本が上に向かって投げた雪玉が、ちょうど真ん中辺りに落ちた。
俺は遮蔽を使い、左右から顔を出して当てようとするが、お互いになかなか当たらない。
「そんなんじゃ当たんねぇぞ〜!」
「お前もだろ……ってやば」
思いっきり振りかぶって、振り抜いて投げられた雪玉が、ベンチの上を掠めて飛んで行った。
「い、威力えぐない?」
「ビビったか〜?」
「くっそ」
負けじと雪玉を投げ返すものの、当たる気配がない。
「どうしたどうした〜。もう終わっ!?」
「??」
谷本の声が途中で途切れたのに気づき、頭を上げて周囲を確認する。
「……香織?」
「えへへ、当てちゃった」
雪玉を投げ終わった姿勢の香織と、雪玉が直撃した様子の谷本。
「急にどうしっ!?」
「ふっふっふ、油断大敵であるぞ。橋崎くん」
「そうだぞお兄ちゃん」
今度は俺の背後から青原さんと美咲が不意打ちしてきた。
俺と谷本は顔を見合せ、頷き合う。
「さっき、谷本が言ったよな?」
「おう。言った」
「雪玉当てていいのは、当てられる覚悟があるやつだけだってことだ!」
反撃に出る俺と谷本。
「ひゃー!逃げるよ美咲ちゃん!」
「待ってー!」
「逃がすかっ!」
谷本に投げていたそれよりも、緩めに固めた雪玉を2人に当てる。
「くっ、手強い」
「それそれー!」
香織の相手をしている谷本は苦戦しているようだ。
「えっ、マジ?」
あの2人、投げた雪玉が空中でぶつかってるんだけど……。どゆこと……?
その後しばらくして。
結局決着はつかず、引き分けということになり、続いてみんなで大きな雪だるまを作ることに。
「それじゃあ、私たちが頭で」
「俺らが体担当な」
それぞれ雪玉を大きくしていく。
「頑張れ〜」
「ちょっとは手伝ったらどうだ……?」
まだ1人で押せるサイズだからいいけどさ。ここでもサボるのかよ。
「美咲ちゃん、ゆっくりだよ」
「うん!」
「上手い上手い!」
相変わらず、青原さんのコミュ力はすごいな。香織も初日で下の名前で呼び合うようになっていたし、美咲に至っては、香織レベルに懐いてないか?
「谷本、手伝え」
「おうよ。このための体力温存よ」
雪玉を大きくし始めてからしばらくして。調子に乗って大きくしすぎた雪玉は、持ち上げられるか怪しくなっていた。
「ちゃんと離れとくんだぞ」
「ちゃんと離れてるから安心して!それより、2人も怪我しないでね!」
雪玉同士を転がしてギリギリまで近づけてから、谷本と息を合わせる。
「行くぞ。せーのっ」
かろうじて持ち上がり、頭が乗った。
「いやー、頑張ったな」
「だね〜。立派」
「これつけよ!」
「さっき見つけてきたもんね」
美咲と青原さんは、手頃な葉っぱや石を顔のパーツとしてつけていった。
「結構可愛くなったな」
「写真写真!」
「ちょーっと待ってね」
青原さんはスマホスタンドを取り出し、立てかけた。
「タイマーセットするよー!」
俺たちは雪だるまを挟んで並び、それぞれポーズを取る。戻ってきた青原さんは、雪だるまの前でしゃがみこんで、ピースサイン。
カシャッとシャッター音が鳴り響き、写真が撮れた。
「後で、グループに送っとくね!」
「そんじゃ、俺も送っとくわ」
「谷本、いつの間に写真撮ったんだ?」
谷本はスマホをヒラヒラさせながら、そう話す。
「俺がただサボってるだけだと思ったか?」
「うん」
「即答!?」
こればっかりは日頃の行いが悪いのでは。
ガヤガヤと話しながら、俺は、寒い中外に出ると、面白いもんだな、なんて思った。




