幼なじみ彼女の誕生日の予定
週が開け、12月に入った。青原さんの誕生日を祝ったばかりだが、次は香織の誕生日がやってくる。
俺の誕生日、香織にたくさんのものを貰った。だからこそ、して貰った以上に、お祝いしたい。プレゼントサプライズなど、様々考えた結果、あることにたどり着いた。
「俺、サプライズとか、香織に気付かれず準備する自信ないわ」
冷静に、割と普段から内心を見透かされてる香織に対して、いい方向のことであろうと、隠しきれるきがしない。
なんなら気づかれて、香織を不安にさせてしまうところまで想像がつく。
「なら、いっそ開き直れば?」
休み明けにも関わらず、俺の相談を聞いてくれていた青原さんの言葉を聞いて、谷本も考えを話す。
「確かにな。祝うってことが大切なわけで、日にちとか場所とか、用意するために隠し事してますよ〜って話してれば、中村さんは安心するよな」
「私たちが橋崎くんに話して安心したように、香織ちゃんに素直に伝えればいいんだよ」
確かに。別に伝えたところで、香織が嫌な思いする訳では無いのか。
「それが良さそうだな。伝えることにする」
「誰にでも得意不得意あるし、無理して変な感じになるよりずっといいと思うよ。それはそうと、誕生日13日だったよね?」
「ああ。あってるよ」
青原さんと谷本は続けて話す。
「俺たちもその日までに中村さんに誕プレ用意するんだけどさ」
「代わりに渡してくれるかな?私たち、今度は部活休めそうになくて」
「わかった。ちゃんと渡すから、忘れずに俺に預けてくれ」
そんな話をした日の放課後。
自宅最寄り駅で香織と待ち合わせ、一緒に帰る。
「香織、早速なんだけど、ちょっと聞いてくれるか?」
「なになに?どうしたの?」
「香織、今月誕生日だろ?その準備を、始めようと思います」
香織はそれ言っちゃうんだ、と言わんばかりに驚いた表情をしていたが、ひとまず言ってしまおうと、続けて話す。
「それで、色々準備する中で、香織に内緒にすることもあると思うんだ。んで、多分香織は、俺が隠し事してることに気づく」
「うん、気づいちゃう自信あるかも」
「だろ?だけど、なんか隠してるな〜って思っても、心配しないでくれ。ただ香織の誕生日を祝うために、準備してるだけだから」
そこまで話すと、香織は察したように手を軽く叩いて口を開く。
「私が心配したり、不安にならないように、先に教えてくれたんだね。ありがと。楽しみにしとくね」
「おう。楽しみにしててくれ」
「それと、せっかくこの話になったから、優斗に1つお願いしていい?」
香織は首を傾げてそう聞いてくる。断る理由もないので、「なんでもどうぞ」と答える。
「あのね、誕生日の事のお祝いの事なんだけど、場所は私のお家にして欲しいなって」
「そりゃ、香織やご両親が迷惑じゃないなら大丈夫だけど、どうしてだ?」
香織は少し言葉にするのを躊躇ってから、意を決したように口を開く。
「昨日、ちょうど誕生日の話になって。お父さんとお母さんがね、私たちは休みの日に香織の誕生日をお祝いするから、当日は優斗くんと祝ってくれって言ってくれてるの」
「なんか申し訳なさを感じるな。ちゃんと俺からもお礼言っとかないと……」
俺の誕生日は香織と家族、両方から祝ってもらったから、誕生日当日の香織を独占するのは、嬉しい気持ちもあるけど、後ろめたさも感じる。
けれど、香織のご両親がそう言ってるなら、お言葉に甘えようか、とそこまで考えたところで、あることに気づく。
「今の、ご両親の話はわかったんだけどさ。それと、香織の家で祝うことって関係あったか?」
むしろ、香織の家でお祝いするにしても、香織のご両親とタイミングをずらせばいいのでは。
「えっと、ね。お父さんたち、金曜日は2人でご飯食べて、外で泊まって帰るって、言ってて」
「…………はい?」
なるほど〜、つまり?香織の誕生日は、香織の家でお祝いできるようにするために、ご両親は次の日まで帰ってこないと。なるほどなるほど。
「だから、その、夕方から、誕生日が終わる時、次の日の朝まで、ずっと一緒にいれる、よ?」
香織のその言葉を聞いて、心臓の音が大きくなる。
否応なしに、その、色々と想像してしまった。いや、しょうがないも思いたい。俺も健全な男子高校生なんだもの。
「そ、そりゃ、なんだ。えっと、楽しそうというか、楽しみというか、だけど。香織は、いいのか?」
戸惑いが隠しきれず、テンパって言葉が上手く繋がらない。
けれど、俺の意図は香織に伝わったようで、頬を赤く染めながら、答えてくれる。
「……うん。私は、誕生日を、優斗と2人で、過ごせたら、嬉しいな……」
「わかった。香織が、そういうなら。俺も、香織の家で過ごすつもりで、お祝いを考えるよ」
「た、楽しみに、してるね!そ、それじゃ、そういうことだから!」
いつの間にか自宅前まで帰ってきており、香織は伝えるべきことは伝えたといった様子で、家に入っていった。
俺も家に入ろうと、鍵を取りだしつつ、ドアを開けようとしたところで、しゃがみこむ。
「誕生日、俺、耐え切れるのかな……」
香織のご両親にご挨拶に行った時、ご両親からお願いされた約束を思い出して、気を引き締めて行かなければと、心に決めつつ、ドアを開け、家に入った。




