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宇宙怪獣vsVtuber ~地球最後の日に貴方は何をしますか? 答え:Vtuberの配信を見る~  作者: 桂かすが


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12/22

第12話 配信8回目 【地球防衛計画】雑談【進捗状況】

「こんばんにゃ! 宇宙人系地球救済委員会委員長モコス・イクシスですにゃ! 本日は地球防衛計画の進捗確認などをする予定にゃ!」


 モコスを待ちながら雑談をしていたコメント欄がその登場に沸き立つ。コメントの多くはモコスへの挨拶だったが、地球防衛計画への言及、トゥル・リィ・ナ=オに関することも多い。あれは明らかな失敗だったとモコスは考えながら、軽く言及しておくことにした。宇宙怪獣の件は結論が出てないから後回しであるが他にも話しておくべきことが今日は多い。


「トゥル・リィ・ナ=オに関しては銀河連盟法に抵触する危険があるので、これ以上の情報は出せません。もし今後、地球が銀河連盟に接触することがあれば、改めて聞いてみるといいかもしれません」


 宇宙の曲とリクエストを受けて、そのまま宇宙の曲を出してしまった。普通のヒット曲で良かったのだ。銀河連盟の所属文明は多い。データベースには地球人でも理解しやすそうな曲が大量に記録されていた。次に歌うことがあれば、そこからピックアップして歌うつもりである。


「まずは地球防衛計画の現在の進捗に関して確認してみましょう」


 モコスはトゥル・リィ・ナ=オに関する不満の声を無視して話を進めることにした。核兵器、質量兵器、ソーラーレイ、重力場発生装置、偽装輸送船と画面に表示する。


「これらの設計は終わったので、今はそのための生産設備の設計を行っているところです」


 物質合成機やマザーマシンのような汎用性の高い装置で多くは作れてしまうが、生産速度や効率を考えると専用の設備がどうしても必要だと、モコスは説明をする。


「兵器群が当初の計算より多く必要で、それに伴って生産設備も相応に大規模になってしまっています」


 これはモコス側の能力の問題もあった。そのような設備を作るための知識は用意していなかったから、小型化や効率化まで手を付ける余裕はなかったのだ。宇宙怪獣に効果のありそうな破壊力の高い高性能な兵器の生産も手持ちの装備だけでは無理だから、数で補う必要があった。


「前回の話で月か小惑星帯かという話をしていましたが、生産場所は小惑星帯へと決定させてもらいました」


 生産設備の大規模化と資源採取も広範囲に行う必要から隠蔽工作が難しくなることをモコスが説明すると、リスナーからも納得の声があがった。地球からすれば未知の高度な兵器群だ。その工場が到達可能な月面にあると万が一にも知られるのはとてもまずい。


「それでは地球での準備が整い次第、小惑星帯へと向かい、手頃な小惑星をいくつか接収したいと思います」


:ついに宇宙に出るのか!

:小惑星の接収って勝手にやってもいいんだっけ?

:宇宙は誰のものでもないから、早いもの勝ちなはず


「地球の法律的には問題はないはずです。もちろん宇宙人が勝手に知的生命体のいる星系の資源を採取するのは銀河連盟法的にアウトですが、大規模にやらなければ違法ではないですし、今回は緊急避難的行為でもあります。そのうえ現地人、地球救済委員会からの依頼、承認という形にもしますから問題はまったくありません」


:ワイらが地球代表で承認するんか

:もう承認済みなんやぞ

:使ってない小惑星の一個や二個、かまへんかまへん

:ダメだダメだダメだダメだ!宇宙人が勝手をするな!


 数少ない否定コメントを瞬時に消してブロックする。彼らは地球救済委員会のメンバーではないただの個人だから、地球防衛計画への発言権はないし、彼らに構っている時間も惜しかった。


:コメントが消えた

:このモデレーター素早いなー


※モデレーター コメントをチェックして消したりブロックしたりする権限を持つ人。大手Vtuberなどは専用の人が担当することが多いが、当然モコスは配信しながら自分でやっている


:ワイも宇宙に行きたい

:承認するなら小惑星帯に地球人の監督も必要なんじゃないか?

:それだ!


