第四話
ホテルという所は、様々な出来事がある。
一人の食事担当スタッフがルームサービスを客室に運んでいた。
部屋のドアをノックし、
「ルームサービスで御座います。」
「どうぞ、入ってください。」
「失礼します。」
と、部屋の中に入るとガウンがはだけた女性がソファに座っていて
「ねぇ、隣に座って」
「いえ、そのような事は致しかねます。」
「客の言うことが聞けないの!座りなさい!」
スタッフは渋々、ソファに離れて座った。
「もっと近くにきてぇ…」
急に甘えた口調でいいながら、にじり寄ってくる。
「お客さま、いけません。こんな事をするのは!」
「構わないじゃない、少しぐらい…」
スタッフの手を取ると胸に持って行った。
「止めてください!」
慌てて扉の向こうへ走って逃げる。
フロントの電話が鳴る
「フロントでございます。」
「あなた達は、どんな教育をしているの!」
女性の声だ。
「ルームサービスを頼んだら、若い男の子が私の胸を触ってきたのよ!」
「支配人を呼んでちょうだい!」
ガチャっと、電話が切れた。
「支配人…」
スタッフが電話の内容を話す。
とりあえず、その「胸を触ったらしい」男性スタッフと客室へ向かうエレベーターの中で
「支配人、僕はやってません!」
涙目になって訴えていた。
「ああ、わかってる、わかってるとも。」
客室に入ると、女性は胸をはだけさせながら、
「あなた、この子にどんな教育をしているのよ!私はもう少しで、犯されるところだっのよ!」
…少し酒臭い…。
「お客様を不快にさせたことは誤りますが、当館はホテルでごさいます。そういう行為をお求めならば、そういったお店に行かれれば良いかと思います。」
「あなた!私が嘘を言ってると思ってるの!私はあの子に胸を触られたのよ!」
「スタッフの話では、お客様が無理やり触らせたと聞いておりますが。」
「何なのよ!このホテルは!もう、チェックアウトするから!お金も払わないからね!」
「ご利用ありがとうございました。」
そんな事があったり、他には
「支配人、またですよ。」
スタッフが防犯カメラの映像をニヤニヤ見ながら言っている。
「はぁ…」っとため息を出しながら、非常通路へ
階段を登ってくる女性に声をかける。
「お客様、こちらは非常通路でございますが…」
大きなバッグを方にかけた女性は
「と、友達に会おうと思いまして…」
「それでは、フロント・ロビーにてお願いします。何号室の何と言う名前のお客様ですか?」
女性は渋々、部屋番号と名前を言う。
フロントにて確認をすると客室に電話を入れる。
「お客様、お連れの方がいらっしゃってますが、フロントまでお願い出来ますか?」
エレベーターで降りてきた男性は、
「ありゃ〜、また捕まったか?」と照れながらフロントにやってくる。
「もう、いい加減にしてくださいよ。そういう事をしたければ、そういうお店に行ってください!」
そう言うと、女性を連れてホテルを出ていった。
また、他には
フロントの電話が鳴る。
「ちょっと、加湿器が動かないんだけど!」
「直ぐに参ります!」
変えの加湿器を持って客室へ
「大変、申し訳ございません、変えの加湿器をお持ちしました。」
「どうして、動かないの!」
「確認したの!」
今回は忙し過ぎて確認作業を怠ってしまった…
「はい、私が確認いたしました!」
「じゃあ、何で動かないのって聞いてるの!」
こんな時は女性客の方が怖いものである。
追い詰められたスタッフは、最後の手段、「土下座」をした。
「そんな事をしろとは言ってないの!この加湿器を動かしてと言っているの!」
何度も土下座をする、スタッフ。
「…もう、いいわ、支配人を呼んできて!」
「支配人、すみません。」
「よくやった。後は任せろ。」
客室へ行く。女性客は少し落ち着いたようだ。
「お客様、この度は大変、申し訳御座いません。」
「もう、いいわ。私も言い過ぎたようだし…でも、ちゃんと教育してくださいね!」
やっぱり、まだ怒ってる「演技」をしている。
「こちらはお詫びとして、シャンパンをお持ち致しました。良ければ…」
「私は、そんなものには釣られませんからね!それに、お酒も飲まないし!」
「左用で御座いますか。では、こちらは、おみやげにでもしてください。」
「失礼します。」
翌朝、その女性客がチェックアウトした後、ハウスキーパーが部屋に入ると、空になった「シャンパン」が、あったそうだ…
そんな客にも対応するのもホテルマンの仕事である。