幼なじみ彼女とクリスマスの約束
存分にショッピングモールで遊んで、自宅最寄りへと帰ってきた。
「う〜ん、今日も楽しかった」
香織が伸びをしながら、そう言葉にする。
俺も相槌をしながら、プレゼント交換の後のことを思い出す。
小腹がすいたという青原さんの提案で、フードコートで過ごしたり、俺以外3人のスポーツトークを聞いたり、ひっさびさにグッズを見ながら最近見たアニメの話をしたり。
楽しくイブを過ごすことができた。となれば、次はクリスマス当日の話だ。
「香織、明日、なんだけどさ」
「うん」
思えば、付き合い始めてから、こんな風に、香織を誘うのは初めてかもしれない。
そんなことを思いながら、俺は口を開く。
「明日、デートしないか?イルミネーション、綺麗らしいからさ」
そう聞くと、香織は微笑んで答えてくれる。
「喜んで。えへへ、楽しみだな。やっぱり街のイルミネーション?」
「ああ。そうしようぜ」
香織の学校方面へ、電車で終点まで行くと、いわゆる都会っぽい街に着く。その辺はこの時期、イルミネーションで彩られ、デートスポットとして有名なのだ。
「何時頃集合にする?」
「せっかくだから、沢山一緒に居たいのは山々だけど、今日も帰るの遅くなっちゃったしね。家族と過ごす時間も大切だから」
「そうだな。俺もそう思う」
特に、香織の誕生日は俺たちのことを考えてくれたわけだし、なんなら出かけないという選択肢も……。
「あっ、もちろん、お父さんたちからは、気にしないでいいって言われてるんだ。だから、あんまり気にしないでね」
俺の表情が曇ったのを見て、香織が教えてくれる。
「そっか。ちょっと安心したけど、お礼考えないとだな」
「また2人で考えようね」
そういうと、香織はこの話はおしまいと言うように、明日のことを話し始める。
「そういうことだから、夕方からにしよっか。ご飯食べて、イルミネーション見て、みたいな」
「了解。じゃあ、電車乗ることも考えて、5時前くらいに行くか?」
「あっ、それなんだけど……」
一呼吸置いてから、続けて話し始める香織。
「明日は、現地集合にしない?街の駅前のクリスマスツリー目印で」
「いいけど、なんでだ?」
クリスマスでカップルが多いとはいえ、このご時世何があるか分からないから、できるなら香織と一緒に居たいと思っている。
「いつも家を出たところで待ち合わせだから、変えてみたいなって。デートの待ち合わせってちょっと憧れるし」
「普段から駅で待ち合わせる事結構あるのに?」
今日なんかも、2人ではなかったけど、駅で待ち合わせだった。
「それとこれとは話が別でしょ!制服じゃなくて私服だし」
「それはそうかもだけど」
「だから、ね?クリスマスだし、いいでしょ?」
俺としてはより長い時間一緒にいたい気持ちが強いものの、香織がそういうなら仕方ないか。
「わかった。言われてみれば、確かに待ち遠しい感じするし」
「ありがと!それじゃ、また明日!」
「あっ、最後に聞いてもいいか?」
香織は「なにかな?」と小首を傾げて聞いてくる。
「明日、俺の髪型とか、どっちがいい?」
いつも通り、いわゆる陰キャっぽいメガネモードか、文化祭の時のように、キメッキメモードか。この間の香織の誕生日も、実は少し迷ったのである。
香織は少し考える素振りをしてから、少し意地悪な微笑みと共に答えてくれる。
「私はどっちの優斗も好きだから、優斗のしたい方でいいよ。でも、今は言わないでね?」
「わかったけど……?」
「今それ言っちゃったら、待ち合わせの楽しみが無くなっちゃうから」
俺が香織の言葉と表情で、言葉を失っているうちに、「また明日ね」と言って、家に入っていった。
香織の置き土産に頭を悩ませつつ、家に入る。
「お兄ちゃんおかえり!明日、香織お姉ちゃんと会う?」
リビングに戻って早々に、美咲がそんなことを聞いてくる。
「おう、一緒に出かけるぞ。夕方からだけど」
「じゃあ、お昼は時間あるってことだよね!?」
「そうだな。なんかやりたいことあるのか?」
そう聞くと、母さんが台所から話し始める。
「クリスマスってことで、家族で何かしようって話をしてたんだけどね。優斗は香織ちゃんとお出かけだと思ってたから、美咲は悩んでたのよ」
それを聞いて美咲の方を見ると、少し照れたように早口で話し出した。
「と、ともかく!お昼時間あるんだったら、お昼は私たちとお買い物行こ!」
「もちろんいいぞ。どこ行くかは決まってるのか?」
「うん、お買い物とお昼ご飯」
「わかった。じゃあちゃんと朝起きないとだな」
そう言って俺は部屋に戻る。
香織の提案通り、お昼の時間を空けておいて正解だったな。1日忙しく、充実したクリスマスになりそうだと思いながら、明日の準備を始めた。
なおこの後、明日の服装とモードをどちらにするのかということと、改めて待ち合わせと考えると、どんな感じで会うことになるのかという、2つのことで、頭を悩ませることになった。




