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東雷雨降らず、傘要らず

白夜狐と狐目の童。犀花の前に現れ、大蜘蛛の妖を、追い払うが、犀花に対しても、行っている事を止めるように伝えるのだった。

今まで、母親だった物は、小さな炭となって消えていった。

「どうして?」

白夜狐は、肩をすくめた。

「ずっと、自分の母親だったと?」

「そう、思っていた」

犀花の頬を温かいものが流れていった。自分を叩いてばかりいた母親。それが、いつの間にか、消えていた。

「そう落ち込む事はない。最近、入れ替わっただけかと」

「白夜狐様!」

目の細い童が、声を上げた。

「あまり、関わらない方がいいかと。我らと、相いれない物同士の様ですし」

「ふむ」

白夜狐と呼ばれた少年は、ふと、それを仰いで、首を傾げた。

「我らとは、全く違うかもしれん」

少年は、鼻の頭を掻いた。

「けど、、、何か、ひっかかるんだよね」

少年は、じっと、犀花の目を見つめた。

「白夜狐様。『黒い波』がやってきます」

空の彼方を仰ぎ、耳打ちする。

「このまま、戻るんだな。母親は、次期に戻ってくる。何も聞かず、家に戻れ。しばらくは、あの街中には、行かないように」

踵を返し、去ろうとするが、ふと、何かを思い出したかのように、戻ってきた。

「あ、、、もう、印をつけるのは、やめた方がいい」

少年の掌から、幾つかのルーン文字の入った石が、飛び出し、犀花の目の前で散っていった。

「今日は、見逃してあげるけど。気をつけた方がいいよ」

狐目の童が、少年の影に隠れるように、告げる。

「何の事!」

犀花が、目鯨を立てた。

「お互い、境界線は、守らないとね」

少年は、優しく微笑むと、センスで、犀花の視線を覆った。その拍子に、優しい花の香りが広がり、犀花は、また、自分のベッドの中へと落ちていった。目覚めた、次の日は、いつもと、変わらず、酔った母親が帰宅し、訳の判らない事を呟きながら、ベッドに入っており、前日の出来事は、嘘のように消えていた。

「何が、あったんだろう」

ぼんやりと、歯磨きしながら、考えてみた。

「マスター」

地から響く声が、まだ、耳に残っている。少年の掌から、粉々に砕け散っていったルーン文字の入った石は、あの夜、犀花が、人々に配ったお守りだった。ちょっとした相談事に乗り、お守り代わりに配っていた。それを綺麗に集めて、粉々にしていた。

「時間だよ。早く行きな」

多分、母親だと思う女が、酒で焼けた声を上げていた。

「行ってくる」

犀花は、目で母親の姿を確認する事なく、外に出た。今日も、憂鬱な一日が始まる。昨夜と違う地味な姿で、犀花が、学校に向かうと、また、1番、嫌味な女が、待ち構えていた。

「相変わらず、冴えないわね」

遠い日は、中の良かった幼馴染も、今となっては、意地の悪い優等生となっていた。

「おはよう。」

挨拶をして、すり抜けようとすると、しつこく絡んできた。

「どうしても、お願いがあるの」

「一歌。そんなの相手にしないで、行くわよ」

一歌と呼ばれ、少しだけ、振り向くと犀花の耳元で、囁いた。

「誰もみていないと思うなよ」

最後にキュッと笑い、

「いつもの通り、やっておいてくれる?」

犀花に、当番を押し付け、午後遅い教室に、1人残らせると、さっさと帰宅するのだった。



母親は、どうやら、何人もいる様だった。最花に不自然な事が次から次へと起こり、それは、額にある印のせいだと狐目の童は告げるのだった。

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