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灰色の通路にて
コツ コツ
男の足音が響く。
明かりが灰色の床と壁を鈍く歪ませた。
足音がするたび影が伸び縮みを繰り返す。
男は細身であり、しかししなやかな筋肉がついていた。癖のある毛が頬骨をかする。
その男の斜め後ろを歩くやや小太りの男がそっとささやいた。
「本当に、彼女たちで良いんですか?」
「ああ。もちろんだとも」
男は感情を見せない笑顔で答える。
「君は私の目を疑っているのかい?」
いえっ、そんなまさか。と小太りの男が声を裏返しながら言う。
「・・・・・・ですが」
小太りの男が続けようとした時、時間は止まった。
細身の男が美しく微笑んだからである。
まるで悪魔に代償を捧げる代わりに願いを叶える。という甘い囁きを、耳元でされているかのようだった。
背徳感と満足感が小太りの男の頭を埋めつくす。
細まる眼は全てを見通しているかのようで、小太りの男は喉を嚥下させた。
男は、さらに微笑むだけだった。