「銀河文明との直接接触は最小限に願います」


:そりゃそうだ

:残念

:下手に接触してモコスたんの良心回路が作動したら大変なことになるぞ


「しかし銀河連盟との接触後に機会があれば、貴方がたを宇宙に招待することを約束しましょう。今の段階では確約もできませんが」


 これくらいは良かろうとモコスは考え、そう発言をする。銀河連盟と地球が接触を果たすことがあれば、それは大きな商売のチャンス。この程度の優遇措置は安いものだ。

 それに宇宙怪獣の早期襲来の可能性が高まったことで計画を前倒しにする必要があった。打てる手はすべて打とうとモコスは覚悟を決めた。今の段階ではリスナー数、計画への賛同者がまったく足りない。今宇宙怪獣に来られては資金確保のための漫画やアニメがどれだけ集められるか。使用許可のあるたった一本の通信ロケットは無駄打ちできない。


「では希望者はコメントで希望を述べてください。きちんと記録しておきます」


 コメントがかつてない勢いで流れていくのを見てモコスは少し考える。これだけの人数、個人の特定にコメントとアカウント名だけでは不足しそうだ。宇宙旅行に招待するのだから、ある程度の個人情報の把握も必要なことである。手間ではあるがネットワークから個人情報を収集し、確実にデータベースに記録していくことにした。中には役に立つ人材もいるかもしれない。


「そうそう、チャンネル登録はしておいてくださいね。未登録の方は無効とします」


 そのモコスの発言で登録者数がすごい勢いで増えていく。


「問題発言によりブロックされたにもかかわらず宇宙旅行を希望されている方がいるようですが、問題行動を起こす方に許可は出せません。端末や回線を変えたところで私には発言の発信元をリアルタイムで把握する能力があることを改めて警告しておきます」


:ざまあ

:モデレーターに瞬殺されてるやつらか

:それで宇宙旅行希望するってどんだけ恥知らずよ

:だっさ

:お前ら宇宙行けるって本当に信じてるのか? あ、俺は信じてるので希望でお願いします

:ま、まああんまり信じてないけど?宝くじとか買うよりかはいいかなって

:ワイはモコスたんのことを信じとるで!!!


「確約はほんとうにできませんが、私にできる限りのことはするとお約束します。それと今日リアルタイムで視聴できなかった方で、初期からのメンバーやすでにチャンネル登録済みの方は後ほど申し出てください。そうですね、この配信のコメント欄に書いておいてくださればリストに乗せておきます」


:宇宙旅行ってどこまでいけるの?

:月くらい行けるといいな

:他の星系は搭載艇じゃさすがに無理か

:日程はどんな感じ? 一週間とかかかるなら有給取るのもきつい


「人数も多くなりそうですし日帰りにしますか。宿泊するとなると考慮する事項が多くなりますので。距離は木星くらいが往復の限界です」


:日帰り宇宙旅行は草

:木星ってそんなに近かったっけ?

:光速でも三〇分とかそんな感じだったはず


「宇宙旅行の話はまた後日。今日はまだ話したいことがありますので」


 そう言ってモコスはリスナーからあった質問をピックアップして回答していく。


「まず何人かがコメントしていましたが収益化ラインをクリアしたのですでに申請済みです。認可が降りればまたお知らせします」


:おお、やっとか

:個人勢にしてはめっちゃ早いよ

:投げ銭は任せろー、バリバリ―

:メンバーシップはやるのかな?


「そのあたりもまた枠を取って決めましょう」


 あとは地球防衛計画の詳細を尋ねるコメントが多い。兵器などの情報提供はなるべく限定する予定であったが、これも出し惜しみはしないことにした。


「小惑星帯への出発は数日後とだけ。兵器の詳細ですね。デザインはこんな感じとなっています」


 そう言って画面に輸送船と書かれたグラフィックを表示する。輸送船はずんぐりとした気球船か、薬のカプセルのような形状をしていた。銀色でのっぺりとした印象である。


:なんか、こう……

:ぱっとしない

:輸送船? 丸っこいなあ


「これは偽装輸送船ですし、凝ったデザインは必要ありません」


その輸送船のグラフィックをクルクルと画面上で回すと、辛うじて推進部らしき穴がいくつか見て取れる程度。


「この輸送船は全長が一五〇〇メートルほどあります」


 対比として東京にある有名なタワーと富士山が輸送船の横に表示される。富士山の高さは三七七六メートル。こうして比べてみるとその巨大さがリスターたちにも理解できた。


:でっか!

:そりゃ月面で隠せないわ

:こんなのが簡単に作れるの!?


