プロローグ
「今日もいい天気だなぁ」
高校2年生になり、1ヶ月が経つ頃、俺、橋崎優斗は教室から窓の外を見つつぼーっとしていた。
今は帰りのホームルーム中であり、担任の先生が明日の予定について話している。
「はい、橋崎くん。プリント」
「あっ、ありがと、う……」
前に座る女子からプリントを受け取りながら答える。あーあー、まただ、たったこれだけなのに挙動不審になる。いつまでトラウマを引きずってんだか……
* * *
このトラウマは中学校の時に起こった出来事からだ。
俺には幼なじみがいた。名前は中村香織。成績優秀で人気者。可愛らしい雰囲気を纏う女の子だ。家が隣同士であり、家族ぐるみで仲が良かった。幼稚園からずっと一緒で、よく家に遊びにも来ていた。
中学になってもこの関係は続いていくんだと、そう思っていた。
中学に入り1週間が経ち、少しずつグループができ始め、俺と香織はそれぞれ新しく出来た友達と仲良くなろうと別々で登校した。
学校に着き、朝の準備を済ませ、廊下に出ると香織を見かけた。
「香織、おはよう。新しく友達できた?」
「…………」
香織は無視して通り過ぎて言ってしまった。聞こえなかったのかと思い慌てて振り返る。
「無視してよかったの…?名前呼んでたけど、もしかして彼氏だったり?」
「ううん。知らない。」
「えっ?ヤバいやつじゃん。」
香織と新たな友達であろう女子が、そう話しながら歩いていくのが見えた。
え?知らない?どういうことだ?
困惑しているとチャイムが鳴り、訳の分からないまま一日が始まってしまった。
その後、香織には避けられ続け、話すこともなくなった。1年が経つ頃には俺の方も慣れてきて、香織を避け始め、お互いに避け合ったまま、中学を卒業。
香織は相変わらず成績優秀、部活でも結果を残し、地元じゃ有名な進学校へと進学したらしい。
俺はトラウマを引きづって女子を避けながら、無難にこなして3年間を過ごし、ほどほどの高校へと進学した。トラウマの元凶と別の学校になりバンザイだ。
* * *
まぁ結局進学した高校でもトラウマ拗らせた結果、女子に対して挙動不審なんだが。
そんなこんなで今に至るわけだ。
今にして思えば、中学生特有の彼氏彼女へのちょっかいの対策やら思春期の拗らせなんだろうと理解出来るが、それとこれは別。
物心着く前から仲良くしてた奴に突然無視からの、知らない人認定だよ?心折れるわ。
などと考えていたらチャイムがなり、ホームルームも終わりの時間だ。さっさと帰ってゲームでもしよう。
この時までは、このままアニメでよく見る青春なんてご縁のないまま高校も終わるんだと思ってたんだ。