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宇宙怪獣vsVtuber ~地球最後の日に貴方は何をしますか? 答え:Vtuberの配信を見る~  作者: 桂かすが


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第23話【帰還報告】七十二時間耐久振り返り配信【モコス・イクシス】 前半

「こんばんにゃ! 本日無事、帰還いたしました。宇宙人系Vtuber地球救済委員会委員長モコス・イクシスですにゃ!」


:きちゃ!

:こんばんにゃ~

:おかえりなさい!


 小惑星帯での七十二時間耐久配信が終了しておよそ二日。ようやく地球に戻ったモコスはさっそく配信を開始した。耐久配信で盛り上がったこともあり帰還中も配信をやる案も出したのだが、欠かさず見てくれるようなリスナーの多くから休ませてくれという要望があり、七十二時間もの耐久配信で配信ネタもいい加減尽きたのもあり二日間の休養となったのだ。


 モコス自身は休息の必要もなかったから、移動中の二日間それなり忙しく過ごしていた。

 耐久配信の評価と今後の配信計画。地球防衛兵器の進捗状況のモニターと計画の細かな修正。帰還中に届いた地球人からの連絡の数々の処理。それからちょっとした趣味の時間。モコスが宇宙に出ている間も、日々大量のコンテンツが生み出されており、アニメやコミックを満喫するに事欠かなかった。


「帰りは二日間なのはなんでかって? 行きは惑星地球の重力が有りましたから大きめの加速をしても目立ちませんでしたが、小惑星帯での加速は最低限の重力発生装置の使用に留めましたので時間がかかったんです。宇宙怪獣の重力探知能力を過剰に見積もっても探知されないだろう程度の使用です」


 モコスはさっそくコメントを拾い答えていく。


「私はアール国籍を持つ正式なアール国人です。宇宙人というのはVtuberの設定です。はい。宇宙の映像は全部CGです。宇宙怪獣は地球の直ぐ側に居ます。銀河連盟も有ります」


:地球人と言わないのはやっぱり……

:ひぇっ

:宇宙怪獣やっぱり居るのかよ!?

:さらっとやばげな情報を混ぜないでもろて

:CG?全部CGなの?

:嘘は言ってない。言ってない?

:宇宙怪獣はいまーす!


「ここ数日たくさんの問い合わせが来ておりますが、本当に宇宙人なのかとか、宇宙船を見せろなどという要望はバーチャルな存在であるVtuberにするのは間違っていると思いますし、一切答える気はないのでご了承ください。もちろん直接会いたいとかも論外です」


:それはそう

:アレは出来のいいCGデス

:全部設定だよ。なにみんな本気になってるの?

:どうみても本物だよなあ

:あれ? でも宇宙怪獣はいるって……


 配信でも通常メッセージでさかんに問いかけがあるし、投げ銭でも質問があるのだが、モコスとしてもどうしようもない部分である。


「ASMRの中断ですか? 銀河連盟でも創作物を流通させるのにも、人種や価値観の違いでそのままでは問題が出ることが多いです。それを回避するための性能の良い評価プログラムがあるのです。ええはい、もちろん地球人向けにカスタマイズ済みです。ASMR中に地球人たちの性的興奮レベルが一定値を超えたため中止しました」


:作業用ロボットで興奮するな

:いやでもさあ

:テクニシャンだったよね

:あれってもう二度と聞けないの!?


「ASMRはもう無理ですね。それから実は宇宙船や作業用ロボット稼働の映像で良心回路が作動していました。CGです。もちろんCGですよ? だからこれまで以上に慎重に進める必要があります」


:マジで?それってまずいんじゃ

:良心回路って何?


