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幼なじみ彼女と文化祭 帰り道編

4人で文化祭を楽しみ続け、気づけば閉場時間になってしまった。


「楽しかった〜」

「だな。自分のとこ以外の文化祭初めて来たけど、良かったな」

「レベル違うよな」

「あはは、みんな気合い入ってたからね」


それぞれ話しながら、校門へと帰ってきた。


「香織、ここまで見送ってくれてありがとな」

「ここら辺はうちの学校と違って、時間潰せるとこ結構あるし、遊んで待ってるから、終わったら連絡ちょうだいね」

「わかった。また後でね」


そう伝えると、香織は校舎の方へ帰って行った。


「それじゃ、どこ行く?」

「とりあえず、ちょっとしたショッピングセンターでいいんじゃないか?」

「おけ、行こうぜ」


ふらふらとお店を見て回ったり、ちょっと小物を売っているお店に入ってみたり。そんなことをしていると、直ぐに時間が経っていく。


「おっ、中村さんから連絡来てるぞ」

「ほんとだ、早速グループ使ってくれてるね」

「そんじゃ、合流しますか」


香織に合流する場所を伝え、お互いにその場所へ向かう。無事に合流出来た。


「ごめんね、お待たせ」

「全然大丈夫だよ。これからどうしよっか?」

「ショッピングセンター戻るか?」

「そうは言っても、帰り道考えると、そんなに遊べそうにないぞ」

「確かに」


4人で話し合った結果、また改めて遊びに来ることにして、今日のところは帰ることになった。


「それで、香織ちゃん。作戦はどうだった?」


帰路を急ぎ歩きながら、青原さんは香織に問いかける。


「クラスの女子からはお似合いだねって応援してくれたから、そっちは問題なさそうだけど、男の子の方はまだ分からないかな」

「谷本くん、そこんとこどうなの?同じ男子生徒としてさ」


話を振られた谷本は、半分呆れたような様子で、お手上げのジェスチャーをする。


「実際にその場を見たわけじゃないけど、俺たちと一緒にいる状態でそれだろ?よっぽど諦めが悪いか、性格が悪いヤツ以外は蒸発したと思うぞ」

「蒸発ってなんだよ」

「お前ら2人の仲睦まじさに当てられて、自我が崩壊する感じ?」

「俺らは強力な兵器かなんかか?」


心外な。ただ香織が幸せそうな方へ行ってるだけだ。


「何はともあれ、男から言い寄られることは減ると思うぞ。まぁ、別の問題が起きる気もするけど」

「別のってなんだよ」

「その時になったらわかるさ」


谷本は俺の背中を軽く叩きながらそう答える。

香織も何やら考えているようだし、心当たりでもあるのかな。


無事電車の時間に間に合い、揺られ始める。


「香織ちゃんと橋崎くんの降りる駅に着く前にさ、次の遊ぶ約束決めとかない?」

「いいな。日にちだけでも決めとこうぜ」


青原さんの提案を聞いて、それぞれ予定を話し合う。


「せっかくだし、今月中がいいよな」

「今月末の方にするか。谷本と青原さんの部活の予定次第だけど」

「休めばいいからへーきへーき」

「それでいいのかよ」

「いいのいいの」

「2人ともテキトーだなぁ」


そうして遊ぶ約束を決めたころ、ちょうど駅に電車が到着した。


「今日はありがとな。また学校で」

「ほんと楽しかった!またね!」


俺たち2人の言葉を聞いて、谷本と青原さんも答えてくれる。


「いいってことよ。またな」

「お幸せに〜!」


調子のいいことを言う2人の言葉を聞いて、俺たちは電車を降りた。

改札を出て、家までの道を歩く。

他愛ない話をしながら歩くこと数分、いつもの公園の前で止まり、公園に入りながら、香織は話し始める。


「ねぇ、聞いてもいいかな」

「なんでもどうぞ」

「今日、優斗がそんなに準備してくれたのは、どうして?」


