トウヤ
俺の名は河合トウヤ、そして、妹の名は、さやか、二人はごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の仲良い兄妹でした。でも、ただ一つ違っていたのは、俺は探偵助手だったのです。
いきなりの妹話題だったが、俺、シスコンじゃないからな。多分だが……。
という話はさておき、俺は大学時代に知り合った親友の戦国ケ原ゆずきと二人で探偵業を営んでいる。
もっとも彼、ずいぶんと留年を重ねていたので、先輩ということになるのだが、ミステリー研究部と称して、学校内の事件をいくつか解決したこともある。
月並み過ぎるたとえ話をどうか許してほしい、ゆずきという男、シャーロック・ホームズなのだと思う。鋭い演繹力だけではなく、「緋色の研究」で「彼のことを知れば、ずっと一緒にいたいとは思わないはず」などと酷評されている変わり者、という点もどこか似ている。
とはいえ、俺とゆずきは妙に気が合い、一緒にいて不愉快になったことなど一度もない。彼のコナンドイルが言っているように、凡庸であったとしても俺は「天才を認めるだけの才気」を持ち合わせいるのかもしれない。
だが、ゆずきは、頭の回転が早過ぎるためだろう、思慮に欠ける発言により他人を激怒させること、しばし。
そんな彼だからこそ、どこか俺の保護欲を掻き立てる。大学卒業当初、アルバイトのつもりで始めた探偵助手だが、今では高校教諭の職を辞して、これに専従することになった。
ま、もっとも、探偵業だけで生計を立てるのは難しく、前職のノウハウを活かしてオンライン家庭教師で小遣い稼ぎもしているわけだが……。
とりあえず、もう一度、断っておく。決してBLなどではないからな。
で、これだけ話せば賢明な皆さんなら分かるだろう? そう、俺の役回りはワトソン、この物語の語り部だ。
さらに、ホームズ、ワトソンとくれば、レストレード警部の存在を忘れてもらっては困る。皇理都さん、さん付けで呼んでいるのは、彼は大学の先輩で、かつ、探偵事務所の大家、探偵業を始めてからもいろいろお世話になっている人物だ。
そんな彼が「どうしても語りたい」と言っている。家賃を滞納しても大目に見てくれる人だし、無碍にもできないだろう。最初の一話だけ語り部を譲ることにした。内容は聞いていないが……。
え? 待てって? メアリーがいない? うーん。さやかがメアリーじゃないか、だって! いや、それはない、さやかは俺の妹なのだから。
では、皇さん、よろしくお願いします。