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ピースがハマる音

「この世界は魔族の価値観が軽薄過ぎる、魔族の生贄としての立場、これには理由があるんだろ。」


死があるために生を精一杯謳歌する、これはどんな生き物にも共通である。

しかし、死の恐怖がない、死ぬ事が生きる目標である魔族達の考えは須藤には理解出来ない事柄であった。


「それには我の事を話さなければならんな。」


「魔王の存在意義が関わるのか。」


「察しが良いなお前は、我は世界創造の為に使われた、神の血の残りカスなのだ。」


魔王が自身の話をし始める、話をする彼の表情は無表情であったが、須藤には悲愴感が伝わってきた。


「世界創造には幾つか順序がある、大地を作り生命を作り、最後に世界を回す為の断りと世界を管理するものが創造される。」


魔王言わく、全ての者には創造神の血が流れている、この世界のスキル等は神の力の恩恵なのだもいう。


「本来、創造神に変わり世界を維持する管理者、代行の神が居なければならないが問題が起き、崩壊を防ぐ為の機関として作られた我にその役割が回ってしまった。」


「元々魔王は世界の緩和材の役割しか無かったのか。」


須藤は魔王の言葉を頭の中で仮定を加えながら整理する。


「魔王とは本来転生を繰り返し、生きる物の憎悪を一手に担う者の事だ。それが管理する者になれば易々と倒される訳にも行かぬ。」


「魔王の存在理由が変わったから、その役割を全うするものとして魔族が産まれた。」


須藤の呟きに室内の気温が一気に下がる様に冷たい空気が漂う。


「違う、あれらは決して世界の部品として産まれた訳では無い。」


無表情のまま須藤を見据える魔王モーン、その視線に背筋が凍る気がする須藤。


「すまない、八つ当たりだ、我の役割を押し付けたのは我自身だ、お前に怒る権利は我には無いな。」


「そうか、抑え込む為に必要なんだ、だからこそ代わりを作るしかなかった、その為のに必要な器が魔族に無いから全体を巻き込んだ生贄になったと…」


推理モードに移行する須藤のブツブツと呟く姿をじっと見ながら、魔王モーンは話を止める。

しかし一向に続かない話に、ブツブツと思考を纏めながらも魔王をチラチラ見、話を続けるよう施す須藤。


「そうか、情報だけ寄越せとは不遜な人間よ。」


須藤の瞳が雄弁に物語っていた、情報をヒントをくれっと。


「世界の作り終わった後の神の血は滅却の為の力だ、そこにエネルギーが貯まらない為に、作動させない為に発散する拠り所として存在するのが我だ、そして我が貯めたエネルギーを発散させる為に宿命付けたのが魔族だ。」


「そうなると魔王様の中にある違和感は、そいつの存在か?」


「…!?待て、お前はそこまで感知しておるのか。」


「そいつの新しい器は十中八九俺でしょうね。」


魔王、魔族を滅ぼし。そして彼らを苦痛から救う、人間が平和になる、魔王の考えうる結末はそんなものだった。


「封印しているよなものなんでしょう、魔王様が死ねばそいつも死ぬならばあなたみたいな人はとっくに死んでいますよね?」


「勇者に聖女の力を加えればこやつと共にめ滅される筈だ。」


「それじゃ、俺がいる意味も、魔王様がいる意味もないじゃないか、勇者と聖女で達成されるなら俺の召喚なんて最初からありえないですよ。」


「なら、あの神は何をしたいというのだ、我々を散々振り回して。」


苦しんできたものにしか分からない理不尽への怒りが魔王を襲う。

今更全てを救うと言われても納得できないのだろう。


「全部救いたいんだろ、この世界の生き物を、世界自体崩壊させたくもない、抑えるのもそろそろ限界じゃないのか。」


須藤の言葉は確信をついていた、魔王に掛かる負担もそれなりにあり、魔族達の中に抵抗の強い者もいるが、それらでさえ破壊衝動を抑えきれない現状になっている。


「確かに、我自身呑み込まれそうになっているのは事実だ。」


「俺が鍵になっているだろう、何より俺は魔族に救われて欲しい。」


そして、須藤は決意する。

神の思惑通りになるのは解せないが、考えた通りの事が出来るのならばと、この世界を救う為に行動しようと。


自身に与えられた能力の意味を理解はとうの昔に理解していた。

ただ、それは須藤にとって素直に受け入られるものではなかった。


「俺が邪神にでも魔神にでもなってやる、だからあんた達は救われろ。」


須藤の言葉に何を言われているのか理解し難い表情を魔王モーンと、傍らで静かに聞いていたゼントルに浮かび上がった。


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