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目的の違い-2

現れた少年の態度への反応は三者三様であった。


頭を抱え呆れるローデン、失礼だと訴える視線を送るリルエラ、一瞬の出来事に驚きを垣間見せるがすぐに理解に達し幸先を憂う須藤である。


場の空気を乱した事も察せられず、勇者ライオが須藤の近くへと歩み寄り仁王立で口を開く。


「あんたが新しい仲間か、俺が勇者ライオだ、これから宜しくな。」


気さくな青年、見方を変えれば不躾な青年、今の場面では後者の印象が強いだろう。


「そうか、君が勇者か宜しく。」


当たり障りのない淡白な言葉を返し、ローデンとリルエラの方へと視線を戻す須藤。


不和を避ける為、話を広げなかった須藤だがその後ライオがどんな反応示すかは容易に予想でき、ローデンへ目配せする。


(何だよ、もっとあるだろう。俺は勇者何だから、リーダーになるだ、もっと頼りにしているとかないのかよ)


英雄願望が増長し、苦労を知らずに手にした力に傲慢な思考が育まれた青年には、須藤の態度は案の定気に食わない。


「顔合わせはこれで出来たかな…須藤殿は此方に来て間もない、入用の物などもあると思うが何か必要な物はあるだろうか?」


意図を読み取るローデンがすぐに話を逸らしに掛かろうとする、しかし、それでもライオを止める事は出来なかった。


「世界を救う勇者が挨拶しに来てやったのにその態度は何だよ。これから一緒に魔王討伐に行くんだからもっと何かあるだろう?」


「はぁ、君達と行動を共にするか俺はまだ決めてもいないのだが?」


癇癪を起こした子供と変わりないライオの態度に須藤も対応が雑になる、溜息をこぼし、あたかも決定事項の様に話す彼に対して呆れる事しか出来なかった。


「話には順序がある、俺は神を身近に感じる程信仰心もない、そういう場所で生きてきたからな。神に言われたから、神託があったからと使命感に駆られる事もないんだ。」


「世界の平和が掛かってるんだろ?なら、世界の為に人の為に行動起こすのは当たり前じゃないか。」


須藤の言葉にライオの増長された使命感に火が灯る。


「苦しむ人々が居るんだ、その人達を助けるのが力を持ったものの勤めだろ、俺達は創造神様から使命をあたえられたんだからそれが当たり前だろう。」


「実害は多少なりあるのだろうが命のやり取りを強要しなければならない現状とは思えないな。何より人類側に死人も出ていないのだろ。」


ここで須藤は迷う、今の彼の言葉は承認欲求であると言うべきか、助けを求め悲惨な戦争をしているのならまだしも、この世界で人々は概ね平和に暮らしている。


ただ、神託だの勇者だのと盛り上がった国がそういう流れを作ってしまっただけ、ライオの言葉に重みが感じられないのも、世間知らずの子供がもてはやされ流された出た言葉に過ぎないからだ。


「君は少し自分の意思を持った方が良いだろう。俺自身は魔王を討伐する事が世界の平和に繋がるとは思ってはいないんだ。」


「はっ?魔王討伐する事が平和に繋がるだろ、何を馬鹿な事言ってるんだよ。ずっと敵対してるんだ、敵を倒せば平和が訪れるのは当たり前だろう。」


確かにライオと同じで魔王イコール敵と、この世界での人々の認識は一致している。しかし、須藤は人間の業の歴史を知っている。


共通の敵が居なくなれば人間同士で争うのが思想の違いを持つ人間の心理だと須藤は考えていた。結局争いは無くならない、そんな世界は実現出来る筈がないのだ自由意志がある限り。


「この世界は脅威が薄い、現に人間同士争っているじゃないか?それで平和が来るのか疑問に思わないか?」


「それは俺が勇者として阻止してやるよ。」


「それでは力による圧政と変わらない、仮初の平和なだけで平和が訪れたという事柄には繋がらないんだよ。」


須藤は告げる、この場の3人が不信感を持とうとも、関係性に亀裂が入る言葉を…


「俺は魔王を討伐する気はない、神託の解釈が魔王討伐でもだ。俺の解釈は違うのでね、目的の違う君達と行動を共には出来なさそうだ。」


その言葉に室内に静寂か訪れる。

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