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幼なじみと文化祭 その2

クラスでの出し物も決まり、放課後がやってきた。いつもなら直ぐに帰るところだが、今日から生徒会活動が忙しくなる。


部室棟へと歩いていく生徒たちとは反対方向へと歩みを進め、図書室や情報教室の方面へと向かう。


学校の中心部分から少し離れた場所に生徒会執行部の部室は存在する。ここから1番近い部屋は職員室なため、少し落ち着かない。


「こんにちは〜、お疲れ様です。」


声をかけながら部室に入ると、決して広いとは言えない部屋の中に、メンバーの1部が既に集まっていた。


「おう、お疲れ〜」

「橋崎先輩、お疲れ様です。」


先輩である広兼(ひろかね)生徒会長と、1年生の後輩ちゃんである。


会長や後輩ちゃんと話していると、続々とメンバーが揃っていった。


今年度の生徒会メンバーは、会長、副会長を含めた3年生3人、俺たち2年生2人、後輩の1年生3人の計8人である。


生徒会の顧問の先生も到着し、文化祭に関する会議が始まった。


文化祭における生徒会の仕事は大きく3つである。


まず、事前の準備。体育館に椅子を並べたり機材を運んだりテントを立てたりすることや、当日のタイムスケジュールの確認、パンフレットの作成などがこれに当たる。


次に、当日の仕事。チケットの販売にパンフレットの配布、学校全体の見回りに、文化部の発表の司会などだな。


最後に閉会式だ。開会式は前日にはもう体育館に椅子が並べられているため、放送部が挨拶と注意点を放送する形になっている。


閉会式では、各学年のベスト出し物の発表やスライドショーの発表がある。ベスト出し物の方は、生徒や来場者に投票してもらったものを集計する形なので、それほど苦ではないが、問題はスライドショーの方である。


これは準備の様子と文化祭当日の様子を、写真部や先生、生徒会で撮影したものを、まとめ、選んで作成しなければならない。一応テンプレートは用意されているが、忙しい当日の閉会式までの間に作らなければならないため、とても大変である。


これらに加えて、クラスの方にも参加しなければならない。

言うならば生徒会における甲子園とも言える忙しさと仕事量なのである。



以上の3つのことについて、担当や時間など、会議の中で決めていく。

時間も限られているため、次々に決めていっていくと、文化部発表の司会についての話となった。


「次に、文化部発表の司会の分担だが、橋崎、やってくれないか?」

「えっ?俺ですか?」


会長に指名され、困惑しながら答える。


「例年通りなら、副会長が行うのでは?」


文化部にとって、文化祭での発表は大きな意味がある。そのため、時間管理や会場の雰囲気づくりなど、重要な役割がある司会は、毎年会長や副会長といった人物が行っていた。


正直、力不足なのが目に見えている。


「そうなんだが、このままいくと、副会長の仕事量が多くなりすぎる。3年生にとって、最後の文化祭だ。副会長はこれまでもよく仕事をしてくれていたし、最後くらい、楽しむ時間を用意したいと思うんだ。」


「もちろん、前日までに司会のコツや、台本なんかは橋崎に合わせて、やりやすい形で用意するよ。お願いできないかな?」


会長だけでなく、副会長からもお願いされてしまった。先生もこちらを見ているし、断れそうもない。


「……、わかりました。これまでお世話になってきましたし、俺で良ければ、引き受けます。」


「ありがとう。助かる。」


「私も、手が空いたら助けに入るから。最初からずっと任せる訳じゃないから、安心して。」


不安でいっぱいだが、引き受けた以上は頑張ろう。




その後も、仕事をそれぞれのメンバーに割り振り、ようやく会議が終わった。

毎年こうやって決めるものの、だいたいアドリブで動くことが多くある。気を抜かずに行かなきゃな。



会議が終わり、帰る頃には下校時刻ギリギリになっていた。


学校から駅までの道を、生徒会のメンバーと共に歩く。


「橋崎先輩、文化祭ってやっぱ忙しいですか?」


会議が終わり、思っていたより大変に感じたのか、後輩くんが不安そうに聞いてくる。


「うーんそうだな、忙しいのは間違いないな。」

「やっぱりそうですよね……、友達と回る約束してたんですけど、無理そうっすね。」


余程楽しみにしてたんだろうか、目に見えて気を落としている後輩くん。このままでは可哀想だと思い、口を開く。


「まぁ自由時間が無いわけじゃないよ。ご飯買って食べたりとか、クラスを1、2個回るくらいならできる。当日になって仕事が増えることもあるけど、その逆になることだってあるしな。」


「本当ですか?そうだとありがたいですね……」

「あぁ、なんだかんだ楽しく終わると思うぞ。」


実際去年は、色々と走り回ったが、結局は楽しかった記憶がある。




そんなことを話していると駅に着いた。電車に揺られ、最寄りの駅に到着する。


いつもよりも騒がしい改札を通り、駅を出ると後ろから声がかかった。


「あれ?優斗?今日は遅いんだね〜。」


そこにはラケットとリュックを背負った香織がいた。


「あぁ、生徒会の活動でな。」

「そうなんだ。生徒会ってどんなことするの?」

「うちの高校もうすぐ文化祭なんだよ。その準備だな。」

「文化祭6月なんだ。私のとこは10月だった気がする。6月は体育祭があるんだ。」


そんな話をしながら自宅へと歩いていく。話していくうちに、俺の役割についての話になっていった。


「俺、文化部発表の司会をやることになってな。」

「司会?すごいじゃん。大抜擢だね。」


香織はなんでもいい方向に捉えるのがすごいよなぁと思いつつ話を続ける。


「それがな、司会は去年まで副会長がやってたんだよ。俺なんかにできるのか心配でな……」

「ふーん?私は、優斗なら大丈夫だと思うけどな。」


香織はちらりと俺の方を向き、微笑みながら続ける。


「勉強も、できないとか向いてないって言ってたけどできたじゃない?だからきっと、司会も上手くできるよ。」


なんでだろうか、不安に思っていたことでも、香織に言われるとそんな気がしてくる。


「ありがとう、俺、頑張ってみるよ。」

「うん!それで、文化祭っていつなの?」

「再来週の土曜日だな。」

「再来週か〜、よし、私、遊びに行くね!」


えっ!?香織がうちの文化祭に来る?

俺の中に、嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちが生まれる。


「部活、大会前で忙しくなるんじゃなかったのか?」

「そうだけど、たまには休みも大事だよ。」


それはその通りである。


「楽しみにしてるね!」


はにかむ様な笑顔でそう言葉にする香織。


「生徒会の仕事があるから、多分、一緒には回れないぞ?」

「友達も誘ってみるし、大丈夫だよ。優斗が仕事してるとこ見ててあげる。」

「勘弁してくれ……」


文化祭に香織が来ることになり、楽しみ3割、不安7割程の感情になりながら、自宅まで2人で並んで帰った。

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