第五話 汚名は返上
アウレウス王国の年始、花の月の四十日間があっという間に過ぎ、今は緑の月。
窓の外では木々の葉が青々と茂り、ランチが終わる頃には少し汗ばむほどだ。
そして私とデイジーは、ついに隣の席に座るようになった。ふたりで教卓の真ん前に座り、三限が始まるのを待つ。教科書を開きながら、デイジーはランチルームで聞こえていた噂に腹を立てている。
「本当に失礼な噂です。公女様はこんなにお優しいのに……」
噂というのは、私がデイジーを脅しているという話である。
私に扮したローザがデイジーをいいように使っていたのもあって、「ああして仲良くしているのはデイジーを手足のように使うためだ」とか、「真面目になったかと思ったらやっぱり変わってないな」とか、散々な言われようである。
「ありがとうデイジー。あなたにさえわかっていれば、私はそれでいいのよ」
「よくありませんよぉ……!」
デイジーの言うとおり、この状況は正直よくない。そのうちおさまるかと思って放っておいたのがよくなかった。近いうちに手を打とうと思っていると、デイジーから本を返された。魔法植物の図鑑だ。
「そういえば公女様。こちらの本、ありがとうございました!」
「もうまとめ終わったの? すごいわね」
「えへへ……今年の試験に間に合うように頑張ろうと思いまして」
はにかみながらぱらぱらと見せてくれた紙には、魔法薬師の試験に頻出する魔法植物がまとめられている。字もきれいだし、まとめ方も上手い。挿絵も特徴をよくとらえている。
「応援しているわ。でも大丈夫? 魔法薬師の試験って年末の二十日なのよ。卒業式に出られないけれど」
「家族は見に来られませんし、卒業証書だけ後で受け取れれば十分です。それより試験を……!」
「まあそうよね。今年の試験を逃したら一年後になってしまうから」
「公女様も今年の試験をお受けになるのですよね?」
「うふふ。私はね、今年受けるかどうかまだわからないのよ」
「わからない……ですか?」
「ええ。わからないの」
デイジーと話しているうちに、侯爵令嬢のバーバラと伯爵令嬢のクラリスも講義室にやってきた。私が社交の場に出なくなっても、このふたりだけはずっと話しかけてくる。四人になるとデイジーが空気のようになってしまうので離れて座ってほしいのだが。
「ごきげんようルナ公女。お勉強は順調でして?」
「ええ。今のところはね」
バーバラに話しかけられ、にやりと笑いながら短く返事する。実際は勉強なんてせずとも余裕なのだ。だって去年、ローザの代わりに同じ講義を受けていたんだもの。講義中にやった小テストも全部残してあるので安心だ。
好調そうな私を見て、クラリスがぱちぱちと手を叩いている。
「よかったですね! 建国祭の準備も順調ですか?」
「我々は昨日、ドレスを下見してまいりましたわ」
「あら? 来年のことなのにもう?」
「「……えっ?」」
私の言葉に、バーバラとクラリスが一瞬固まった。
そしてバーバラが私の手首をとり、クラリスが怪しげな魔導書をパラパラとめくる。
「ルナ公女。やはり何か良からぬ病にかかったのでは? 脈は異常ありませんね」
「交際を断られた殿方に毒を盛られたとか? 呪いをかけられた線はどうです?」
「眼球の動きも異常なし。となると呪いかしら」
「ですね。呪印が刻まれてないか探しましょう」
二人にブラウスの袖を掴まれ、隣からはデイジーの「はわ……!」という声が。バーバラもクラリスも、ローザに対していつもこんな調子だったのだろうか。
