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宇宙怪獣vsVtuber ~地球最後の日に貴方は何をしますか? 答え:Vtuberの配信を見る~  作者: 桂かすが


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17/22

第17話 【宇宙から配信】収益化記念メンバーシップ限定配信【モコス・イクシス】

:地球がもうあんなに小さく

:このままガチで小惑星帯まで言っちゃうのか

:月より先への有人飛行とかVtuberどころか人類史上初じゃね

:モコスは宇宙人だけどな?

:だーかーらーぜんぶCGだってば

:モコスたんキター


 地球を映す画面の右下にいつものモコスの立ち絵が表示され、話し始める。


「たくさんの方のメンバーシップ加入ありがとうございます。最初に注意事項として、メンバーシップ限定配信の切り抜きに関しては原則禁止とします。ご協力お願いします」


:有料配信の切り抜き禁止はどこのVtuberもやってることだな

:勝手にやらかしたら特定されちゃうぞー


「当船は現在地球を離れ、月へと向かっています。このあとは少し月を観光してから、小惑星帯へと向かう予定です。地球防衛計画の第二段階ですね」


:月観光やったー

:移動中はずっと映像を映すだけなの?


「とりあえず月への移動はもうほぼ終わっております」


 モコスがそう言うと地球に向けられていたカメラがぐるっと回転し、大きく至近になった月を映し出した。そしてそれに沸き立つコメント欄。


「……月は地球人には見慣れたものですよね? 探査機も時々飛ばしているようですし」


 モコスとしてはついでに立ち寄った程度のことであったが、リスナーたちの反応に少々困惑していた。


:いやいやリアルタイムの映像は珍しいんだ

:月への有人飛行は数十年ぶりだぞ

:もっと寄れない?

:モコスの船の性能なら着陸も問題ないよね?


「着陸ですか? 特に見るべきものもないと思いますが……やれ? 着陸しろ? 時間のロスになりますが……」


 それでもリスナーたちが降りろ降りろと合唱するし、高額の投げ銭が飛んでくるのでモコスは仕方なしに着陸艇を少し移動させ月面へと降下させた。


「暗くて何も見えませんね……これでいいですか? ここはですね、地球から見た月の表側と裏側の境界付近ですね。複雑な地形になってますので、地球からは完全に見えない位置です」


:これが月面? なんかイメージと違うな

:普通の岩山みたい

:これまでの着陸はどこも平原だったし、月に山岳地帯は珍しい

:これはロケだな。特定班、どこで撮影したか探せー


「なかなか鉱物資源が豊富ですね。もし月で生産することになったらここを候補にしても良かったかもしれません」


 そう言いながらカメラを色々な場所へと動かしていく。


「月はこのくらいで十分ですか? 外にも出ろ? もちろん出れますけど……」


 要望の付いた投げ銭がポンポンと飛んでくるのでモコスとしても応じざるを得ない。しかしただ外に出てもこれまで映った岩だらけの地形があるだけだ。わざわざ搭載艇の外に出たところで地球人風に言うと映えがない。そうモコスは考えた。


:船外活動だ!

:CGか事前のロケなんだから船外活動なんかできるわけがない


 月の風景を映していたカメラが搭載艇に向けられる。カメラが搭載艇の船腹に寄ると船体の一部の色が変色し、そこからニュッとモコスが姿を表した。格好は部屋着でもあるTシャツにショートパンツである。


:いまどこから出てきた?

:膜状のエアロックなのか?

:それよりも格好が草

:家に居る格好で宇宙に出てくるやつがいるか!

:それよりもこれ実写だ!?

:モコスたんの普段着キター

:やっぱりここ地球だろ。あんな格好で月面に出れるわけがない

:本物!?

:めっちゃ美少女じゃん

:アバターそっくり

:これもアバターじゃないの?


「エアロックはエネルギーフィールドになっていて、体だけ通すようになっています。この格好も体はフィールドで覆われているので衣類にこだわる必要もないんです。それよりもこれから何をしましょうか? もっと私にカメラを寄せろ? 飛んでみろ? 違う? 空を飛ぶな? ジャンプ? ああ、地球との重力の違いが見たいのですか。こうですか」


:やっぱり実写にしか見えない

:こんなきれいな銀髪、現実に居ないぞ

:美少女すぎるし場所が場所なだけに現実味がなさすぎる

:空も飛んだしやっぱりCGに思えてきた

:でもこっちのコメントに反応して動いてるんだけど……

:足元の石を拾ってみて


 コメントの一つを見てモコスが足元の石を手に取ると、リスナーたちが月の石になにやら興奮しだした。


「そこら中にあるただの石ですよ? 月にあるから価値がある? ほしい? じゃあお土産に持って帰りますか。一〇個もあればいいですか? もっと? じゃあ一〇〇個くらい。石ももっと価値のありそうな石を探しますか? 岩山を少し採掘してやれば何か面白いものが……ここらへんに落ちてる石がいいんですか?」


 こんなどこにでもある資源として何の価値もないただの石を欲しがるとか、地球人のこだわりはよくわからないとモコスは思いながらも、搭載艇に指示を飛ばす。少し待つとエアロックから蜘蛛のようなマシンが三体、姿を現した。


「彼らは生産しておいた作業用ロボットです。石の採取をしてもらいます」


:うお、めっちゃ素早い

:なんかキモい

:器用に石を拾ってるな

:これって意思があるの?


「簡単な判断能力はありますが、自律意思はありません。自我のある頭脳体は銀河連盟でも相当に高度な技術が必要で、搭載艇の工作機械で作れるものではないのです」


 モコスがそう話す間にも三体の作業用ロボットは石の採取を手早く終えて搭載艇に戻っていった。

 

「石はいま見てる方から抽選としましょう」


 そう言うとモコスも搭載艇に戻っていった。


:ああ~、モコスたんが消えちゃった

:抽選はいいけど発送はどうするんだ?


