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聖女は気付かずにはいられない

「力を拡散させる為に魔族は死んでいたと、逆に抑制せずにそやつを起こす事で今の状況を破綻させるのですな。」


「そういう事だね、そこからは今まで以上の悲惨な惨状だ、世界の危機勃発という所か。」


「あまり笑えん冗談ですが…」


「勇者、聖女、魔王、そして俺でどうにかなる様には神も考えているんだろう。」


須藤は既に知っている、勇者の役割、聖女の役割、魔王の役割を、彼の神から得られたスキルによって、彼らのしなければならない事を、魔王は了承している、ライオは不安要素であるが、今の彼なら問題ないだろうと思っている。


「リルエラ、君の役目は分かるかな?」


「聖女の願いですね、効果は1度だけ願いを叶える。」


彼女なら理解していると思っていた、須藤は彼女が聡い子だと行動から察していた。


「その通りだ、ただ、君の願いだけではどうにもならないだろう、最後に君の願いが鍵になるだけで、その能力だけで抑えられるなら俺達は用意されていない。」


「私は、何を願えば良いんでしょうか。」


「それは分からない、俺からそれを語る事は出来ないね。君が本当に願う事が重要なんだろうからね。」


リルエラに不安が押し寄せる、須藤の返す言葉も一理ある、言われて願う想いなどたかが知れている、実際、彼女が自分で見つけた願いが力を引き出すトリガーであるのだから。


「決行は3日後、その3日以内に死にたくないものをこの地から逃がせ。」


「逃がすとはどういう、我らも助力しますぞ。」


「騎士団長、今回は死人が出るぞ。失敗するかもしれない、そうなれば滅亡だが、参加する者は少なからず死ぬ筈だ。」


人間側からすればこの戦地ははっきり言ってぬるま湯である、緊迫感のない陣営、命に関わらないという安心感が兵士の中に独特の緊張感というものを失わせている。


様々な戦地に赴いたローデンには須藤の言葉が刺さる、リルエラやライオの様な少年少女を連れてきたのも彼の中に危機感がなければこそ、すんなり受け入れたのだから。


「了解した、この3日で人選し直す事にしよう。」


その後のローデンはすぐ様主要人物を集めに向かい、その場にはリルエラと須藤の2人が残ることとなった。


「須藤様。」


「様は辞めてくれないか、やはり気恥しいのでね。」


「須藤さんでいいでしょうか…」


気まづい空気が漂う、前回もそうだが2人でいると会話に間が生じる。


「答え出たんですよね。」


先に口を開いたのはリルエラだった。自己主張を中々しない彼女だが、ここぞとばかりの場面では思い切りを見せる。


「そうだね、魔王様の言葉を引用するなら、破滅をもたらす者と言うらしいが、それからこの世界の生命を守るのが我々に課せられた使命なんだろうね。」


「じゃあ、須藤さんの役目はなんですか?」


「何って、人間と魔族を仲介する事だったんじゃないか、現に今そうしているのだから。人間であり、魔族とも偏見なく接する事が出来る者が欲しかったんだろう。」


須藤の言葉にリルエラは相手をじっと見上げて拳を握る。


「隠すの辞めませんか、だろうなんて曖昧に言って、答えが出たならはっきり言うのが貴方だって自分で言ってたじゃないですか。」


リルエラは聡いところがあると須藤は思っていた、だが彼女は聡い訳ではなく、人の機微に敏感なだけであるのだがそこら辺は彼の知る所ではない。


「隠すも何も俺に理由が無いじゃないか。」


「貴方の役目は貴方がやる必要ありませんよね、それに創造神様から与えられたスキルも持ってますよね、それで何も無いわけ無いんじゃないですか?」


「それは俺の真似事でもしてるのかな。」


須藤としては、彼女にだけは知られるべきでないと思っている。

彼の合理的な人間性から自分に課せられた運命が、不利益であろうと理に叶えば受け入れる。


だが、目の前の少女は聖女に選ばれる様な人間であり、他人への気遣いもしっかりでき、人の痛みに敏感だ、魔族の話の時も悲痛な表情を無意識に浮かべるくらいに。


「そういう所が隠してると思う所なんです、質問を濁したりする人じゃないのは私にだって分かります。」


彼女が長けているだけで普通数日の付き合いの人間性を的確に読み取る事は出来ないのだが、それを含めて聖女に選ばれた気さえすると須藤は思うのだった。


「君は知るべきではない。」


「知るべきです、隠すって事は私に受け入れ難いって事ですよね、全て無かったことにする事も出来るかもしれないんですよ。」


「脅迫とは、君は大人しい子かと思っていたが意外と過激な面も持ってるんだね。」


リルエラの予想外の猛攻にたじろぐ須藤、どうしたものか悩むが、自身の裾を握り逃がす選択はない意志を示す彼女に両手をあげるしか無かった。


(やはり俺は女性関係の経験をもう少し積んでおくのだったかもしれないね)


自分の弱点に今更ながら気づく須藤、不甲斐なさに呆れながら彼女へ話を語り出すのであった。

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