表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/75

狐の嫁入り、泣く娘。

突然、話しかけてきた柊雨は、夜中に出かけないように伝えてきた。否定しつつも、夜中に、起き上がる姿があり、それは、犀花であった。

声をかけてきたのは、犀花と同じ位陰気な男。何度か、無視していたが、今日は、譲らない様子だった。あまり、他の注目を浴びたくないし、これがキッカケで、また、新たな虐めになるのも、嫌で、犀花は、無視をして席を立つ事にした。

「無視するの?」

柊雨は、慌てて教室から出ていく、犀花の後を追いかけていった。

「来ないで」

屋上へと続く階段を駆け上がり、扉を開く。立ち入り禁止のロープを飛び越え、吹き抜けになっているドームがいくつかある屋上の隠れ家へと足を早めた。

「もう、誰かが見ていたら、また、厄介な事になるの」

犀花は、ついて来ないでと言わんばかりに、ヒステリックな声を上げた。こんな所は、母親に似ていて自分でも嫌いだ。

「あんたなんて、産むんじゃなかった」

母親は、犀花の事を、あんたと言う。

「恐ろしい。パパにそっくり」

母親の言葉が、呪いの言葉のように、のしかかる。パパに似てる?幼い頃の記憶は、あまりなく、自分が、覚えているのは、優しかった父親の姿。恐ろしいという母親を憎く感じてしまう。

「大嫌い」

母親は、飲んだくれ、空き瓶を犀花に投げつけた。

「誰でもいいから、自分を愛してほしい」

切望していた。が、実際、自分は、人と交流するのは、苦手だった。この柊雨も、例外でなく、どう話したら、いいかわからない。慌てて、ヘッドホンで、会話を避けようとした。

「今日の夜は、どこにも、出かけない方がいい」

柊雨は、帰宅してからは、自宅にいるように言った。空は、澄み渡って、晴れているのに、急に雨が降り出してきた。

「狐の嫁入り。。知ってる?」

祖母に育てられた犀花は、知っていると言った顔をした。

「都会にも、狐っているんだよ」

柊雨は、それを伝えると、今来た通路を引き返していった。晴れているのに、雨が、容赦なく降り始めていた。犀花は、その後、いつもの様に、何もなかったように、教室の隅に戻っていった。雨に濡れていたが、担任も、何も、声をかけようとしなかった。

「みても、見ぬふり」

ポツンと呟いてみた。誰しもが、面倒な事に、巻き込まれないように、生活している。自分も、同じ立場だったら、そうするに違いない。その後は、何も起きる事なく、1日が終わり、犀花は、誰も待つ事のない自宅に、帰っていった。いつもの通り、夕食はなく、千円だけが置いてあった。お金が、置いてあるだけまし。幼い頃は、よく置き去りにされたっけ。1人で、適当に、食事を作り、用意してあった千円は、財布にしまった。後で、使う時があるかもしれない。さっさと、宿題をこなし、早めに床に着く事にした。

「夜中に外に出るわけないじゃない」

犀花は、そう呟いて、眠りについた。どうか、明日は、平和であるますように。そう、願い眠りについたが、夜中過ぎにドアを開ける姿が、あった。犀花、本人であった。

長く髪を垂らした犀花は、全く昼間とは、違う姿だった。都会の路地裏で、ルーンを操り、行き交う人々の運を占う姿は、この世のものとは、思えなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