幼なじみ彼女の誕生日 その2
「うん、いい感じだな」
料理はできた。あとは食べる前に温め直せば良い。
ということで、リビングに戻り2人の様子を伺う。
「香織お姉ちゃん手加減して!」
「あはは、ごめんね〜?」
「あー!」
何やらオセロをやっているようだが、香織が無双してるらしい。あんなに差がつくことあるんだ。
1面同じ色にする動画とか見たことあるけど、勉強したら香織もできるんじゃなかろうか。
「見事に負けたな」
「あっ、お兄ちゃんおかえり〜。ちゃんとできた?」
「おう、バッチリだと思う」
「結局何してたの?」
美咲が立ち上がり、カバンを持って戻ってきた。
「まぁまぁ。後で分かると思うから。それより、私そろそろ帰らなきゃだから、香織お姉ちゃんにプレゼント渡していい?」
「ほんと?用意してくれたんだね」
「私とお母さんたちからです。どうぞ!」
美咲はラッピングされた小さめな袋を香織に手渡した。
「開けてもいい?」
「もちろん!」
俺もみんなが何をプレゼントしたのかは知らないので、少しドキドキする。
「わぁ、素敵なハンカチだね。これ、名前の刺繍?」
香織が手に持ったハンカチを見ると、隅っこのほうにローマ字で香織の名前の刺繍が施されていた。
「ありがとう。大切に使う」
「気に入って貰えて良かった」
2人の会話が途切れたタイミングで、俺からもプレゼントを渡す。
「次は俺たちの番だな。まずは、谷本と青原さんの2人から」
紙袋を取り出し、手渡す。
「お菓子たくさんだ。それに、フォトフレーム?」
「多分、お菓子が谷本で、フォトフレームが青原さんかな」
フォトフレームのデザインを見る限り、青原さんのセンスな気がする。
「あっ、メッセージカードも入ってる」
『香織ちゃん、誕生日おめでとう!これからも思い出作っていって、ぜひぜひ橋崎くんとのツーショット入れて飾ってね!』
「優斗、ちゃんと桃ちゃんと谷本くんにお礼言っといてね。私もLINEするけど、会えるのはいつになるかわかんないから」
「わかったよ。伝える言葉、考えといてな」
最後は俺からだ。
「はい、香織。誕生日おめでとう」
今までのプレゼントと比べると、少し大きい袋を香織に手渡した。
「優斗のプレゼントは何が入ってるのかな?」
香織は袋を開け、中身を取りだす。
「ぬいぐるみだ〜!この子、可愛いね」
俺がプレゼントに選んだのは、可愛らしい小鳥のぬいぐるみだ。出かけた先に、ぬいぐるみがあると、香織は一度は目を奪われているイメージなので、ぬいぐるみにした。
「どこに置いておこうかな」
「一旦、部屋に置いてきたら?あと、そろそろ晩御飯食べる時間帯だし、私は帰るね」
「そうする。でも先に、美咲ちゃんの見送りだね」
美咲は香織とそう話すと、香織の視界に入らないように、俺にウインクする。
玄関に向かいつつ、美咲にハンドサインを送る。
「美咲ちゃん、今日はありがとう。また遊びに行こうね」
「もっちろん!」
そう言って、美咲は帰って行った。
香織も美咲も楽しかったようで良かった。美咲に感謝である。
「それじゃ、私はプレゼントを部屋に置いてくるね」
「ああ、行ってらっしゃい。あと香織、お腹すいてるか?」
「えっ?まぁ空いてるかな」
「わかった」
そこまで話して、香織はプレゼントを持って自分の部屋へ、俺はキッチンへと向かった。
一旦保存していた料理を再び火にかけ、温め直しつつ、主食として、パンを電子レンジとオーブンで焼き、付け合せのサラダも用意する。
「よし、出来上がりっと」
出来上がった料理を、お皿に盛り付けていると、香織が部屋から戻ってきた。
「いい匂いするけど、何か作って……えっ!?美味しそうなビーフシチュー……これ、優斗が作ったの?」
「おう。さっき抜けた時にな。なるべく簡単なやつを選んで、練習もしたから、美味しくできたと思うんだけど、口に合わなかったらごめんな」
香織と一緒に料理をテーブルに並べ、向かい合って座る。
「「いただきます」」
2人で声を合わせて挨拶をする。
香織がビーフシチューを口運ぶの様子を、ドキドキしながら見守る。
「うん、美味しい!」
「よかった、ほっとしたよ」
味見はしていたものの、心配していたので、ほっと胸を撫で下ろす。改めて、俺も1口食べてみる。
「美味しくできてるな、良かった」
「優斗、料理出来たんだね」
「いやいや、基本的なことだけだよ。これも、簡単なレシピをネットから拾ってきて、その通りに作ったわけだし。市販のルー使ってるしな」
何とか俺でも作れそうなレベルの料理を、母さんに相談した上で、1週間練習したからな。
「私、料理苦手なんだよね。調理実習とか、洗い物ばかりやってたよ」
「えっ、なんか意外だな」
「ほら、覚えてない?小学校の時、私、包丁で指切っちゃって。それからお母さんに止められるようになっちゃったから」
そんなこともあった気がする。ちょっと切れちゃった程度だったとは思うが。
「俺ができたんだし、香織もできるよ。俺がもっと上手く料理できるようになったら、一緒に作ろうぜ」
「じゃあ、また優斗が作った料理を食べれるの楽しみにしてる」
「そう言って貰えると、俺も嬉しいよ」
香織は美味しそうにビーフシチューを食べてくれていて、俺も嬉しくなる。
「まだおかわりもあるから、良かったら食べるか?」
「じゃあ、貰っちゃおうかな」
「パンもあるけど、どうする?」
「……それもお願い」
俺も香織もおかわりして、鍋が空っぽになるまで、香織と一緒に、ビーフシチューを楽しんだ。




