勇者と聖女は困惑する
「この紋章が神託の4つの魂の証拠らしいな。」
「急に飛んでもない力が備わってびっくりだったよ。ただの田舎の村娘が聖女だなんてまだ信じられないし。」
ライオが手の甲の剣の紋章を眺めながら物思いにふけり、リルエラは過去の回想を切りやめ、未だに不釣り合いだと思う服に身を包みソファーに居心地悪そうに座る。
「私達本当にこれから魔王を討伐に行くの?」
「そうなるだろうな、兵士は付いてくれるらしいけど…俺達がすぐに前線に出てどうにかなるかなんて思えないんだけど。」
2人の不安も最もであろう。
覚醒と言えるのか手にした力は強力なのは間違いなく、切羽詰まっていたのかは知らないが、創世神は技術面、技能面においても能力を開花させていた。
ライオにおいては剣技も卓越し、技の腕前においても他の目を疑う程であった。
「過ぎた力は身を滅ぼすなんて言うけど、まさにこの力は俺には過ぎた力だよ。」
「私達には力を持つ前に経験が足りなさ過ぎるよ…」
2人の不安は最もであった、ただ必要な処置であったことをこの時の2人が知る由もなかった。
「前線に迄は一月程度、その間に少しでも経験を積まないといけない、一兵卒にも満たない見習いには身が重すぎるぜ。」
「ライオはまだマシじゃない?私なんて一生関わり無かったはずの事なんだよ。」
外の歓声が室内に無闇に響き、2人へ重圧としてのしかかる。
逃げる道も選べない押し付けられた使命に人知れず溜息を零す勇者と聖女の憂鬱がそこにはあった。