「ではランダムで選んだ当選者を画面に出します」


 モコスがそう言うと画面にリスナーの名前がパパパパパッと表示されていく。わかりやすいように五〇音順アルファベット順である。


「この中で石なんかいらない、辞退したい方が居たら申し出てください。当選した方には地球に戻ってから発送します」


 辞退は一人も出ない。それどころか落選にがっかりする多数の声にモコスは首を傾げる。


:住所とか送ったほうがいい?


「大丈夫です。リスナーの個人情報は把握済みです」


:荷物を発送までできる個人情報って住所とか本名まで把握してるってこと?

:さすがに嘘だよな?

:俺いまネカフェなんだけど

:海外のAP経由だから把握なんてできるわけがない


「ネカフェだろうと海外だろうと地球人の原始的なネットワーク、追跡するのにさほどの労力の必要もありません。もちろん得た個人情報は必要な時以外乱用はしませんからご安心ください」


:こわいこわい

:本当に把握できるのか……

:前にやってたじゃん

:そうそう。宇宙人なら余裕なんだろ

:あたった人いいなー


「では地球に戻り次第、月の石を発送します」


:どうせそこらへんの石を拾って送るんだろ!

:まだ信じてないのかよって、こいつ当選してやがる

:信じてないけど辞退もしないんだな……


 このCG連呼氏。アンチかと思いきや、通常の配信は普通に楽しんでいるからモコスも放置しているのだ。それほど害はないし、実際CGで可能な映像ばかりなのも確かなのだ。そんなことを考えながらモコスが搭載艇に戻るとふわりと搭載艇が月面から浮き上がり、艦首を宇宙へと向けた。


:あの……モコスちゃんってもしかして本物の宇宙人なんですか?

:そうやで

:俺はまだ半信半疑

:全部嘘っぱちだよ。そうに決まってる

:諦めろ。地球は宇宙怪獣に滅ぼされるんだ

:やめろ。まじでやめろ。縁起でもない

:信じたくない。信じたくないけど……


「心情は理解できますが、地球防衛のためには信じてもらって協力してもらう必要があります」


 3Dアバターの姿で画面に戻ったモコスが淡々とそう告げる。


:もし本当に月の石が届いたら信じることにする

:でも普通の石と区別がつくのか?

:ちゃんとした研究機関で調べればわかるはず。モコスたん、石はきっちり密封してね


 石の一つで信用が得られるのなら安いものだと、その要望にモコスは頷く。


「ところで今日の配信はどうでしたか?」


 配信予定を終えたのでモコスはそう問いかける。リスナーたちは口々に感想を話し始めた。やはり宇宙に出て色々見れたのが楽しかったようだ。月の映像を始めて見たという声も多い。それからリアルの顔を晒したことの言及も多かった。また見たいようだ。


「ASMRですか? あれは少々性的でしょう。違う? 性的じゃないASMRも多い? 癒やし? ふむふむ。リアルのほうでやってほしい? 考えておきます」 


 雑談しながらもモコスの乗り込む搭載艇は宇宙を突き進み、時折リスナーの要望に従って地球や月、太陽にカメラを向ける。


「そろそろ通信ラグが大きくなってきましたから配信はここまでとしましょうか。明日はいつもより早い時間に、小惑星帯への到着に合わせて配信を開始します」


:二四時間かからないのか

:宇宙船のスペック知りたいな

:宇宙船の中とかも見たい

:技術情報は出さないって言ってたぞ

:次は小惑星帯か。楽しみだ

:火星に立ち寄れないかな?

:火星は太陽の向こう側だ

:木星ならこっち側だぞ

:でも木星は小惑星帯から距離がかなりある

:帰りに立ち寄るならいいんじゃない?


 出し惜しみはしないと決めたモコスであったがこれに関してはできない理由があった。


「確かに帰路なら時間的余裕はありますが、宇宙怪獣の探知能力が不明です。小型の宇宙船ですし、距離的に探知はまだ無理だと思いますが、余計な動きはしないほうが賢明だと思われます」


 搭載艇の重力発生装置は出力も小さく太陽系外からの探知は難しいはずだが用心に越したことはない。惑星近傍なら大きな重力源で加速に使う重力発生装置の稼働くらいは誤魔化せる。それでも月からの加速も最初だけ、最小限にする。重力発生装置以外の推進装置も一応あるが加速力が圧倒的に違うから星系内移動には不向きだ。


:寄り道はしないほうがいいね!

:そんなに見たいとかじゃないし

:モコスたんには地球防衛に集中してもらおう

:せやせや


「では明日は生産拠点となる小惑星の選定からです。お楽しみに~」


:おつかれさま~

:ばいにゃは?


「ばいにゃ~です」


:義務にゃ助かる

:宇宙怪獣って冗談ですよね?

:そうだよ。全部ただの設定だよ

:実際モコスたんの証言しかないわけだし

:宇宙人なのは信じそうだけど、銀河連盟とか宇宙怪獣がなあ

:全部CGなんだよ。お前ら簡単に信じすぎ

:ほんとCGだといいんだが



【本日の成果】

 投げ銭収益255万3200円 メンバーシップ加入2177人(月額500円)


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― 新着の感想 ―
先に進むのが怖いよね…(^◇^;)
次回タイムラグをどうするのか楽しみです。
地球人類には到底無理なことを、何の興奮も無く淡々とこなすモコスの様にワクワクが止まらんです。リアル容姿が人類好みだったのもグッド。銀髪いい。
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