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幼なじみ彼女と友人の誕生日プレゼント

学校からの帰り道、香織に谷本と約束したことを伝える連絡を入れる。


『今日、帰ってから谷本と出かけることになった』

『帰ってから?珍しいね』


香織からは思っていたよりも早く返信が返ってきた。


『ラケットのガット張り替えに行こうって話になってさ』

『なるほど~。詳しい話は会ってから聞こうかな』


ちょうどどこまで話したものかと考えていたから、助かった。


しばらくして電車を降り、香織と合流する。


「おかえり。今日もお疲れ様」

「香織もお疲れ」


一言交わし、自宅への道を歩き始める。


「それで、ラケットのガット張り替えに行くんだったよね」

「ああ。俺の使ってたラケットも埃かぶってるし。引っ張り出さないと」

「それ、私も一緒にいっていい?」


なんとなく、そう言ってくるような気がしていたけど……。


「楽しくないかもだぞ?青原さんいないし」

「ちょうどいいよ。出かけるなら、桃ちゃんへの誕生日プレゼント選ぼうよ。ほら、谷本くんもいれば同じもの選んじゃう心配もなくなるし」

「確かに……」


いわれてみたら理にかなっている気がしてきた。


「帰るの遅くなっちゃうけど、優斗と一緒なこと伝えれば大丈夫だと思うし」

「そりゃずっとそばにいるけど。そうなると俺も母さんたちに伝えとかないとだな」


ついでに谷本にも連絡しとこうと、スマホを取り出す。


『今日の約束のやつ、香織も一緒で大丈夫か?』

『かまわないけど、中村さんのほうは大丈夫なのか?』

『香織からの提案なんだ。青原さんの誕プレ選ぼうってさ』

『な~るほど。了解』


これで良しと。


「それじゃあ、準備した後に家の前集合で」

「わかった。またあとでね」


時間は有限ということで、最近にしては珍しく最短の帰宅時間だ。

部屋に戻り、着替えたりラケットを引っ張り出してから、リビングに降りる。


「あら、おでかけ?」

「ああ、ちょっとラケットの手入れしにいってくる」

「なんだか懐かしい響きね。遅くなるの?」

「なるべく早く帰るつもりだけど、遅くなるかも。また連絡する」


母さんと軽くやり取りをしてから、家を出る。

朝と同じようにマフラーを巻きつつ、香織を待つ。


しばらくしてから、香織も家を出てきた。


「ごめんね、お待たせ」

「急だったし、全然待ってないから大丈夫だ」


急いでくれたことが香織から伝わってくる。けれどきちんと身だしなみが整えられていて、さっきまでとは印象が違う。服装が違うのがあるけれど、一番は髪型だ。


「その髪型、初めて、だよな?よくに似合ってる」


帰り道ではポニーテールだったが、今はおろしながらも、一部が後ろで結ばれている。


「初めてであってるよ、ありがと。優斗に教えてもらったアニメのヒロインの子の髪型真似してみたんだ」

「いわれてみれば。道理で見覚えがあるわけだ」


さっき指摘した時にちょっと不安だった理由が分かった。

それにしても、着々とオタク文化に触れて行ってるな……。それに、そのヒロインって俺の推しなんだけど。狙ってやってるのかな……。

ひそかにときめきつつ、駅へと歩きだす。


「どこのスポーツ店に行くの?」

「前に、体育祭の帰りに行ったファミレスあたりにあるらしい」


あのあたり、地味にいろんな店あるんだよな。まぁ、でかいショッピングモールに人とられてるっぽいんだけど。


再び電車に乗り、目的の駅についた。


「よう、さっきぶり。中村さんはちょい久々だな」

「そうだね。最近の学校の優斗の様子聞いてもいい?」

「谷本、いらん事言うなよ」

「こういう時、とがめられるのは俺なんだよな。わかってた」


がやがやと話しながら、谷本の案内でスポーツ店についた。

お店の奥へと入り、テニス用品が並んでいるところへ向かう。途中で香織はバドミントンのコーナーに向かった。やっぱりバドミントン、好きなんだよな。


「そういや、橋崎はガットにこだわりとかあるのか?」

「いや、ないな」


そんなことを考えていると、谷本に聞かれたので素直に答える。中学で大会に出ても、せいぜい一勝か二勝できればいい感じだったし、こだわりも生まれようがない。


「おけ。そしたら俺と同じだな。そしたらこれでいいな。コスパ良し男さんだぜ」


ラケットとガットを2セット店員さんに預け、ガットの張り替えをお願いする。

二本合わせて3時間ほどで仕上げてくれるようだ。よろしくお願いしつつ、香織と合流し、待ち時間で近くのショッピングモールに向かう。


「さてと、桃ちゃんの誕生日プレゼントどうしよっか。優斗と谷本くんは何にする?」

「俺はちょっとした小物とお菓子のつもりだ。というか、こうやって買いに来るレベルのもの用意するんだなって思ったくらいなんだが……」


確かに、香織は仲良くなってしばらく経つとはいえ、あった回数自体は少ないし、俺も女子の誕生日プレゼントなんて考えたこともなかったから、こうして買いに来ることに疑問をもつ谷本の気持ちがわからんでもない。


「いやな、この数か月、めっちゃ相談に乗ってもらったし、お世話になったし」

「優斗は桃ちゃんと谷本くんに助けられてるって知ってるし、つい最近、私のために文化祭来てくれたじゃない?だから、お礼しなきゃって思って」

「おっ、てことは俺の誕生日も期待していいんだよな?」

「茶化すなよ。まぁ、お祝いはするけどさ」


谷本は「悪い悪い」と笑ってごまかしながら、提案してくる。


「それならよ、橋崎と中村さん、2人からのプレゼントってことにしたらいいんじゃないか?話聞いた感じ、その方が自然だと思うぞ。ちょっといいもの送るつもりならなおさらだ」


確かに、もらった人の気が引けるようなプレゼントはやめといた方がいいな。


「それじゃ、選びに行きますか」

「れっつごーだね」


目についたお店から寄りながら、青原さんへのプレゼント選びが始まった。





「思ってたより時間かかったな」

「でもいいのを選べたよね」

「楽しかったし良しとしようぜ」


結局、プレゼントを選びつつも、ゲームセンターに入ってみたり、切らしてた文房具を買ったりしたため、思っているよりも時間がかかってしまった。

すっかり暗くなってしまった道を歩いて、ラケットを受け取りに行く。

確認をして、ラケットを受け取り、駅へと帰ってきた。


「それじゃ、今度は青原も一緒に来ような」

「ああ、また」

「またね」


駅で谷本と別れ、帰りの電車に乗り込む。

行きと違い、電車がすいていたので、座席に座って電車に揺られる。


「桃ちゃん、どんな反応するかな」

「喜んでくれたらいいな」


話していると、香織が「ふわぁ」とかわいらしいあくびをする。


「あっ、ごめんね」

「気にするなって。つくまでちょっとあるし、目つむってたらどうだ?ちゃんと起こすから」

「……じゃあ、甘えちゃおっかな」


そういうと香織は、俺の肩に頭を預けて、目を閉じた。

なんだか、こういうのいいな、なんて思いながら、時々香織の寝顔を見ているうちに、あっという間に数十分が経ち、駅についた。

俺は香織を起こし、2人で電車を降りて、帰っていった。



翌日、学校で谷本と昨日の話をしているところを青原さんに聞かれ、誕プレのことは伏せて、あったことを話したら、「次からは私にも声かけるように」と少しのお叱りを受けたのは、また別のお話である。

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