 輸送船の背景が宇宙空間へと切り替わり、輸送船のサイドから小さな粒のようなものがいくつも射出される。


「輸送船は核ミサイルの発射装置も兼ねています。輸送船である程度宇宙怪獣に近づくことで、核ミサイルの射程を短く設定できます」


 ミサイルにカメラが寄り、やがて進路上にあるごつごつとした黒い小惑星に命中し、小さな爆発を起こす。


「これが休眠状態の宇宙怪獣で、サイズは一二〇キロメートルほどもあります」


:でっか!!!

:これが怪獣?

:実際の映像なの?


「観測データから構成したものですから、外観に関してはほぼ正確です」


:120キロってどのくらいだ?

:東京駅から富士山頂がすっぽり収まるくらい

:大阪から名古屋までだと少し足りないか

:普通に落下するだけで地球終わっちゃうよ

:核ミサイルで効果あるの?


「では核ミサイルの性能をシミュレーションで見てみましょう」


 映像がミサイルに切り替わる。ミサイルは平べったいスイカの種のような形状をしている。


「現在地球に存在する最強の爆弾は、ツァーリ・ボンバと呼ばれる五〇メガトン級の核兵器だそうですね。しかしこの位相結晶化技術による融合核は、ティースプーン一杯ほどの分量でその二〇倍以上の出力を持ちます。よくわからない? では比較映像をご覧ください」


 位相結晶化融合核ミサイルと書かれたミサイルの横に、巨大な爆弾らしきものが配置され、ツァーリ・ボンバと表示される。位相結晶化融合核ミサイルは全長一二〇センチ程度で、ツァーリ・ボンバは全長八メートル、直径二メートルほどとなる。


 ツァーリ・ボンバが黒い小惑星へと接近し、表面近くで大爆発を起こす。接近した映像は発生した火球が黒い小惑星の地殻を破壊し、まるで本物の映像かと見紛うばかりの迫力で熱と破壊を撒き散らす様を映し出す。

 爆発の余波も収まらないうちに二つの目の爆弾、位相結晶化核融合ミサイルが現れ、地殻に激突、破片を撒き散らしながら地殻に完全に潜り込んだ。


:ぶつかった

:不発?

:バンカーバスターかな?

:あ、ばくはつ


 位相結晶化核融合ミサイルはツァーリ・ボンバの爆発が豆粒に思えるほどの破壊をもたらした。地殻がめくれ上がりツァーリ・ボンバの爆発をも飲み込む巨大な火球が黒い小惑星表面に発生する。


「これを最低でも一〇〇発。できれば一〇〇〇発以上用意したいと思っています」


 爆発が収まると黒い小惑星表面には小さな凹みが出来ていた。もともとデコボコの多い小惑星の表面だ。どこで爆発が起こったかよく見ないとわからない程度の痕跡しか残されていなかった。


:桁が違いすぎて威力がよくわからない


「東京で爆発させれば関東平野は更地になるでしょうね。ですがご安心ください。位相結晶化融合核は放射能の発生も極少量で抑えられます。核汚染は爆心地とその周辺程度で収まるとてもクリーンな兵器なのです」


:安心できる要素がない

:こわいこわい

:これが一〇〇〇発もあれば宇宙怪獣とか余裕で倒せるのでは?


「相手がただの小惑星ならある程度破壊できるとは思いますが……シミュレーションを走らせてみましょう。核分裂ですか? 核分裂弾は核融合弾より威力が小さかったので一本化しました。条件をセット。ではシミュレーションをスタートします」


 映像が再び黒い小惑星に変わり、小さいミサイルが雲霞のように小惑星に殺到する。


:これリアルタイムで作ってるの?

:いくらなんでもそれはない

:これくらいの映像は普通に作れるでしょ


「結果が出ました。一〇〇発でただの小惑星であれば、その質量を二八パーセントほど削れるようです。一〇〇〇発なら完全消滅が可能ですね」


 画面の小惑星は頭のほうが削れ、少し小さくなってしまっている。


「宇宙怪獣に効果があるのか? ではそちらを見てみましょう。続けて攻撃を加えたとして、宇宙怪獣が目を覚まして対応します」


 核ミサイルが再び宇宙怪獣に迫り、小惑星の表面に火球を大量に発生させる。そして爆発中に画面が止まり、小惑星がズームにされた。


:同じじゃないか

:映像が止まった?

