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異世界人の必要性

「そんな馬鹿な事受け入れるんですか!」


発した本人さえ驚く程の声量でリルエラが叫ぶ。


「…、いや、びっくりさせられるな君にわ。」


詰め寄りながら声を荒らげる彼女に仰け反る須藤、同様少ない彼もこれには苦笑いを浮かべる。


彼女がそんな感情を顕にした内容、須藤は器であり、彼の能力は自身を依代とした神とて防げぬ自己デバフ。

異世界人という神の秩序から逸脱した存在だからこそ行える裏技であった。


「犠牲を押し付けて平和になるのなら今となんらか笑ないじゃないですか。」


予想していた通りの言葉にやはり話すべきでなかったと思う須藤。


「リルエラ、等価交換は分かるかな?」


「等価交換…ですか?」


日常に溢れているものだが、当たり前すぎてその言葉を使う人は中々少ない。


「物々交換にしてもしかり、金銭での購入にしてもしかり、何処に身近で行っているものだ。」


取引に置いて同じ価値の物を交換する、これはどんな世界でも共通の認識であり、それを歪めるのは大抵不可能である。


「魔族が担ってきた事を俺一人で担える、これは破格の条件だと思わないか。」


「利益の為に犠牲を出す事が正しい理由にはならないじゃないですか。」


無垢で濁りのない少女だから聖女として選ばれる、この答えにたどり着き1番の問題が彼女であった。


「必要な対価なんだよ。魔王の体ではなく、俺に移るようにしなければ更に酷い事になる。」


「何か方法があるんじゃ…そうですよ、私が願えば。」


「無理だろうね、悪魔で君の願いは神の力の範疇だ、どうにか出来るなら既に問題は解決している。」


世界にとって異物であるから出来る荒業、それを彼女が同等の事をするには様々な問題が生じる。


「君の願いにも条件がつけば可能かもしれないが、代償は俺とは比較にならないだろうよ。もし君一人の命で賄えるならリルエラはどうする。」


「それは、私だけなら…」


咄嗟に返そうとした言葉にリルエラは喉まで出かけた言葉を飲み込んだ、それは須藤の言葉を全肯定してしまう言葉だったから。


「狡いです…誘導です。」


「大人は狡いものなんだよ、俺が受け入れているんだ、俺の覚悟を認めて貰えないだろうか?」


仕方ない事だと納得ができるのは諦める事に慣れている大人の特権である、まだ10代の少女が割り切る事が出来るとは須藤も思っていない。


「どうして貴方がしないと何ですか、別の世界の人が関わる理由なんてないですよ。」


「魔王から聞いた話だと、この世界の人間と俺は魔力を受け入れる容量が違うらしい、魔力のない世界でいたから空っぽの状態なのだと、簡単に言えば容量の大きなゴミ箱だそうだ。」


実際はエネルギーを魔力へ変換する貯蔵庫の機関の事を言っているのだが、エネルギーにも色々あり、負の集合体である破滅の因子を受け入れ安い性質がある事から魔王はそのように比喩した。


「より受け入れやすい入れ物へ入れ、閉じ込めた上で消滅させようと言うわけだ。」


「須藤さんはどうなるのですか?」


「諸共にだろうね、元々異物だ、どの道向こうの世界で死んでいたのだから、元の鞘に戻るだけだよ。」


リルエラには納得し難い内容である、短い付き合いであるが、だからと言って結局生贄を捧げて得る平和なのだから。


「やはり認められません、認められませんけど止める事も出来ないです。」


彼女としても同じ立場であれば、選ぶ道だと言うことを須藤に誘導されて気付かされたばかり、自分では須藤を止める為の言葉を見つける事が出来なかった。


「悪いね、異世界人の英雄譚でも語り継いで手向けとでもしてくれ。」


「自分勝手過ぎませんか。」


どうにか和ませようとする須藤だが、如何せん経験が足りない、冗談のつもりが皮肉と取られることも道理であった。


「話すつもりは無かったんだ、話した事を褒めて欲しいくらいだよ。」


「貴方の決意は分かったつもりです。でも、須藤さんを諦める事だけはしません。」


自分より遥かに歳下の少女に気圧されてばかりの須藤、真剣に瞳に宿す決意で言葉を放つ彼女への返しが見つからない。


「須藤さんを止められないように、須藤さんも私を止めれませんから。」


意趣返しの様に、須藤と同じように反論の余地を失わせた上での言葉に困った顔で頷くしかない須藤。


ただ、彼はまだ隠していた、本当に隠さなければならない事実を、それだけは誰にも悟らせるつもりはなかった。


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