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異世界ダンジョンの開拓団  作者: ヘプトミノ
第一章 初動
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第二話 能力値

 フレイアは自身の研究室だという場所にハイド達を案内した。ここで、今後の調査に役立つ代物を見せてくれるという。


 フレイアの研究室は特別仕様で、彼女の為だけに造られたと分かる空間だった。


「さてと、二人は『自分の能力を数値化したり、言語化したりしてみたい』と思ったことは無いかな?」

「「無い」」


二人の返事が被る。


「……僕も無いさ。でも、国王陛下からのご勅令で、こういうシステムを作ってくれって頼まれたんだ。天才の僕には呼吸するよりも楽な作業だったけどね」


 そう言うとフレイアは壁に立てかけてあった杖を手に取った。そのまま杖を掲げると、杖が光り、頭上に表示板のようなものが浮かび上がった。

 ハイドとエーテルは未知の技術を目の当たりにし、恐怖と期待が入り混じった表情が浮かんだ。これが驚くということだ、とフレイアはしたり顔で解説を始める。


「変わっているだろう? これが僕の開発したステータスボードさ。人の能力や素質を可視化したデータが表示されるようになってる」


 今、目の前の表示板に表示されている情報はフレイアのものだった。


「これは僕のステータスだよ」


 この表示板には腕力や知能、速さなどの指数が六項目並んでいた。


「体力、腕力、知能、筋肉量、精神力、速さ。僕の場合、お恥ずかしながら腕力と体力は低めなんだけど、知能が飛びぬけて高いね」

「へぇ、凄いね! それ、わたしにも使ってよ」

「分かっていますよ、姫。ですがその前に、他にも解説したいことが――」


 エーテルは目を輝かせてフレイアに顔を近付けた。一方のハイドは顎を手でさすり、フレイアの掲示板をまじまじと見つめる。


「何か気になることでもあるのかい?」

「いや、これってよ、上限値とかあるのか?」


 ハイドの質問に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるフレイア。しかしすぐに気を取り直し、質問に答えた。


「良い質問だね。結論から言うと、上限はあるさ。一応、九九九九まで並ぶように作ってある。それ以上のステータスがあるのなら∞表示になるんだ。しっかり鍛えた人間の平均値だと体力は二〇〇〇前後、他は一〇〇〇前後に収まってるよ。低い値も、努力次第で上がって行くことも確認済みさ」

「しっかり検証してあるんだな」

「当然。いくら僕が天才でも、一人で何でも出来る訳じゃないよ。さて、次はこっちを見て貰おうか」


 表示板の下方には、属性適正と書かれた項目が並んでいた。フレイアの場合、『炎』と表示されている。


「この部分は、どの属性の魔法が一番上手く使いこなせるかの項目だよ。僕の素質は炎オンリーだけだけど、人によっては二つ、三つ適性がある場合もあるのさ。ただ、注意して欲しいのは、あくまで『適性がある』ってだけで、使えるかどうかは別の話ってこと。では姫、お待ちかねの――」


 フレイアはエーテルに杖を渡した。待ってましたと言わんばかりにエーテルは嬉々として杖を掲げると、フレイアの時と同様に頭上に表示板が現れた。


「ふむふむ。姫の場合は僕と似て知能が高めですね。そこと精神力は僕の方が高いみたいですが、他の値は軒並み負けている。姫は魔法寄りのバランスタイプだと言えますよ」


 続いては属性適正。『光』『炎』と表示されている。


「姫は光魔法や回復魔法がお得意なんでしたよね。きっと調査で役立ちますよ。先に『光』とあるので、そちらが一番適性アリです」


 今度はエーテルからハイドに杖が渡る。ハイドも今までの二人を真似て杖を掲げると、これまで通りに表示板が浮かんだ。


「じゃあ早速確認を――って何だコレは⁈ 君のような庶民がこんなに高いステータスを持っているなんて!」


 辛い時代を生き抜いてきたのだから、庶民であっても精神力が高いことまではフレイアも予測していた。だが、他の値は普段から鍛錬を行っているとは思えない庶民にしてはあまりにも高すぎる数字が並んでいた。


「おかしいよ。流石に知能で僕や姫に勝っている訳じゃ無いけど、それでも高い。どうなってるんだ⁈」


 フレイアが目を皿にしてハイドの表示板を吸い付くように眺めている。その形相に最初こそ引き気味だったハイド。


「そうは言ってもな……」


 そう呟いて目線を落とした先、そこには自分の中指で輝く緑色の指輪があった。


「あっ、もしかすると」


 ハイドは急に閃いたかのように中指の指輪を取り外した。すると、表示板上の『速さ』の値が一気に暴落した。


「ど、どういうこと⁈」

「あーちょっと待ちな」


 ハイドは次々と、身に着けている装飾品を取り外していった。指輪、ネックレス、ピアス……体重が変化しそうな程の装身具を全て外し終える頃には、ハイドのステータスは全て最低レベルに落ちていた。


「君のアクセサリーで能力が強化されてた訳か……。図らずも勉強になったよ。そうした装身具を身に着けた時のステータス上昇量も明記出来るように改良しとこう」


 次は魔法適性の確認を行う。ハイドの魔法適性は『?』『水』だった。


「『?』って何だ?」


「あっ、またこのエラーか……。時々こうなるんだ。理由は分からないけど、今発見されてる

『炎』『水』『風』『地』『光』以外にも属性がある可能性が示唆されてるんだ」


「へぇ。俺には魔法の心得なんて無いから、軽い気持ち程度に捉えておくか」

「うん。そうしておくれよ。僕はここに留まっているから、二人は行って来てください。この杖は持って行って、魔物が出ればそいつに向かって使うと良いですよ。他にも、素材の鑑定とかも出来るから、自由に使ってください」


 フレイアはハイドに杖を押し付けると、忙しなく何かの研究に当たった。


「ハイド、行こっか。フレイアちゃん、きっと妹のお世話の間を縫って研究してるから、そっちに集中させてあげよ」

「そうか。やっぱりあの自信満々な態度に反して中身は苦労人みたいだな」


 研究室から出る。外に待機していた兵隊と共に、次に目指すのは『迷いの森』と呼ばれるダンジョンだ。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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