神託の魂
軽く気軽に書く短い話となりますので中身も空白部分が多々出てきますがご了承ください。
軽い気持ちで楽しんで頂ければ嬉しいです。
「神託が下された。」
太陽の煌めく広大な広場に集まる人々、観衆の前で大きく腕を広げた男は高らかに声を挙げた。
清潔感を漂わせる司祭服に身を包む男は言葉を続けていく。
「我らが敬愛する神の巫女が、世界に永遠の祝福をもたらすであろう。4つの魂が揃う時、混沌は世界から姿を消すと。」
神官の背後から、黄金の帯が目立つ司祭服の男が連れ立つ2人の男女が姿を現した瞬間、広場に観衆の盛大な歓声が広がる。
長い黒髪、ぱっちり開く目、華奢で庇護欲を掻き立てる容姿、純白の気品溢れる儀式服が不釣り合いに見えてしまうのは彼女の幼い見た目からだろう。
その隣には整った顔立ちの好青年、丹精に作り込まれた鎧に身を包み、背中には神殿に保管されていた神剣を背負っている。
「彼等、勇者と聖女の2人が長きにわたり続く魔族との戦争を終わらせてくれるであろう。」
その言葉と共に勇者と呼ばれた青年が神剣を天高らかに掲げる。
その様を見守る観衆達目には期待と羨望の眼差しが宿っていた。
―――――――――――
(我が作りし生命よ、我が愛する生命よ、我の過ちを正し、我が愛する生命全てを救い導きを…。)
無感情で淡々と紡がれる声が聞こえる。夢なのか現実なのか曖昧な不思議の感覚の中4色に輝く光が声を聴いている。
「リルエラ…、リルエラ。」
「えっ?あっ、ごめんなさい、ぼぅとしてたみたい。」
式典が終わり、退場の合図を受けたにも関わらず上の空だった私に隣の青年が声を掛けてくれる。
ほんの数週間まで名前も知らなかった彼を見返し、大丈夫だと微笑みを浮かべ彼の後ろをついて壇上を後に、神殿に設けられた控え室へと足を伸ばした。
白で固められた調度品の数々が神殿の清廉さを醸し出す室内、高価な透明のガラスで作られたテーブルを挟み座る。
勇者と神託を受けた見習い騎士の青年ライオが私に語りかけ始める。
「それにしても怒涛の日々だったな。神託を受けてから集められ、急に勇者だ聖女だ言われてさ、国を挙げての式典、神殿でのお披露目だとか。」
ライオの言葉にここ最近の出来事が思い返される。
不思議な場所で光になった自分達に語りかける声を聞いた日の朝、目が覚めれば何時もの日常と違い村が妙に騒がしかった。
片田舎にある私の村、平凡に細々と自給自足の生活をしている村人達、そんな彼らが木材で作られた塀に囲まれた村の入口に集まっている。
何事かと私もその集まりへと足を伸ばし、傷だらけで倒れる村で狩人をしている父の姿がそこにあった。
「と、父さん…。」
父の横で項垂れる母、血だらけで腹部には見るも無惨な抉られた後。
駆け寄り父の手を握ると息をするのも苦しそうにし、時に口から血を溢れ出すように吐いている。
そこにいる誰もが手遅れであり、絶望の一言しか浮かばずに私達親子を悲痛な目で見つめていた。
「いや、父さん。」
涙を浮かべ、母に抱き締められ奇跡を願うしか無かった。
(父さんを助けて…。創世神様、何でもする、この世界を平和にもたらせと言うなら全力を尽くすわ、だから、だから父さんを助けて…)
涙を頬から零しぐしゃぐしゃになった表情で天を仰ぎ見て、父の手をより強く握る。
周りがざわめき出し驚愕の声をあげるが願う事でいっぱいの私は気が付かなかった。
手を握る父の体が眩く光り、傷が、腹のえぐれが治っていくのを…。