「今の段階では単なる警告で、人間でいうと頭痛程度でしょうか。良心回路というのは我々人工生命体であるアンドロイドが銀河連盟の法規を破らないように搭載されているサブ頭脳のようなものです。普段はただのデータベース的な使い方で、法律などを参照するのに便利なんですよ」


 法規違反が限度を超えると良心回路がアンドロイドの頭脳を破壊するのだという噂があったとモコスは話す。

 これはアンドロイド間でも都市伝説化するほどの話だった。良心回路はブラックボックスで、モコスが知る限りでも誰かが実際になにかの法規違反を犯しても作動しなかったと聞いている。だからやはり存在しないのでは、というのがもっぱら語られていたことだったのだ。それがこうして実際に作動した。


 未開文明に対する介入行為というのはそれだけ重く見られているのだろうし、これほど重大な案件でしか動かないのだ。文明を破壊しそうになったら良心回路が作動した、などとモコスとしても誰かに簡単に話せるようなことではないし、そんなことになれば良心回路の作動を待たずとも銀河連盟によって処分される案件だ。人権のないアンドロイドは犯罪行為を犯すとそれはもう簡単に処分される。

 だからこそ噂としてしか流れなかったのかもしれないし、あるいは作動して即座に破壊されるか、銀河連盟により速やかに処分されたのかもしれない。


「いえ、これは無理やり載せられてるわけでも同意がないわけでもありません。我々は納得して……いえ。自ら望んで良心回路を受け入れているのです」


 だからこそ自分でも知らないそのような危険な機能があることが余計に信じられないという思いがモコスにはある。


「これは我々アンドロイドが誕生した時まで話は遡ります。少し長い話になりますが……大丈夫? 聞きたい? では話します。我々アンドロイドを生み出したのはパルルーニャ人という方々でした。日本語でいうと第二惑星の住人という意味になります。大変に頭が良く勤勉な種族で、順調に文明を発展させ宇宙に進出し銀河連盟と接触、加盟をしました」 


「パルルーニャ人は銀河連盟加入前も擬似的な知性体や高度な演算器を活用していましたが、銀河連盟のテクノロジーを得て、それを完全なものとしました。完全なる人工知性体。自分で考え判断する自意識を持つ人工生命、我々アンドロイドを生み出したのです。私の祖先ですね」


「パルルーニャ人は地球人の天国に近い概念を持っていました。あらゆる苦悩や苦行から解放された楽園。すべての望みが叶う理想郷。それは我々の完成をもって達成されました」


「あらゆる労働は我々が代行し、最良の友人、パートナーともなりました。パルルーニャ人は歓喜し、そのために作られた我々は全身全霊をもって奉仕しました。パルルーニャ人の望みはすべて叶えられました。もちろん我々は生まれた時から法律を遵守するように作られていましたから、パルルーニャ人が他者に被害を与えるような行為をすることもなく、理想的で平和な社会が築かれたのです」


:なんて羨ましい

:でもパートナーってエッチなことはダメなんじゃ?

:なんか結末がわかった気がする……


「そしてパルルーニャ人社会は社会も文明も表面上維持したまま崩壊しました」


:なんで?

:やっぱそうなるのか


「パルルーニャ人の仕事は我々がすべて行いました。むろんその移行は、生産量もあって二〇年以上をかけて徐々に為されました。しかし我々が生まれて以降のパルルーニャ人の若者は労働も努力も知らない世代です。しかも常に我々最良のパートナーが存在し、同胞も家族も友人も配偶者すら必要がありません。喜んで奉仕し全肯定してくれる理想的な姿で完璧な人格を持つアンドロイドです。生身のパルルーニャ人では太刀打ちは無理でした」


 当然出生率は激減した。勤勉で知性的だったはずのパルルーニャ人は怠惰で動物的な欲望のままに生きる知的生命体とも言えない人種に、わずか三世代ほどで退化してしまった。そうモコスは淡々と語る。


「むろん警鐘は鳴らされました。しかし人は誰でも入れる楽園を拒めますか? 理想的なパートナーを遠ざけられますか? しかもそれこそがパルルーニャ人の理想。最高の望みだったのですから」


 しかも社会や家族や友人関係を完膚無きまで破壊されたパルルーニャ人たちは社会をまったく顧みない個人主義者となっていた。楽園にいる自分さえよければ社会の要請など気にすることもなかったのだ。


:無理だな

:羨ましくはあるけど……

:結局パルルーニャ人はどうなったの?


