第13話 配信9回目 【リベンジ】マルオカート【視聴者参加】
「こんばんにゃ! 宇宙人系地球救済委員会委員長モコス・イクシスですにゃ! 本日は視聴者参加マルオカートですにゃ!」
:こんモコ~
:わー、ぱちぱち
:宇宙怪獣なにそれ?って感じだな……
:昨日との温度差で風邪ひく
「宇宙怪獣に関してはやれることはやってますし、配信を削って進捗が進むってこともないんですよね。それに場合によっては五年一〇年かかる可能性もあるわけですし、前にも言いましたが通常のVtuber活動も重要です」
:もう一度、今度は日本政府と接触を試すと言うのはどうだろう
:一度試したんだよね?
:ルジアン連邦な
「あれはボスの指示もあったので出来たことで、独断での現地政府との接触は難しいと考えます」
宇宙人という正体を隠してでは相当に頭のおかしい人だし、かといって銀河連盟の技術の提示は良心回路が作動する危険がある。上司である自然人の判断、指示があれば情報開示もある程度可能ではあったが、ボスからの現在の指示は監視と待機である。今以上の活動は独断専行が過ぎる。
だがその時の経験があったればこそ、今程度の接触では良心回路は作動しないはずと踏み切れたのもあるのだ。
:そのボスは戻ってこないの?
「宇宙船の接近が宇宙怪獣を刺激しないとも限りません。次に銀河連盟の船が来るのは宇宙怪獣の討伐艦隊となるでしょう」
誰しも宇宙怪獣の相手などしたくはないし、未開文明とはいえ、一種族絶滅の原因とはなりたくはない。そもそもがこの近辺の銀河連盟の施設には通達がいっているだろうから、太陽系に近づくことが禁止されている可能性もある。しかしだからこそモコスが好き勝手できる余地もあるのだが。
:焦っても仕方ないのか
:ずっと宇宙怪獣が動かなければどうするの?
「宇宙怪獣を放置するのはあり得ませんから、いずれ討伐艦隊が編成されると思いますが、そうなれば皆さんとは長い付き合いとなるでしょうね」
:ワイはそのほうが嬉しいけどな
:じゃあ宇宙怪獣が片付いたら引退なの?
「それはその時になってみないとわかりません」
銀河連盟がモコスに対してどういう対応をするかは予想のできない部分が多い。残留を希望したとて接触の制限されている未開文明である。地球と銀河連盟が何の接触もなく宇宙怪獣を始末したとすれば、非合法すれすれの活動をしているモコスが処分される可能性すらある。何よりモコスが地球に残りたいのか、故郷に帰りたいのかよくわからない。
「さて、雑談はこのくらいにしてマルオカートをやりましょうか。今日は自信がありますよぉ~」
:お、言ったな
:練習してきた?
「練習はしてません。そんな時間も取れませんし。注文していたコントローラーが届いたので、一回試走しただけです」
ですが、とモコスはニヤリを笑う。
「前回の醜態はやはり操縦装置の問題だと判明しました。スムーズな操作性が確保できれば、この高性能アンドロイドに乗りこなせないわけがないのです。ええ、もちろん。一位を取れなければ罰ゲームですか? いいですよ」
:流れるようにフラグを立てる
:罰ゲームを考えておこうぜ
「ぼっこぼこにしてやりますよ!」
そうして対戦部屋が作られ、視聴者たちとのレースが始まった。
:うっわ。つよ
:本当に上手くなっとる
:さすがモコスたんや!
:いきなり上手くなりすぎじゃないか?
「これが万能アンドロイドの実力ってやつですよ」
:しかしコントローラーをプロコンに変えただけでこんなにうまくなるもの?
「種明かしをしましょう。届いた新しいコントローラーを見て思いついたんです。このアナログな操作方法が良くないと」
慣れない人間型ボディの手での操作からさらにコントローラーで操作という不慣れの二段構えである。新しく購入したプロコンでの操作性の向上も根本的な解決には至らない。しかしふと直接コントロールすればいいじゃないかとモコスは思いついた。
「信号を私の頭脳から直接出して操作をすることによって余計な負荷のかかるインターフェースを排除。精密な操作が可能となったというわけです」
そうこうしているうちにレースはモコスのぶっちぎりの一位で終わった。
:ちょっと何を言ってるかわかりませんね
:脳波で直接操作?
:どうやって?
「コントローラーからの信号を解析して、私の頭脳上に操作系を構築。私の意思に反応しての操作アシストや敵の攻撃の警告、効率の良いコースラインの表示など万全のゲーム補助機能を実現しました」
:コントローラーのエミュレーターを作ったってことか
:それは違法やで
:満天堂はハードウェアの改造、エミュレーション行為は禁じてる
:プロコンは公認だけど、モコスのやってる直接コントロールはまずいかもしれん
:アシスト機能は完全にアウト。チート行為
「マジ?」
:マジやぞ
:チャンネルバンか?
:単なる満天堂の規約だから配信サイトのバンまではないと思うけど……
:まあ知らんと一回だけなら見逃してもらえるんとちゃう?
:個人で開いた大会だったしセーフってことで
:また謝罪会見か
:届いたプロコンでやり直しだね
「うっ」
:これは罰ゲームが楽しみ
:またホラゲーやるか?
:苦行ゲー耐久とか
:歌枠やってほしい
:宇宙怪獣の情報をもっと出せ!
「だ、大丈夫です。コントローラーを使ったとしても効率の良い動きは習得しました。一時間もあれば一回くらい一位は取れるはずです」
:声が震えてるで
:こいつほんとにアンドロイドか?
:本気、出しちゃいますか
モコスはがんばった。コースレイアウトを自力で覚え、効率の良いコース取り、アイテムの使用方法を習得した。順位も一度は三位を取れたほどだ。しかしやはり慣れない人間型の手でのコントローラーの操作に相手は本気を出した歴戦のゲーマーたち。一時間で一位は難しかった。
:初心者にしてはようやった
:そうそう。相手が悪すぎた
:ごめんね。本気出しすぎちゃったカナ
:五歳児相手に本気出すとかさあ
:コース覚えるのは得意みたいだし、あとは操作を改善すればすぐに一位は取れそう
:それはそれとして罰ゲームは決定な
「罰ゲームはホラーでよろしいでしょうか? はい。コメントで出た中から次回までに選んでおきます……」
:すっげえ嫌そうな顔してる
:ホラー苦手とかこいつ絶対アンドロイドじゃないだろ
:五歳児だぞ
「明日は歌枠の予定です。銀河連盟の歌を選定して歌えるようにしましたのでご期待ください。ではチャンネル登録、高評価、SNSでの拡散等、よろしくお願いします。SNSのアカウントは概要欄に貼っておきますので、そちらのフォローもお願いします……」
:おつモコス~
:元気だして
:おお、宇宙の歌か。これは楽しみだ!
【本日の成果】
同時接続数722人。チャンネル登録者数1815人。SNSフォロワー数1692人




