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幼なじみ彼女と友人の誕生日 その1


「おはよ!行こっか!」

「あぁ、行こう」


谷本や青原さんと約束していた日がやってきた。

ひっさびさにラケットの入ったカバンを肩にかけ、香織と合流する。

今日の香織は、テニスをすることがわかっているので、動きやすそうな格好で、いつものポニーテールだ。


「楽しみだな〜。今日は優斗のかっこいいとこも見れるんだよね?」

「あんま期待しないでくれな……」


前回の反省を活かして、一応壁打ちで数日慣らしたものの、現役で部活を頑張ってる谷本達には全然届きそうにない。

かと言って、たまにしかない俺のいいとこを見せるチャンスなので、密かに気合いを入れているのだが、どうなる事やらだ。


「それにしても、割と早めの時間集合なんだね」

「あぁ、それはな。この間、誕プレ買いに行ったのが青原さんにバレて、怒られて、今日早く集まって沢山遊ぶということで、怒りを収めて貰ったから」

「それは仕方ないなぁ」


そんな訳で、俺にしては珍しい休日の早起きだ。

電車に揺られること数十分。以前テニスをするために行ったテニスコートを目指して歩いていく。


「こっちの方来ないから新鮮だぁ〜」

「学校とか目的ないと来ないもんな」


キョロキョロと周りを見回しながら歩く香織に、俺の知ってる範囲で案内をしつつ、待ち合わせの約束をしている、テニスコート近くのコンビニに着いた。


「飲み物とか買って待とうぜ」

「そうだね。水分大事」


スポーツドリンクや軽食を買って、コンビニを出る。


「おっ、来てたんだな。おっすおっす」

「おっす谷本」

「おはようだね」


俺の持っているカバンよりしっかりしたラケットバッグを背負った谷本がやってきた。


「それ背負ってるとガチ勢感が凄い」

「実際部活でやってるんだからガチ勢だろ」

「サボりまくってるくせに」

「たまにだよたまに」

「ほんとかなぁ〜?」

「ついに中村さんにも疑われ始めた!」


そんな話をしていると、主役がやってきた。


「ごめーん!遅くなっちゃった」

「全然。コンビニでなんか買うか?」

「ううん、大丈夫!」

「それじゃ、行こっか」


集まって早々に、テニスコートに向かい、受付をしてコートに入る。


「すごーい、本格的だね……」

「確かに初めてだとびっくりするかもね〜」

「うっし、青原、やるぞ」

「よーし!」


準備運動もせず、いきなりバシバシ打ち合い始める青原さんと谷本を尻目に、香織と準備運動をする。


「2人とも〜!寒くなってきたんだし、ちゃんと準備運動しないと怪我しちゃうよ!」

「大丈夫大丈夫!動きながら慣らすから!」

「いきなり全力で打ったりしないって!」


香織と一緒に入念に準備運動をしてから、コートに入る。


「中村さん、このラケット使ってくれ」

「ありがとう。使わせてもらうね」

「香織ちゃん、一緒にやろ〜」

「橋崎、また走らせてやるよ」

「舐めやがって……」


俺と谷本、青原さんと香織で打ち合う。


「香織ちゃんさっすがー!ちゃんと私のとこに返ってくる!」

「ゆっくりだから、何とかね」


なんて、楽しそうに打ち合う2人を横に。


「おらぁ!」

「俺まだ今日打ってないんだけど!?」

「そんなこといいつつ、前より打ててるな」

「そりゃ、どうも!」

「けどまだまだ。ほれっ」

「だあぁ!ドロップするなぁ!」


谷本に遊ばれる俺。くそう……結局こうなるんだなって……。


しばらく楽しく打ち合った後、前と同じように、試合をする流れになった。


「んじゃ、どうする?実力的には俺と青原が分かれた方が良さげだけど」

「せっかくだから、まずは優斗とやりたいかな」

「おっけ、んじゃその方向で」


香織と俺、谷本と青原さんのペアで試合をすることになった。


「これ大丈夫かなぁ……」

「まあなんとかなるよ。2人のことだし、最初だし、本気でやってくることはないでしょ?慣れていこ」

「そうだな。俺が後衛で香織前衛でいいか?」

「うん。打てそうなやつは打ってくね!」



「とりあえず、橋崎走らせるか」

「香織ちゃんに対しては、割と打ててるけど、まだ慣れきってはないだろうから、要所以外は手を若干抜く感じで」

「おっけ。橋崎には遠慮なしでいいよな?」

「谷本くんはともかく、私は本気で打っても返ってきそうな雰囲気はあるね」



お互いに作戦会議を終え、サーブ権を決める。先に谷本達がサーブだ。

いよいよ試合開始である。

まずは、谷本のサーブな訳だが……。


「ふんっ!」

「うわっ」


谷本の打ったサーブは、気持ちいい音を立てて、コートに突き刺さった。


「よっし!」

「取れるかぁ!」

「頑張りたまえ〜」


次は香織のレシーブということで、さっきのようなサーブが飛んでくることはなかった。少し安心したのもつかの間、俺は走らされまくり、失点。


「ごめんね、なんにもできないかも……」

「最初だから、仕方ない。ミスってもいいから、思い切って動いてこ」

「うん、わかった」


1セット目は、谷本のペースに負けて、あっという間に取られてしまった。

2セット目も取られたものの、3セット目は、何とか慣れてきて、俺もついていけるようになってきたし、香織もスマッシュのように強打できるようになり、取ることができた。


4セット目、香織のサーブからである。


「ねぇ、サーブって、1回は失敗していいんだよね?」

「ああ。1回は問題ないぞ」

「それじゃ、ちょっと挑戦してみるね」


サーブは2回連続で失敗すると、失点となってしまうが、1回はミスでも問題ない。

何に挑戦するんだろうと、隣から香織の様子を見ていると、香織は集中した様子で深呼吸してから、高くサーブトスをあげた。


「えっ!?」


前衛についていた青原さんの驚く声が聞こえてくる。

香織は少しの助走から飛び上がり、テニスというよりは、バドミントンやバレーボールに近い空中姿勢から、ラケットを振り抜いた。


「ふっ!」

「なっ……」


鋭いサーブが飛んでくるとは想像もしていなかったのであろう。前目にポジションをとっていた谷本の横を、ボールが貫いていった。


「はいった、かな?」

「……あっ、ああ。多分」

「やった!いい感じに打てたよ!」


嬉しそうに俺にそう言ってくる香織。


「おっ、おう。すごいサーブだったな」


驚きすぎて上手く反応出来ない。俺の立場ねぇよ。


「香織ちゃん、そりゃ、スゴすぎだよ……」


青原さんの、もはや呆れすら含んでそうな呟きが聞こえてきて、同意の頷きを返しておいた。


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