「……落ち着いてふたりとも。私は至って健康よ。勉強で忙しいだけだから」
「クラリス。勉強で忙しくなる呪いって存在するのかしら」
「可能だと思います。手遅れになる前に呪印を探さないと」
「落ち着けと言っているでしょう。呪われてもないわ」
そう言ってようやく、私の袖を離してくれた。三公爵家の令嬢にこんな無礼が働けるということは、ローザから相当気に入られていたのだろう。捲られた袖を元通り整える私を、バーバラとクラリスが諭してくる。
「ルナ公女。いくら忙しくとも、ドレスだけは早めに予約したほうがよろしくてよ」
「最近忙しいのよ。もう少し暇になったら頼みに行こうかしら」
「油断禁物です! 腕のいいデザイナーにはもう依頼が入り始めてますから」
「生地もいいものから無くなっていきますし。姉君に恥をかかせてしまいますわよ?」
「……そうよね。ありがとうふたりとも。近いうちに見に行くことにするわ」
「いえいえ。しかし、人って変わるものですわね」
「ですよね。とっくの昔に予約していそうなのに」
「うふふ。本当に私、どうかしていたみたいだわ」
毎年、花の月に行われる建国祭。今年はもう終わってしまったけれど、王都では月初の三日間、城下町でお祭りが催され、地方の貴族たちも王都に集まって祭事に参加する。
しかも来年は特別。
建国祭の初日に、ウィクトル王太子殿下とローザの結婚式が行われるからだ。
日程が近づくにつれて、デザイナーも裁縫師も忙しくなる。良いドレスが手に入りづらくなるので、バーバラもクラリスも早いうちから選んでいる、というわけなのだ。
私の場合、花嫁の妹なので王家の皆様と一緒に最前列に並ぶことになる。王家に失礼にならない、かつイーリス公爵家の名に恥じない装いが必須だ。
けれど別に、ドレスの準備を忘れていたわけではない。
だって、手配する必要がないんだもの。私が結婚式を阻止するのだから。
アカデミー生の立場だと王宮で動きづらいので、本格的な妨害は卒業後になる。ただ、卒業から結婚式まで半月しかない。たった二十日で結婚を阻止できるのかというと、さすがにそれは私でも難しい。時間がなさすぎる。
ではどうするのか。
幸いにも、アカデミーの卒業を早める方法がひとつある。
四回生の必修講義は前期で全て終わり、後期は各々が必要な単位をとりつつ先生の指導で卒業研究を行うのみ。そのため、前期のうちに必修講義をすべて受講して卒業研究も済ませた者は、半年早くアカデミーを卒業できるという制度があるのだ。
私の復讐には、この「前期卒業」が必須。アカデミーを卒業して秋口から王宮で働き始めれば、結婚式まで半年ある。その間にローザと直接対決して、結婚を阻止するという計画だから。
そこで問題になるのが、卒業論文の内容。
アカデミー生がぼんやりとテーマを決めて、先生方に手とり足とり指導されながら書く論文。正直、学術的価値があるものは無いに等しいし、「アカデミー卒業」という肩書だけあればよい者の中には、家臣に書かせる者すら居るらしい。
内容がぼろぼろで卒業が危ぶまれていても、学長に「寄付」という名の賄賂を贈って根回すれば確実に卒業できるなんて話も聞くけれど、半年早く卒業するとなるとそうはいかない。
まずは事前に、前期卒業が可能かどうか学長に打診する必要がある。その時点で研究テーマと仮説が定まっていないと門前払いだし、論文の審査自体も厳しい。
書きたい論文はたくさんある。しかしローザのせいで私の心証がよくないことを考えると、並みの内容では前期卒業を許してもらえないだろう。
