幼なじみ彼女の誕生日 その1
香織と約束してから約10日。青原さんや谷本という頼もしい友人や、家族に相談し、協力してもらい、準備を進めてきた。
お泊まりの許可はもらえたし、誕生日プレゼントも用意できた。準備万端だ。喜んでもらえるだろうか。
俺の誕生日の時と同じように、朝はおめでとうのメッセージだけに留めておいて、本番は放課後である。
学校では青原さんと谷本からの誕プレを預かった。ちゃんと渡すことを約束する。
そして、放課後。
全力ダッシュしたおかげで、いつもより1本早い電車で帰ってくることができた。これで確実に駅で香織を迎えることができる。
そしてしばらくして、改札を出てくる香織の姿が見えた。
「おかえり。今日もおつかれ」
「ありがと〜。優斗もお疲れ様」
いつものように、2人で帰り道を歩く。
「今日はどんなお祝いをしてくれるのかな?」
「それを言ったらサプライズじゃなくなるからな。楽しみにしといてくれ」
「それもそっか。じゃあ聞かない」
あえて誕生日のことではなく、今日学校であったことの話をしながら、自宅まで帰ってくる。
「んじゃ、準備が出来たら、教えてくれ」
「わかった。また後でね」
一旦それぞれの家に帰り、お互い準備を済ませる。
香織はご両親の出発を待ったり、着替えたりの準備があるし、俺もお祝いの準備や、お泊まりの準備を確認しなきゃならない。例の文化祭モードになるべく、髪をセットする。ワックスを使うほどきっちりではないが、コンタクトにして、ドライヤーで髪を上げる。
「た、ただいま……」
「おかえり。間に合ってるぞ」
「よ、良かった〜」
家族に話をした時、一緒にお祝いしたいと言う話になり、俺だけじゃなく、家族を代表して美咲も一緒にお邪魔することになったのである。
もっとも、美咲が参加するのは夕方までだが。
全力疾走で帰ってきたのであろう、美咲は息を切らしながらも準備を済ませていく。
俺と美咲の準備が整った辺りで、スマホがなった。
「準備できたよ。何時でもどうぞ」
「こっちもだ。それじゃ、これから行くな」
諸々が入ったバッグを両手に持って、玄関へ。
「自信もって行くのよ〜。香織ちゃんによろしくね」
母さんに見送られつつ、家を出て、隣の家のチャイムを鳴らす。
ガチャと音を鳴らしながらドアが開き、香織の姿が見える。
「香織お姉ちゃん!誕生日おめでとう!」
「おめでとう。香織」
いきなりお祝いの言葉から入ったからか、香織は驚いた様子で口を開く。
「2人とも、ありがと。優斗はコンタクトにしてきたんだね。美咲ちゃんも、今日は髪下ろしてるんだ」
「そう!香織お姉ちゃんも下ろしてるかな〜って思ったから、合わせてみた」
「俺も、今日はここぞという時だと思ったからな」
「わざわざありがとね。ささ、上がって上がって」
「お邪魔します」と兄妹で挨拶をして香織の家に上がらせてもらう。
香織も、服装が制服から、清楚なイメージの淡い水色のカーディガンとそれによくあったワンピースに変わっていた。髪もいつものポニテではなく、降ろしている。少し寒そうだが、今日はもう外に出ないし大丈夫だろう。
香織はリビングに案内してくれて、座るよう促してから、こちらを振り向く。
「まずは何するのかな?」
「時間もあんまりないからね。お兄ちゃん、よろしく!」
「仰せのままに」
家から持ってきたゲーム機を取り出し、リビングのテレビに繋ぐ。
「まずはゲームだね?負けないよ?」
「私だって特訓したからね」
前にも遊んだことのある、某配管工の男の人達が車でレースするゲームをチョイスした。
まずは1レース、3人で遊ぶ。
「やっぱりお兄ちゃんも強ーい!」
「惜しかったのにな〜」
「ギリギリの勝利だった……だと」
前にやった時は割と余裕で勝ててたのに。ちゃんとやらないと勝てないぞ、これ。
勝ったり負けたりしながら、しばらく遊んだ後、俺は香織の相手を美咲に任せ、離脱する。
「あれ?優斗はゲームやめちゃうの?」
「ちょっと準備することがあるから。2人はゲーム楽しんでてくれ」
「香織お姉ちゃん。次はルール変えてやろ!」
「えっ、わ、わかった」
よし、ナイスだ美咲。今日この場に美咲がいるのは、もちろんお祝いをする目的もあるが、その実は香織の相手をしてくれるデコイ。
2人が楽しそうに遊んでいる間に、台所へ向かう。もちろん、事前に使用許可はいただいている。
「ばっちりだな。よし」
両家両親との合同作戦会議(死ぬほど気まずかった)にて、台所の使用許可と、当日の材料確保、そして当日までの料理の特訓が決められ、今日までやってきた。
誠心誠意相談した甲斐あって、香織の家の冷蔵庫には見覚えのある食材が並んでいるし、俺の家の晩御飯は数日間ある料理が連続した。
「練習通りにやれば、おいしくできるはずだ」
元々、家族の帰りが遅い日は、俺が料理していたこともあって、基本的なことはできる。数日間特訓したおかげで、最後は比較的舌が肥えている父さんに、合格を貰えた。
調理道具の場所を確認し、手順を振り返って。
「よし。やるぞ」
俺は食材と包丁を手に取って、調理に取り掛かった。
* * *
よし、お兄ちゃんは料理を始めたかな。
私はできるだけ、香織お姉ちゃんをこっちに引き付けないとだ。
「香織お姉ちゃん、このコース得意?」
「あっ、前にやった時に走ったことあるとこだね。優斗には勝ったかな〜」
「私は負けないからね!」
よしよし、この調子でゲーム楽しんでれば、1時間くらいすぐだね。
私たちの晩御飯が数日間連続で同じメニューになったんだから、ちゃんと成功してくれないと困る。
ゲームをしながら、心の中で、お兄ちゃんにエールを送る。
「頑張れ、お兄ちゃん!」




