事実は小説よりも奇なり
「死んだかと思えば…明らかに違う世界か。」
推理小説が好きな少年時代が切っ掛けで、探偵家業を始め、若くして名声を手に入れた男も呆気なくちったようだ。
確か、最後の記憶は、追い詰めた犯人の暴走車から子供を助けた瞬間だったか。
「実際の最後の記憶は違うものだったけどな。」
「それにしても、事実は小説よりも奇なりとは、体験しても信じられない事ってのはあるものだ。」
明らかに目の前に存在している数匹?数人?の少年少女、ファンタジー小説では良くフェアリーやら妖精やらと、呼ばれるべき容姿をしたもの達が飛び回っている。
俺を物珍しく見ては驚いたり楽しげに周りを回ったり、自由気ままに宙を舞っている。
「こういう場面に遭遇すれば驚くべきだろうか、それとも喜ぶべきか。」
生憎と冷静沈着で居ることが板につきすぎて驚きもあまりない、2次元やファンタジーに憧れでいるという訳でもなく根暗なミステリーオタクだった俺には喜びもない。
「さて、起きた事は仕方ない、取り敢えずあの街へ迎えと言う事なのだろうし行くしか無いだろう。」
些細な自己分析をしていても仕方ない、目的が示されているのであれば行動あるのみ、我ながら淡白であれどこういう染み付いた性格が急に変わる事もない。
「読める展開程面白くないものもないな。」
推理からくる確信、十中八九外れることは無さそうな結論に、足取りは重くなるが避けては通れない、フラグというものがこの転移にはあるのだろうと、門前に並ぶ行列を目掛け街道を街へ向けて歩み始める。