――うーん……ちょうどよさそうなネタをローザに使ってしまったわね。
私がローザとして書いた卒業論文は、新しい魔法薬の発見。題して「魔法植物プログレススを用いた成長の魔法薬とその打ち消し薬について」だ。
プログレススは節の少ない竹のような見た目。稈が金属のように硬く、魔力を与えるほど長く真っ直ぐに伸びるので、建物の骨組みや帆船のマストとして重宝されている。
この硬いプログレススを粉末にして魔法薬を作れないかと試行錯誤していた際に偶然発見したレシピで、もしこのまま誰も見つけられなかったら、自分の卒論に使おうと取っておいたネタだった。
「魔法植物の研究をなさっている王太子殿下の婚約者に相応しい内容の論文がいいわ」とローザからねだられ、どうせあとで私が書いた論文だと明るみになるのだからとあのネタを選んだけれど、自分の心証が悪くなっているのを見越して残しておけばよかった。少し反省。
早いところテーマを決めて学長と相談したいけれど、あと数日で出来ることが増えるので、焦りは禁物だ。
そうして待つこと数日。
待っていた知らせはカメリア副学長の口から告げられた。
「魔法倫理の講義を始める前に。先程、我が校に光栄な知らせがありましたので共有します」
――光栄、ということは安心してよさそうね。
それもわざわざ共有するのだから、私が待っていたものに違いない。
こころなしか、カメリア副学長の顔も誇らしげに見える。
「魔法植物と魔法薬に関する十分な知識を有し、調合の技術も十分であると認定された者に与えられる国家免許、『魔法薬師』を本学の生徒が最年少で取得しました」
ざわざわと騒がしくなった講義室。隣に座っているデイジーが、私の袖を指先でつまんで軽く引っ張っている。そちらのほうだけ口角をあげて見せると、「はわ!」という声が聞こえてきた。そしてカメリア副学長と目が合い……
「ルナ・イーリス公爵令嬢。合格おめでとうございます」
「ありがとうございます、副学長」
当然だ。私以外ありえない。
名前を呼ばれた瞬間、しんと静まり返った講義室にデイジーの拍手が響いた。
続いて、バーバラとクラリスの拍手が。
「あらまあ! ルナ公女。私、こんな話聞いておりませんでしてよ」
「とにかくおめでとうございます! この試験って去年あったのでは?」
「ええ。誰にも言ってなかったのよ」
三人の拍手につられて、後ろからもまばらな拍手が聞こえてくる。まだ信じられない、といった反応。けれど、これを機に私を見る目も少しは変わるはずだ。
講義が終わった後、カメリア副学長と一緒に教員室へ。
王宮からの合格通知を受け取った。
「昨年までの学年担当がひどく驚いていました」
「ああ……あの先生、『無謀な申し込みはアカデミーに迷惑だ』とおっしゃって、なかなか判を押してくださらなかったんですよね」
「そうでしたか。どうやら彼は見る目がないようですね」
「うふふ。副学長には認めていただけているようで嬉しいですわ」
「通知の中に授与式の日程が入っているそうです。確認するように」
「かしこまりました。それでは失礼します」
私に対して、随分と親しげになったカメリア副学長。どうやら私が試験に合格したことで確信したようだ。ローザの中身が私だったのだと。けれど、私の口から白状しなければ退学に処されることはないでしょう。
ほくそ笑みつつ、受け取った封筒に目をやった。確かに王家の紋章で封をしてある。
――ついに私、魔法薬師になれるのね……!
