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殺し屋とヴァンパイア  作者: ひいらぎ桜
出会い編
2/4

普通じゃない兄妹


「♪ 〜♪〜」


私は自分の黒髪を触る。

ツヤツヤの腰まである髪は、私の自慢。

まぁ、いつも妹に美容の実験台にされてるからというのも理由なのかもしれない。

彼女の名前は日向しおり。

五兄妹の長女。勉強も運動も要領よくこなす。

ここだけを見ればと誰もが優等生な()()()と認識するだろう。けれど、彼女は普通の人間じゃない

彼女の齢は十六歳。高校一年生の年齢だが学校になんて通っていない。

父も母もおず、そもそも住んでいる家なんて存在しない。


なぜそうなのか。


その疑問が頭に浮かんだところで物語の幕は開ける。


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯


「「「しーおーりー姉っ!」」」


本を読んでいると、突如背中に重みを感じた。

しおりは自分を脅かしに来た妹に向き直る。


「なあに? あなた達」

「あのね、しおり姉! 美羽姉にランク上げたいから勝負したら、三秒で吹っ飛ばされたんだよ!? めちゃくちゃ痛かった!」

「あら、大変だったわね」

「私はね、美桜姉にテスト勝負持ちかけたら、ふつーに負けた! ねぇなんで!?」

「それは美桜がすごいからよ」


妹たちのマシンガントークに相槌を打っているとドアが開き、丁度話に出てきた次女の美桜と三女の美羽が現れた。

途端に四女で双子の姉である美空と妹である美愛がそそくさとどこかへ消えた。

美桜がふふ、と笑いながら白い指で髪を耳にかける。


美桜はもともと、体が弱い。

しかも昔、誰かに呪いをかけられてあまり歩けない。

だから基本は車椅子に乗っている。


美羽は体術も魔術も器用に扱う。

それも相まって美桜が体調を崩した場合、美羽が対応をすることが多い。

下手な解術師や治療師がやるよりもよっぽどいいんだとか。

だからよくランク昇級試験で怪我した子たちが来て、長蛇の列になるらしい。

私たちは、とある施設で暮らしてる。

でもそれも普通の施設ではない。


殺し屋育成所だ。


遠い昔のその昔、人間と魔族は戦争をしていた。その時に重宝されたのが、スパイ、殺し屋、人斬り。


今はもう魔族は魔界、人間は人間界と別々のところで暮らしているが戦争で捕虜として捕らえられた人間や魔族の子孫がそこで暮らしているという風に一見見れば良好な関係ではあるけれど、その戦争の名残で、しおりたちは依頼人から注文を受けたら、依頼を遂行し報酬をもらう。ということを生業にしている。


もちろん実績があったら給料は上がるし、ランクも上がる。

普通の親元に産まれていたら幼稚園に通っていたであろうの年齢の子から、大学生活を謳歌していたはずの年齢まで。年齢層は場所によって様々だが、この施設は比較的若い年代の人間ばかりだ。


ランクは上から順に、アレキサンドライト、パライバ、カリナン、ピジョンブラッド、パパラチアとある。


しおり、陽、美桜、美羽はアレキサンドライト。美愛、美空はパライバに所属している。

アレキサンドライト、パライバ合わせて人数は十人。

一番厄介な注文は、だいたいここに来る。

まさに死と隣り合わせな要求ばかり。死んでいった者たちを何人も見た。


「ーーん?」


気がつけば、美羽が壁の向こうを見つめている。


「どしたの美羽姉。そっち壁だよ?」


美羽の異変に気づいた美愛が声をかける。


「誰かがこっちに来てる」

「ええ・・・・・・マジでぇ・・・・・・」

「美羽姉、それ誰か分かる?」

「ちょっと待って、美空」


美羽は髪を耳にかけ、コツンと床を蹴って音を出した。


「いつもの世話人と身長が高そうな男」

「誰だろ。その人」

「うちらを買い取りに来た人とか?」

「えー美愛、そんな冗談よしなって」

「そうだぞ。美愛」

「うおっ。陽兄」


いきなり現れた長男の陽に美愛は驚いた声を出す。

普通に足音なくて怖いんだけど。


「陽、いつ帰ったの?」 


美桜の言葉を聞いた陽はポリポリと頭をかいた。


「今帰ったところ。本当は明日ぐらいの予定だったんだけど世話人がすぐ帰れって」

「ほんとに何かあるのかもね」

「もう、美羽姉までなに?怖いんだけど」

「俺達もついに用済みかもな」


陽が美愛を脅かそうとにやりと微笑む。


普通は世話人に逆らったら、拷問室に連れて行かれて非常に合理的な処置をされる。

アレキサンドライトに所属している人間は世話人も抑えきれないから、特別危険視されているのだ。

暴れないように、仕事以外は魔力を封じる特別に作られた足枷手枷で封じられ、この部屋も10メートルぐらいの鉄製の壁で囲まれてる。

まあ、美羽の得意なピンの鍵開けで枷は外せた。

結構抜けてるというか、簡単すぎるだろというか。

本当に特別な枷なのか甚だしい。

しかしこの部屋にいる限りは世話人の監視から逃れることは出来ない。

身勝手な行動は、いくら金になろうと命にかかわるのだ。


ぺちゃくちゃと喋ってる間に時間がきてしまった。


「ーー来る」


美羽が言ったと同時に重い鉄のドアが開かれた。

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