察しが良すぎるのも困りもの
まだまだリハビリ真っ只中、内容も薄い中読んでくださる読者様に感謝の一言で御座います。
須藤 雫が初めてトーファスの街来てから2日、彼は街の散策に出ていた。傍らには案内役として聖女リルエラが同行している。
「すまないね、聖女様に付き添いをして貰って。」
「いえ、私も少し街を見て回りたかったですし。」
須藤はこちらで用意して貰った行商人が好んで着るラビットフットの服に身を包んでいた。何処にでもいる兎型の魔物なのだが着心地はなかなかだ。
「活気があって良い所だ。」
街並みは木造建築が主流の様だ、しっかり整備された石畳の中央通りは賑わい、買い物を楽しむ客達と商人の声が飛び交う。
「取り敢えず一通りの物資の調達は終わった事だし、何処かで食事でも取ろうか。」
「そうですね、えっと、少し先に食堂があるみたいです。」
リルエラは領主館のメイドから渡された地図を眺め須藤行き先を示す。
地図には門から領主館へ続く中央通りと、街の中央噴水を挟みギルド通りへ続く道に主要な情報が載っている。
「では、そこへ向かおうか。」
ライオとの揉め事があったあの時からリルエラは須藤への対応に気を使っているようで、彼もそこを察しなるべく話題を広げる事を避けている。
2人が向かった先にある食堂は小さな老夫婦が営む場所である。昼時も少し過ぎれば人も少なくゆっくり出来る場所をメイドが選んでいたのであろう。
スープとパン、腸詰めのソーセージの軽食を静かに食を進め一息つく2人。先に口を開いたのは出された水ひと口飲んだ後の須藤だ。
「聞きたい事があるんだろ?」
付き添いを申し出てきた時から話をするタイミングを伺っていたのを須藤は察していた。ご丁寧に須藤の用のある場所を地図にして持っていたことからも容易に想像がついていた。
「目的が違うって何なんですか、魔王を倒すことが使命じゃないって言いましたよね。」
ライオとの討論の後、場を納めるためローデンはライオを部屋へ、残った2人は須藤の言葉に何か言いたげなリルエラと沈黙の時間を過ごした。
リルエラが口を開こうとした時にはローデンが戻ってき、ローデンも話し合いたい気持ちはあっただろうがその話題は避けその日は解散となったのだ。
「そう思うというだけの事だけれどもね。確実性のない事を口には出来ないが…」
「それでも聞いておきたいです、争わなくて良いならば争いたくないですから。」
「殆ど推論だが、君が聞きたいと言うなら…」
話をするのに居座るのも気が引ける須藤は、食器を回収する老婆へ追加で飲み物を注文し話し始めるのだった。
「まず神託だが、魔王を討伐するなど述べられてはいない、解釈が必要なものだろうし、もしかしたら伝え方は間違っていないのかもしれない。」
前提として解釈の違いが生じる事を明確にする須藤。
「ただ、俺達が伝えられた言葉には全ての生命とあった、それが動植物まで至るかは分からないが人類だけと当てはめるには早計過ぎる。」
伝説や英雄譚、小説等にありがちな敵というものは人心を得るには必要不可欠である、だがこの世界では脅威としては迫力にかける、滅亡の危機が迫っているとも言いがたく人々は恐怖に身を震わせ生きているわけでもないのである。
「敵とするには危機感がないんだ、魔王側と戦っているのは事実なのだろうが、人的被害が無さすぎる。俺の世界の話では大体悲惨な現状であるように描かれているからね。」
「私の村でも魔王との戦いよりは近隣諸国の戦争の話の方が耳に入って来ましたけど、魔王城が遠かったからかも。」
「その程度だからだろう、身近に感じない程度の脅威でしかない、それにローデン言わく、魔王側の兵は攻めるよりも城を守っている戦い方出そうだ。」
その背景には魔王側の理由がいくつかあるのだが、この時の2人が知る由もないなかった。
「疑問が須藤様にあるから私達の魔王討伐には賛同出来ないって事ですか?」
「そういう事だね、不可解な点が多い状態で決めつけるのはあまり好きではないんだよ。」
これは須藤が前の世界で探偵を生業としていた事が大きく起因する、不確かな結論は人の人生を一瞬で崩壊させてしまうからだ。
「じゃあ、私達と一緒にそれを確かめませんか?ローデン騎士団長様も話せばきっと協力してくれますよ。」
名案とばかりに顔を明るくさせリルエラが何時も以上に口数を増やして話しを進める。
「ライオの事は私がなんとか説得しますし、一緒に行動した方がお互いの為になると思うんです。」
「それもそうなんだけれどね…きっと俺はまだ振り回される気がするんだよ、選択権がない気がね。」
「…やっぱりライオの事で嫌な思いをさせたからですか。」
須藤の言葉にリルエラの表情がまた曇り出す。
「君達と行きたくないと言うわけではないんだ、行けなくなる気がするだけだ。」
リルエラの表情の曇りに年甲斐もなく焦りながらも弁明する須藤の慌てように彼女が笑いを堪える。
「須藤様も慌てたりするんですね、何だか数日だけですが人間味の無い人なのかと思ってました。」
「それは心外だ、こう見えても愉快な奴と昔の友人には言われていた事もある。」
ミステリーの話の時にだけと語尾が続くのだが、女性への対応に慣れていない須藤がそれを口にする事はなかった。
「予感がするんだよ、俺はまだ何かを見せられる気がね、ただ、君達とはいずれは道が重なるだろうさ、その時は平和の為にお互いに尽力し合おう。」
「はいっ!」
明るく弾む声が返って来た事に安堵し、彼女の屈託のない笑顔に心和ませる須藤であった。
「思っていた通りと言うか、俺の察した通りと言うか、これはこれで思う所があるね。」
そして須藤は馬車で目を覚ますのであった。
意見感想あれば遠慮なく貰えれば、拙すぎるのは重々承知なので、読者様のお言葉貰い勉強させて貰えれば幸いです。