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我が上の星は、見えぬ

犀花は、訪れるのは、繁華街のはずれにある一角。ほんの小遣い稼ぎで、恋占いを始めたのが最初だった。年齢より大人びて見える犀花は、なぜか、ルーン占いが得意で、お店の子達にもてはやされていた。いつしか、気になる人には、ルーン文字を、お守りとして渡していく様になり。。。

アパートの一室から飛び出してきた影は、慣れた足取りで、繁華街へと消えていった。華やかな店が立ち並ぶ、通りをすぎ、寂れた小さな店が立ち並ぶ影に、その姿はあった。行き止まりの路地裏で、犀花は、慣れた様子で、小さなテーブルの脇の椅子に腰掛けた。

「もう、来ないかと思った」

隣の店の主人が、フードを目深に被った犀花に声をかけた。

「まだ、終わらないから」

顔を上げる犀花の両目は、昼間と異なり、左右の色が異なるオッドアイだった。雰囲気は、ガラリと変わり、プラチナブロンドの長い髪を垂らしている。元々、犀花の父親は、日本人ではなかったと、聞いている。祖父が、欧州から渡ってきたらしく、祖母も、しばらくは、向こうに居り、父は、その時に生まれた。犀花は、父親に似ており、それが、母親の憎しみを買っていたが、普段は、短く切り揃えた髪を黒く、染めていた。しかし、現在は、昼間とは、全く、異った長いプラチナブロンドの髪は、黒いジャージの上下を来た犀花をはるかに大人に見せていた。

「気をつけるんだよ。今晩は、なんか、嫌な予感がするから」

そう言いながら、自分の店に戻っていった。なんとなく、今晩は、嫌な予感がしている。いつもの新月と違い木々が、ザワザワしている。

「外に、出るなか。。。」

柊雨に言われた昼間の言葉を犀花は、思い出していた。昼間、起きた事を覚えている事は、できるが、新月の夜に起きた事は、覚えていれない。昔から、何度も、そんな事があり、母親は、それが、分かる度に半狂乱になっていた。犀花は、持っていた皮の袋から、玉のような石を取り出し、置かれたテーブルに並べ始めた。

「ルーン文字ですか?珍しい」

冷やかしで、覗き込んだ、近くのお店の子が、声を上げた。

「見てほしいんですけど」

「ごめんなさい。予約制なの」

犀花は、冷たく口を開いた。

「またね」

顔を上げようとした時、ヒュッと音がして近くの木がザワザワと音を立てて、揺れていった。次から、次へと、木が揺れ、何か、小さな動物が、木を渡っていく様だった。

「言った筈だ」

低い声が聞こえ、テーブルにルーンを並べていた手の甲に、つむじ風が、当たっていた。

「誰?」

姿は、見えない。その間に、道の反対側にある店の間にある木々が、ザワザワと音を立てて、何者か達が、通り過ぎるたびに、音を立てていた。

「こいつ、何か、封印されてますよ。白夜狐様」

手の甲に巻き上がった小さな旋風は、体のあちこちをウロウロと、動き回った。

「消えろ!」

犀かが、宙に、文字を描くと、渦巻いていた風は、勢いが弱まり、解けてしまうと、小さなテンが、姿を現した。

「なんだよ。海を渡って、荒らしに来たやつか?」

テンは、尻尾を膨らませて怒り出すと、テーブルの下に駆け降りていった。

「白夜狐様。やっぱり、あいつらの仲間です。しっかり、封印されてますけど、時間の問題です」

近くの木々が、ザワザワと揺れ、何かが、駆け抜けて行くのがわかった。

「だから。。。今日は、出歩くなと言っただろう?どうせ、明日になると、忘れてしまうけどな」

目の前に現れたのは、犀花と同じプラチナブロンドの長い髪を持ち、色白の細い線をもつ少年だった。

「悪いけど、僕達も役目があるんでね」

長い爪を持つ少年の手が、顔面に近づくと、犀花は、ふっと気が遠のいてしまった。


新月の夜を渡っていくのは、日本古代からの守り神、狼神。または、狐神とも呼ばれ、白夜狐の一段だった。

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