ずっと欲しかった、魔法薬師の免許。
アカデミー生が取得するには教員の推薦が必要なのだけれど、ルナ本人を装って(本人なのに装うっておかしいけれど)当時の学年担当に受験の申込用紙を渡したところ、「これは何の冗談か」、「絶対に合格できないからやめてくれ」、「アカデミーにとって恥にしかならない」、などと言って判を押してくれなかった。
その後、ローザを装って「妹がどうしても受けたいそうなんです!」と頼んでみたら、あっさり判を押してくれたのだ。当時の学年担当にちらりと目をやると、愛想笑いを浮かべている。私からも愛想笑いを返して廊下に出ると、デイジーが待ってくれていた。
「おめでとうございます公女様! 今年受けるかわからないって、こういうことだったのですね」
「ええ。不合格だったら、今年も受けないといけないでしょう?」
「公女様なら一度で合格して当然です! 本当に、おめでとうございます!」
「ありがとう。あなたもこの年末、頑張ってね」
「はわ……公女様のご利益にあやかりたいです……!」
「早速開けてみましょう。授与式の日程が入っているそうよ」
「わぁ! 気になります!」
その時、デイジーの目の前で封を切ろうとする私の耳に、不快な話が聞こえてきた。
「見てあれ。また姉君に頼んだのね」
「ああ。学年末の試験みたいに?」
「お姉様が優秀だと楽でいいわよね。卒業論文も書いてもらうんじゃない?」
「あははっ。でしょうね。勉強するのが馬鹿らしくなってしまうわ」
「今日はもう、城下でお茶して帰らない?」
「いいわね。行きましょう」
そうしてくすくすと笑いながら、ふたりの令嬢が私の隣を通り過ぎていく。
「……うふふ。デイジー、ちょっと待っていてね」
「はわっ!?」
驚くデイジーをその場に残し、笑いあっている令嬢たちを呼び止めた。
「そこのふたり。待ちなさい」
「……何か御用ですか?」
私が追いかけてくるとは思わなかったのか、ふたりとも目を丸くしている。
「あなたたち、よく講義で一緒になるわよね? 面倒で聞き流していたけれど、もうやめにしたらどうなの?」
まさに今から目の前の令嬢たちを窘めようという雰囲気に、自然と人が集まってきた。しかし令嬢たちが臆する様子はなく、むしろギャラリーを歓迎している節さえある。
「なぜやめる必要が? 私たちは事実を話題にしているだけです」
「まあ、公女様にとっては都合が悪いですものね。だからやめてほしいのでしょう?」
「事実ねぇ……何か証拠でもあるの?」
「証拠? あなたのこれまでの素行からして明らかでしょう?」
令嬢たちのあまりに堂々とした態度に、笑いがこみあげてくる。
「ふっ……うふふ……」
「……何がおかしいんです?」
「だってあなた。そんなことが『証拠』になると思っているの?」
「そんなことって。それで十分でしょうに」
「他には? 本当にそれだけなの?」
「しつこいですね……」
「あなたたちが答えてくれないからよ。『証拠』というのは私の素行だけ? イエス、ノー、どちらなの?」
ふたりの令嬢にかわるがわるたずねてみても、答えにならないことを言いながらこちらを睨みつけてくるだけ。
まあ、証拠なんてあるわけない。自分の試験は入れ替わらずに自分で受けているんだもの。しかも素行の悪さはすべて、ローザがやったことだ。勝手な思い込みで悪評を流布するのはいい加減やめてほしいものである。
「ルナ公女? これは一体、何の騒ぎですの?」
聞いたことのある声だと思って後ろを振り向いたら、人垣を割ってバーバラがやってきた。後ろにクラリスもいる。ちょうどいい。さも困り果てているふうに相談してみましょう。
「それがね、この子たちが未来の王太子妃を侮辱したのよ。お姉様が私の代わりに、魔法薬師の試験を受ける不正を働いたって」
「なっ……ローザ公女を侮辱する意図はありません!」
「そうです! あなたがローザ公女に無理強いしたのでしょう?」
「私はそんなことやっていないのだけれど、証拠はあるのかって聞いたら、どうも日頃の私の行いだけで事実だと判断したみたいなのよね。で、結局どうなのかしら。証拠はあるの?」
「それは……」
どちらの令嬢も言葉が続かない。こんな大勢の前で、今さら証拠がないとは言えないのだろう。早々に謝っていればこんな思いをせず済んだでしょうに。