さっきまで、4人でいた時よりも、真面目な声色で、香織が問いかけてきた。

どう答えたものか、考えながら、いつものベンチに腰掛ける。

どうして、か。きっかけは香織との約束をちゃんと果たすためだったけど、1番は、やっぱりあれだな。


「香織のことが好きで、大切で、守りたかったから、かな」


顔が熱くなるのを感じながら、真面目に答える。


「私が好きだからって理由で、苦手なコンタクトつけて、髪セットして、来てくれたの?」

「あぁ。香織について以外の理由なんてないよ。それに、効果あったみたいだしな」


谷本も、青原さんも、俺の事を応援してくれるし、香織は俺の事を好きでいてくれている。

けれど、今日、文化祭で隣に香織の隣にいたのが、いつもの俺だったなら。きっと上手くいかなかったと、俺は思う。


「にしても、これからは、香織と2人で出かける時、目的地によっては今日みたいに準備しないとだな」


香織の学校の人に見られたら、別人だと勘違いされそうだ。似合っているのかどうかは置いておくとして、いつもと違うのは明確だから。


「それは、困るかも……」

「えっ……?」


香織が呟いた言葉に、疑問が浮かぶ。


「香織は、今日の俺より、いつもの俺の方がいいってことか?」


やっぱり慣れない、気に入って貰えなかったか、と思い、そんなことを聞くと、香織は少し考えてから答えた。


「今日の優斗は、ちょっとカッコよすぎるよ。いつもその姿でいられたら、その、いい意味で落ち着かないし、他の女の子が優斗に惹かれちゃうよ」

「いや、それはちょっと過大評価じゃ……」


そういうと、1呼吸置いて、俺の目を見て話し始める香織。


「実はね、クラスの女の子から、応援されたのはほんとだけど、優斗のこと、かっこいいねって褒めてくれる女の子もいたんだよ?」

「香織の彼氏ってことでお世辞言ってくれた、とか」

「……とにかく、そんなかっこいい優斗も好きだけど、出来れば、一人占めしたいなって」


何となく気持ちがわかったような気がする。海水浴に行った時、香織の水着姿を他の人に見られたくなかったのと、同じだろう。


「わかった。ここぞという時だけ、今日みたいに準備することにするよ」

「……嫌じゃない?」

「何が?」

「私、独占欲、強いのかなって、思って」


好きな人は自分だけのものであって欲しいって気持ちは、俺も分かる。


「そんなの、嫌じゃないよ。香織が俺の事好きなんだなって、嬉しいくらい」

「そうなの……?」

「おう。というか、香織の信じる俺は、そんなことで香織のことが嫌になる俺なのか?だとしたら、アップデートしといてくれ」


俺は立ち上がり、きょとんとしている香織の前で中腰になって、目線を合わせる。


「多分、香織が思ってるより、俺は香織のことが好きだよ。さっき、他の女の子が〜って言ってたけど、知るもんかよ。俺は、香織しか見てないから」

「……うん」

「まだ不安か?なら、ほら、約束しようぜ」


俺は小指を差し出す。


「俺は、ずっと香織だけを見てるよ。もし、見なくなる時が来るとしたら、香織に別れを切り出された時だけだ。約束する」


香織も静かに小指を差し出してくれた。指を絡めて、指切りをする。


「ちゃんと、嘘ついたらハリセンボン飲ますからね」

「大丈夫だ。安心してくれ、海に取りに行く必要なんてないよ」


冗談めかして言うと、香織も笑ってくれた。

香織はぽんぽんと隣を手で叩いて話す。


「もうちょっと、2人でいたいな。だめ?」

「もちろん」


断る理由なんてないため、隣に座り直す。

すると直ぐに、香織が身を寄せて来て、寄り添うように、体を預けてくる。

俺はその控えめな重みを、心地よく思いながら、ゆっくりと時間を過ごした。

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