:攻撃が届いてない?

:なにか境界があってそこで遮られてるね


「これが宇宙怪獣の基本的な兵装、重力場シールドです。この程度の少数の核融合弾ではまったく効果が見込めません」


:もうダメだあ

:地球はおしまいね

:少数の?多ければいいのか?


「シールドを張るのにもエネルギーが必要ですし、耐えきれる熱量にも限度があります。その限界を上回ることができれば破壊は可能です」


:でも無理なんだ?


「これだけ大型だと体内に蓄えているエネルギーも、張ることのできるシールドの強度も相当に高いと考えられます。私の計画する生産量ではまず無理ですね」


:もし地球政府が全面協力して生産を増やせばどうだろう?


「宇宙怪獣も当然反撃します。たとえ想定の一〇〇倍の生産量があってもこのクラスの兵器では時間稼ぎにしかならないでしょうね」


 宇宙怪獣によって星間文明を築いた種族がいくつも滅ぼされたきた。初歩的な核エネルギーでは対抗すらできない。宇宙怪獣の持つ重力場操作技術を解析することによってようやく銀河連盟は宇宙怪獣と同等の力を手に入れることができたと、モコスは解説するとまたもコメントでは絶望的な声があがる。

 

「では続けてソーラレイを見てみましょう」

 

 カメラは輸送船に戻り、円筒形の物体が射出される。サイズは約二〇メートルと表示される。

 円筒形は太陽へと向かうと、突如花が開くようにキラキラ光る鏡が展開される。


「光学力場を利用したソーラレイシステムです。光を反射するだけの弱い力場ですから、低出力で広範囲に展開できますし、動力は太陽光ですから半永久的で物理的な破損もありません。今回は攻撃兵器として作りましたが、本来はエネルギー収集のための機構です」


:今回の配信情報量多い

:わー、ソーラレイかっこいなー


「ソーラレイでは一〇億度に近い温度のレーザーを発することができます。十分な数を用意できれば、あのサイズの普通の小惑星なら消滅させることが可能です」


 ソーラレイが発射され、黒い小惑星を発熱させ、削り取っていく。そこに新たなレーザーが加わり、小惑星の破壊を加速していく。


「計画では一〇基を一ユニットとして同期させて攻撃を集中、破壊力を積み上げます。ソーラーレイは分散して配置して遠距離攻撃ができますから、宇宙怪獣への嫌がらせとしては優秀だと思われます」


 本体は小型で自力での移動も多少はできるし、製造コストを抑えるため防御機構は搭載できなかったから遠距離攻撃を当てられればあっさり破壊されてしまうが、数があり小さい分 、狙うのも困難であることが期待できるともコスは説明を加える。


:勝ったな!ガハハハ!

:いや無理ってモコスたん言ってるじゃん


「わずかでも撃滅できる可能性があればいいのですが、核融合ミサイルもソーラレイも効果は薄いでしょう」


 画面が切り替わり、別の小惑星が表示され、宇宙怪獣へと向かっていく。近づくにつれ宇宙怪獣より巨大な小惑星のサイズが明らかになる。


「質量兵器です。直径五〇〇キロの小惑星を最大で光速度の一八パーセンまで加速してぶつけます」


 ざわめくコメント。

 巨大な小惑星が黒い小惑星と衝突すると、黒い小惑星は大きい方の小惑星の表面でひしゃげるように壊れ、完全に砕け散った。


「小惑星の衝突面にシールドを展開、衝突時の破壊力を強化します。相手の小惑星が通常であれば、簡単に破壊してしまえる威力です」


 シールドと加速ユニットは共用できる。それに核エネルギーでの加速装置も加え、衝突時の速度は理想的な条件下で光速度の一八パーセントにまで達する。もっとも実際は五パーセント程度が限界だろうともコスは説明を続けた。


「宇宙怪獣にぶつけた場合ですか? そうですね……」


 画面が切り替わり、またも二つの小惑星が接近していく。そうして激突。瞬間何も起こらないかと思われたが、大きい方の小惑星が突如爆発四散した。


「どうやら重力場シールドが一瞬拮抗した後、我が方の側の小惑星のシールドが消滅、運動エネルギーの反動で一気に破壊されたようですね。ですがこちらの速度によっては宇宙怪獣の速度を落とせるので、これも多少の時間稼ぎにはなりそうです」


:この映像ってリアルタイムで作ってるの?