バーバラとクラリスはというと、どうやら状況を完全に理解したようで、嬉々としてふたりを攻撃している。
「恐ろしいこと。確たる証拠もなしに、ローザ公女を罪人に仕立て上げようなんて。訴えられますわよ?」
「そうですよ。いくらルナ公女の素行がものすごく悪いからって、それだけでは証拠になりませんからね?」
援護ありがとうバーバラ。
そしてクラリス、あなたは一言多い子みたいね。
ものすごく悪いっていうのは余計だったわ。
しかしこれで二対三。目の前の令嬢たちが、苦しそうに言葉を絞り出している。
「じ、事実ですから。訴えても無駄ですよ?」
「おふたりもご存じなのでは? 事の真相を」
「いいえ? その試験を受けたこと自体、つい先程知ったところでしてよ」
「私も初耳でした。まあ、ローザ公女が不正を働くなんて無いと思いますよ」
「クラリスの言う通り。私のお姉様にそんな不正、できるはずないのよ。少し考えればわかることだと思うのだけれど……」
そう。そんな不正、ある意味できるはずないのだ。仮に入れ替わってローザに試験を受けさせたら、不合格どころか筆記の一問目で暴れだして、二度と試験を受けさせてもらえなくなる可能性すらある。
周囲からも「ローザ公女がそんなことをするわけないだろう」、「無礼を詫びろ」などと聞こえだして、目の前の令嬢たちが縮こまっていく。このあたりで許してあげましょう。私の寛大さをアピールするために。
「あなたたち。これに懲りたら、証拠も無いのに断言するのはおやめなさいな。試験の日、お姉様は卒業式と卒業パーティーで朝から忙しくなさっていたのよ?」
「そっ……そうでしたか……」
「やっぱり。試験の日程を調べもせずに、事実だと決めつけていたのね」
「は、はい……」
「迂闊な子たちね。まあ今回は、お姉様には黙っておいてあげましょう。けれど、今後このようなことがあれば容赦できなくてよ」
「申し訳ありませんでした……」
「二度としないとお約束します……」
――あら。この子たち、ちゃんと謝れるのね。
自分が悪くても何かと理由をつけて謝らないローザと比べたら、歯ごたえが無いに等しい。まるで煮込みすぎたリゾットのよう。
頭を下げてそそくさと帰っていくふたりを見て、周囲の人垣も解散し始めた。
「バーバラもクラリスも、ありがとうね」
「いえいえ。我々の加勢がなくともおさまったでしょう」
「お見事でした! もっと早く躾ければよかったとは思いますが」
「うふふ……そうね。とにかくふたりとも、助かったわ」
「では、我々はこれで」
そうして悠々と帰っていくバーバラとクラリス。ローザのお気に入りだったのは、それなりのわけがあったようだ。相手の言葉に動じないし、揚げ足を取るのも上手だったわ。
少しだけふたりを見直した気持ちでいると、廊下の端でデイジーがガタガタ震えているのが目に入った。やはりこういう言い合いは苦手らしい。
「ごめんなさいデイジー。怖かったわね」
「はひ……そういえば公女様、卒業式を欠席なさってましたね。体調不良で」
「あら。よく覚えていたわね」
「はい。長い祝辞を聞くのがお嫌なのかなと思ってましたが、パーティーの時間になってもいらっしゃらなくて」
「ご卒業のお祝いより自分の試験を優先させたなんて、お姉様に知られたくなくてね。パーティーに間に合うかも自信がなかったから、具合が悪いと言っておいたのよ」
「だから終わる間際にいらしたのですね。あれ? でも顔色が悪かったような気が……」
「そんなことよりこれ、開けてみましょう」
「あっ! そうでしたね……!」
改めて合格通知の封筒を開けてみると、魔法薬師の試験に合格した旨の書類が一枚と、授与式の日程が一枚。当日は国王陛下より、合格証書と魔法薬師のバッジを授与するとある。陛下の手から直接いただけるなんて光栄なことだ。デイジーも自分のことのように喜んでくれている。
「本当によかったですね! 最年少で合格なんて、きっとお姉様も誇らしくお思いですよ!」
「そうね。少しは喜んでくださるといいのだけれど」
――まあ、無理でしょうね。
ローザが私の活躍を喜ぶわけがないのだ。
免許の授与式で会えるのが、今から楽しみね。