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大きな誤算

「さて、色々小細工はしたようだが…」


思うようには動かせな体、エネルギーの循環の悪さに馴染み難い事に腹立たしさを感じる須藤の姿をした何かが表情を歪める。


「う、うぉぉ…」


恐怖に呑まれた騎士の1人が冷静さを失い剣を構え突撃を開始する、誰も止められない、思考が追いつかず触れては行けないものだと理解した為に。


「弱小な…この程度であれば今のままでも問題は無いか。」


須藤の声であるが何処か濁った声が呟かれ、突撃した騎士が振り上げた剣をそのままに動きを止めた。

騎士の腹を貫く腕、真っ赤に染まるそれが引き抜かれ彼の体が地に崩れる。


「あ、あぁ、イヤァァァ…」


人の死を間近に目にした事が初めてなリルエラの叫びが挙がる。


「ここまでだとは想像以上であったな。」


「須藤殿はどうされたのだ。」


ローデンに支えられながら立ち上がるモーンに、彼は追いつかない思考の中疑問を投げかける。


「我が抑え込んでいたのはこの世界の不浄だ。世界を回す為に必要な過程で作られる不純物と言えば良いか。」


それは人の負の感情であり、大地が消費した後のマナであり、魔法を行使した際の魔力のカスであり、それら全ての塊の事であった。


「本来、我が蝕まれ、神の血から作られた体を持つはずだった、それを須藤が肩代わりしたのだ。」


神が用意した弱体化の布石のひとつ、強靭な肉体を得る事の阻止、それには成功していたが須藤の意識等一瞬であり呑み込まれてしまったようだ。


「須藤の言葉では我らでもどうにかなる所まで弱体化する予定であったのだがな。」


「やつの事を聞いているのではない、須藤殿はどうなったのだ。」


質問と全くの論点がずれた話にローデンが声を荒らげる。


「須藤は消えた、我でさえああなれば自我を消滅させられる、須藤ではあながえんだろう。」


「そんな、その話は聞いておらんぞ、それでは生贄ではないか。」


「生贄何ですよ、最初からその為に転移させられたそうです。」


人が死ぬ事に驚愕のあまり泣き崩れ感情を乱していたリルエラが崩れたまま呟く。


「君は知っていたのか、何故報告しなかった。」


「須藤さんが決めた事だから、私達が止める権利なんてなかったんです。」


絶望の色を隠せない震えた声で彼女は声を振るい出す。


「でも、こんなの聞いてませんよ、須藤さんが抑え込むんじゃなかったんですか、一瞬で奪われるなんて…」


「想定外だ、須藤が抑え込む間に我らが奴を仕留めるはずだった。」


本来既に相手を拘束、出来ていれば成功、初撃に失敗しようとも戦力の総動員で相手の無力化は出来るはずであった。


だが、実際はモーンが須藤に施した拘束呪術は一瞬で破壊、吹き飛ばされた事により次の指示が遅れた為に今の状態に陥っている。


ただ、不幸中の幸いは突撃せずに済んだことである、突撃していたなら一瞬にして塵と化していたのだから。


「仕方ない、この程度で我慢するしかなさそうだな。」


震える力の上限が抑制されている事に苛立たしいのを隠さず、しかし、ひとつの踏ん切りをつけた彼が周りを見渡す。


「お前は俺の体だ、取り敢えず大人しくしていろ、あとそこの、お前は希望なのだろうな、絶望の為に使ってやろう。」


魔王モーンと聖女リルエラを指差し破滅が語りかける。


「他は…、要らぬな全てゴミだ。」


「ま、待てっ!」


一気に膨れ上がる圧迫感に何か来ると、腕を伸ばし制しを促すモーン、彼の声が虚しく響き渡った後、辺りが瞬く間に紅く染まった。


一瞬の瞬きの後目に映る情景は悲惨なものになっていた。

平原の地面は無作為に隆起し、そこにいたもの達の悲惨な現状だけが残る。


「少し残ったか、やはり扱いづらい。」


リルエラの張った結界に守られた数人の兵士、モーンの傍にいたローデン、そして逸早く上空へ逃げ延びたゼントル、ゼントルに関しては片足が向いては行けない方向を向いている。


「やつの強さが予想を上回ったのか、須藤がデバフを使う隙が無かったのだな。」


計画では須藤のデバフスキルを発動し、能力を大幅に下げた状態により作戦が組み立てられていた。

だが、余りにも早く自我を乗っ取られた彼がスキルを使う時間が無いまま具現した事で手をつけられないレベルのままなのだろう。


「まぁ、良い、一瞬のうちに滅するよりは退屈しのぎになるだろう、それでは世界の終焉を始めようじゃないか。」


指を鳴らし上空へと浮き上がる須藤、その頃全世界を埋めつくした赤黒い空に動揺が走り、上空に映し出された映像に注視されていた。


「これより世界は終わる、希望を捨てよ、絶望を受け入れよ、お前達に未来はないのだから。」


映し出された男から発せられた言葉を皮切りに至る所で赤黒い稲妻が世界を襲った。

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