:事前に用意してたんじゃないの?


「リアルタイムで走らせたただのシミュレーション映像ですが……地球の技術でもこれくらいは作れますよね?」


:隙あらば地球をディスるじゃん

:時間をかければ作れる

:映像も込みでリアルタイムとなると最先端の研究所でも作れないよ

:銀河連盟の技術なら余裕なんでしょ

:普通にそういうアプリがあればいけるだろ

:アプリって。そんなアプリが本当にあるなら、ハリウッドあたりが何億ドルでも出すぞ

:宇宙人って設定だろ。設定だよな……

:もちろん設定だぞ。じゃないと地球を狙う宇宙怪獣も本当ってことになる


「ふむ。これらの映像も事前に時間をかけて作ったもので、もちろん銀河連盟も宇宙怪獣もただの設定ですし、位相結晶化核融合ミサイルも架空の技術です。ご安心ください」


 そう言ってモコスは映像をいつもの部屋に戻す。何気なく使って見せたが、少々オーバーテクノロジーだったらしいと白々しいフォローを加える。地球文明を超える技術を持つと信じられても困るから公式には否定しておいたのだ。


:事前に作ったのならそんなに驚くようなことでもないのか?

:でもデビューしたてのVtuberが個人でやれること?

:真剣に恐ろしくなってきたんだが

:奇遇やな。ワイもや


 単なる兵器の紹介のはずが一部のリスナーに思わぬ反応。これは喜ぶべきことなのだろうと、モコスは判断した。もともとは徐々に時間をかけて情報開示する予定であったが、急ぐべき理由がある。


「それで兵器の設計が一段落ついたので、もっと襲来確率を正確に予測できないかと先程宇宙怪獣の動きに関して再調査してみたんです」


 モコスが説明をしていく。すでに一年が過ぎているが五年で30パーセント、一〇年後で90パーセントが当初の予測である。この数値は本船の高性能な頭脳体が出したもので間違いはない。


「しかしこれはあくまで平均値だったのです」


:どういうこと?

:平均から外れるともっと早まるかもしれないし、遅くなるかもしれないってことなんだぜ


「そうですね。本船頭脳体の予測では四年目の確率はわずか2パーセント。発見から五年目に30パーセントに跳ね上がると数値が出ていましたが、これがまったく当てにならないことが私がした計算により判明したのです」


 ざわめくコメントにモコスは結論を伝える。


「宇宙怪獣は個別に進化をします。今生き残っている宇宙怪獣は相当に年月を経た個体ですから、平均的な数字は単なる推測にすぎず、場合によっては今日明日にも動き出す可能性があるということです」


 おそらく頭脳体は数字を出せと要求されたので一番確度の高い数字を出したのだ。ボスもモコスも高度な知性体である本船頭脳体の出した結論を欠片も疑うことがなかったし、実際これ以上の数値の出しようもなかった。


:もうダメだあ

:もし今動き出したらどうなるの?


「我々にできることは何もありません。銀河連盟に一報を入れて、救援が来ることを期待しましょう」


 コメントは混乱状態になっている。絶望する者。議論を始める者。怒ったり平静を装ったり。


「では本日の配信はここまでとします。明日は同じ時間にマルオカートのリベンジを行います。お楽しみにー」


:いやそんな場合?

:わー、楽しみー

:おつモコス~

:どこまで本当かわからん……

:こんなのネタに決まってるじゃんね

:宇宙には行ってみたいけど、本当ならそれはそれで困る

:困るっていうか人類滅亡なんだぜ


「ではチャンネル登録、高評価、SNSでの拡散等、よろしくお願いします。SNSのアカウントは概要欄に貼っておきますので、そちらのフォローもお願いします」



【本日の成果】

 同時接続数1156人。チャンネル登録者数1690人。SNSフォロワー数1611人


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― 新着の感想 ―
最高に面白いです。個人的には既にトップクラス。 VTuberとSFの融合がここまでの化学反応を起こすとは・・・ これもシナリオとモコスたんのキャラあってこそなのかなと。 現実の危機の深刻さとユルユルな…
楽しいです。
全く詳しくはないのですが >ソーラレイでは一〇億度に近い温度のレーザーを発することができます。 これは、太陽光を集めてただ反射するのではなく、太陽光のエネルギーをもとにレーザーを励起して、そのレーザー…
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