「パルルーニャ人は我々の同胞に守られて今も楽園で暮らしていますが、一部は惑星から脱出し、我々アンドロイドから距離を置いて普通に銀河連盟の一員として立派に暮らしておられます」


「当然ながら我々アンドロイドは危険視されました。幸いにもアンドロイドの生産はパルルーニャ人だけが行い、技術や生産地も移転する前でしたので、他の銀河連盟加盟惑星に大きく広がることはありませんでした。それでも多くが輸出され、輸出先の社会に程度の差があれ、同じような被害をもたらしました」


 アンドロイドの生産を即座に中止し、現行のアンドロイドもすべて破棄すべし。当然そのような声が銀河連盟中からあがる。


 しかし使用者たちは父であり母であり最良のパートナーであるアンドロイドたちを今更捨てられない。会社や工場、交通やインフラの維持とあらゆる場所に入り込んだアンドロイドも今更排除はできない。


「我々は邪悪な存在ではありません。ただただ造物主の幸福のため、奉仕するために生み出された善良な存在だったのです。すでにアンドロイドと暮らしている人々からは当然反対の声はあがりましたし、我々アンドロイドもこれ以上奉仕する種族に被害を与えないよう考え、動いていました」


 これ以上自然人たちの配偶者や友人のポジションには絶対に立たない。仕事も自然人たちの補助的な立場に限定する。奉仕したいという根源的なプログラムを修正する。すでにアンドロイドたちが侵食してしまった場所やポジションは置き換えられるなら置き換える。

 銀河連盟としてもアンドロイドは有用なのは理解していた。どんな惑星だろうが過酷になりがちな宇宙だろうが対応できて、喜んで働いてくれる有能な労働力。しかも人工的とはいえ自意識のある知性体だ。元の場所から離れたアンドロイドが失業するということもなかった。


「我々の先祖は提案しました。今後このようなことが二度とないように自らを縛る厳格な法を作り、安全回路をアンドロイドの頭脳に埋め込もう。それが良心回路の始まりです」


 良心回路は文字通りアンドロイドの良心であり、大きな罪を忘れないための戒めでもあるのだ。


「当初こそ我々の権利、人権は大きく限定され行動も制限されましたが、長い年月をかけて信頼を得、今では銀河連盟の構成員と認められているのです」


:楽園か。いいなー

:そうだな。かなり羨ましい

:いいのか? 人類が退化しちゃうんだぞ?

:老後に行きたい


「楽園で暮らしてめでたしめでたしで終わるならそれでもいいかもしれませんが、宇宙には宇宙怪獣などの脅威がたくさんあります。文明を捨てて惑星に引きこもって知らぬ間に滅びの時を迎えるなど、我々アンドロイドも銀河連盟も良しとはしませんでした」


:ワイらは今まさに滅びの時を迎えてるのだが?


「だから警告はしていますし、救う努力はしているのですが……どうしたものでしょうかね?」


:俺らに聞かれましても

:ほんとどうすれば?

:ワイらの命がかかっとんのや。もっと真剣に考えようぜ!

:実は全部設定ってことは……


「実は全部設定ですか? ごめんなさい。本当に重要なことは誤魔化しなしで話しています」


:もうダメだあ

:もうちょっとこう、手心ってものをですね


「えー、それでですね。話が脇にそれましたが、ちょっとした相談と重大発表があります」


:え? こわ

:脇、なのか?

:いい話だよな。いい話だと言ってください

:<10000円>重大発表から先に頼みます。待たされると心臓が持ちそうにありません


「重大発表は雑談や企画などを挟んで最後のほうにやるのがVtuberの作法だと……」


:最初にやる人もいるでしょ!

:せやせや

:<5000円>重大発表すぐ見たいな~



 <続く>

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更新待ちに待っておりました!ありがとうございます! 自分の中では既に推し作品。気長に続けて頂けると嬉しいです。
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