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幼なじみ彼女と友人とクリスマスイブ その1


「お〜わった〜!」

「お疲れ。補習回避おめでとう」

「ありがと〜!橋崎くんと彼女ちゃんのおかげだよ」


テストが全て返ってきて、心配だった数学も赤点回避が確定し、バンザイしてる青原さん。教室の中で、周りで生徒がワイワイしてるから、名前を出さないでくれている。

俺は俺で、今回は勉強量が控えめになってしまったものの、青原さんの先生を頑張った分、基礎が固まったのか、ちゃんと点が取れた。

ただ、不満があるとすれば。


「へぇ〜、橋崎くんは最高93点ですか。俺は、98点ですけどもね!」

「くっそ、調子に乗りやがって……」


俺たちに付き合って、ついにまともに勉強をしてテストに挑んだ谷本に、点数でマウントを取られることだ。


「全教科合計では勝ってるから」

「けど?最高点は……?」

「あぁもう!お前の勝ちだよ!」

「いぇー!」


ここぞとばかりに煽る谷本。これまでのテストで俺に負けてたの、どんだけ悔しかったんだよ。


「私からしたら、2人ともすごいけどね。赤点回避で喜んでる私って」

「いやいや、青原さんも頑張っただろ。大切なのは点数じゃなくて、過程だと思うんだよな」

「いや、点数大事だろ」


辛辣だなぁおい!


「橋崎くんの優しさが身に染みるよ。谷本くんはもうちょっと気遣いを覚えて!」

「気遣いは覚えてるよ。気遣ってないだけで」

「このっ!谷本くーん!」

「わっ、やべっ」


両手を上げて威嚇する青原さんと、それを見て離れる谷本。何してんだお前ら……。


「あっ、そうそう。今日さ、テニスコートが霜で使えないから、部活休みになるみたいなんだけど、橋崎くんたちの予定空いてる?」


谷本を追い払い、思い出したように話し始めた青原さん。


「んー、そういえばなんにも決めてないな」

「えー!今日イブだよ!?クリスマスイブ!付き合って初めてのクリスマスなのに、なんにも決めてないの!?」


言われてみれば確かに。いやぁ、12月に入ってからは香織の誕生日のことでいっぱいいっぱいだったし、それが何とかなった後はテストだったし、お互いゆっくりしようってことで、休みの日も珍しく合わなかったし。


「でも、青原さんに誘われたわけだし、ちょうど良かったな。後で香織にも連絡しとくよ」

「……誘っといてなんだけど、2人で過ごさなくていいのかね?」

「そういう気持ちも無くはないけど、香織の誕生日にだいぶ2人で過ごしたし、クリスマス当日もあるしな。友達と過ごすクリスマスもいいもんだろ?」

「それはそうだけど」


少し悩む様子の青原さん。どうしたもんかと考えていると、谷本が戻ってきた。


「なんの話してんだ?」

「今日のこと後の話だ」

「あー、そういやテニス部休みって話だったな」

「なんでそんな興味無さそうなんだよ」


そう聞くと、谷本はニカッと笑って答える。


「そりゃ、今日は出る気無かったからだな」

「ほんとにそれでいいのかお前……」


笑いながら「いーのいーの」と話す谷本。その相手をしていると、「よしっ」と青原さんが口を開く。


「それじゃ、放課後に香織ちゃんに連絡して、OK貰えたら遊んで帰ることにしよ」

「異議なし」

「かしこまった〜」




そして、放課後。


「お待たせ〜。いつもお迎えありがとね」

「こちらこそ、わざわざ御足労いただきまして」

「なんで丁寧語?」

「こらっ、橋崎くん。香織先生の前ですよ。慎みなさい」


俺が怒られた。何だこのノリ。


「2人してどうしたの?」

「勉強を教えていただいた感謝を表しております」

「先生のおかげで補習を免れることが出来ました」


あぁ、そういうこと。香織の勉強会に感銘受けすぎなのでは。俺も感謝しかないけど。

そんな尊敬の眼差しを受ける香織は、手を振りながら、答える。


「そんな、大したことしてないよ。それに、私のおかげじゃなくて、みんなが頑張ったからだよ」

「くっ、どこまでも聖人なお方……」

「おい橋崎!前世でどんな徳を積んだら、こんなパーペキ美少女と幼なじみになれるんだ!?」


最近、この4人の中で、香織の立ち位置が上がりまくってるな。もちろん、本気とおふざけ半々くらいだろうけど。


とはいえ、香織がちょっと困ってるので助け舟を出すことにする。


「まぁ、香織へのお礼は遊びながらするとして、とりあえず移動しようぜ」

「それもそうだな。行くか〜」

「いこ、香織ちゃん」


今日も今日とていつものショッピングモールである。12月だけでもう4回目くらいなので、そろそろ飽きてくるが、割と新しい発見もあるのが面白いところだ。


「そういえば、なんだけど」


目的地に行く途中、香織が話し始めた。


「3人とも仲良いけど、みんな苗字で呼んでるよね。何か理由あるの?」

「んー、理由がある訳じゃないけど、何となく?」

「橋崎くんなんて、私に対してさん付けだし」

「そこはお互い様では?」


呼び名か。出会った当初は考えたこともあったけど、なんだかんだ苗字で定着したんだよな。


「せっかく一緒に遊ぶくらい仲良くなったんだし、呼び名考えない?」

「私はさんせーい」

「ちゃんと呼びやすくて、その人だって分かる呼び名ならいいぞ」


呼び名、というかあだ名?を考える流れになり、青原さんが好き勝手に案を出す。


「じゃあまず橋崎くんね。橋崎優斗、だから……、ハッシー、ザッキー、ゆうちゃん!」

「勢いはいいけど、テキトーだなぁ」

「私は好きだけどね。優くん」


ちょっとドキッとしたものの、香織に呼ばれたからであって、普段から呼ばれるのはなんか、違和感がすごそう。


「優ちゃん、お勉強しまちょうねぇ〜?」

「谷本、いや、大ちゃん、そう呼ぶってことは、呼ばれる覚悟があってのことでちゅね?」

「くっ、しまった。乗るんじゃなかった」

「優ちゃん大ちゃんってこと?」

「「勘弁してくれ」」


悪ノリに悪ノリで返したら、定着しかけた。危ねぇ。


「うーん、なかなか難しいね」

「考えてみれば、学校のやつらになんて思われるやらだもんな」

「まぁ直ぐに変えなくても、思いついたらでいいんじゃないか?」

「それもそっか。別に、呼び名で仲の善し悪しが変わるわけじゃないもんね」


今日のところは据え置きということになり、俺たちはショッピングモールの中を歩いていった。


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