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ルミナスの花   作者: 夢乃間
第1部 星見の巫女
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覚悟と理由

あらすじ


巫女の娘であるミユと共に夜の森の中を進むシェリル。しかしその道中で青い炎のような浮遊体が現れ、更にカマキリの姿が混じった人型の化け物【変異体】が襲いかかった。

難なく変異体を返り討ちにしたシェリルだったが、人が住む村の近くに変異体が生息している事に疑問が浮かんだ。

「・・・んん・・・ん?」


焚火の明かりで目を覚ましたミユ。焚火の向こう側にはタバコを口に咥えたまま、武器の整備をしているシェリルがいた。ミユが起きたのに気が付いたシェリルは、手に持っていた球状の機械を投げ渡した。


「これは・・・?」

「もし、一人になった時に奴らに襲われたらそいつを使え。真ん中のボタンを押して変異体に投げるか、地面に転がせばそいつが発光する。かなりの強い光が発生するから、目くらましには使える。その隙に逃げろ。」

「そんな状況にならない事を願うわ・・・。」

「まぁ、何も無いよりあった方が心強いだろ・・・なぁ、星見の巫女ってのは一体どういう役割なんだ?」

「・・・私達は、星を読み解いて運命を知るの。これから起きる災害や病を知り、村の皆に教えてそれについて話し合うの。」

「へぇー、便利だな。」」

「けど、星を読む時には物凄い集中力と精神力を使うから・・・その・・・。」


言い淀むミユを見て、なんとなく察しがついたシェリルは剣を引き抜き、刀身をミユに見せた。シェリルの剣の刀身は遠目から見れば美しく綺麗な銀の剣だが、近くで見れば刀身には無数の傷や刃こぼれ、持ち手の部分も汚れや血が染み込んでいる。


「この剣は私が18の頃に、私の師匠からの贈り物だ。これを使って私は5年もの間、変異体を斬り殺してきた。長く愛用していたから、剣に付いた変異体の血や私の血が拭いきれずそのまま剣に染みついてしまった。刀身もボロボロ、もういつ壊れてもおかしくない。」

「新しいのには変えないの?」

「変えられないさ。こいつは、私にとって特別な物なんだ。もしこの剣が折れる時があるのなら、それは私が死ぬ時だ。」


シェリルは立ち上がるとミユの隣に近づき、自身の剣をミユに持たせた。最初はシェリルの支えがあったお陰で持てていたが、シェリルが手を離すと剣の重みにミユは持ち続けられず、剣を地面に落としてしまう。


「こんなのを持って戦うの?」

「最初は私もミユと同じだったさ。トレーニングを積んで力をつけてもう一度握ったが振れなかった。じゃあどうやって扱えるようになったのか。それは覚悟を決めたからだ。」

「覚悟・・・。」

「力を手にするのは簡単だ。だが、それを扱うには覚悟と理由が必要だ。何の為に力を使うか、何の為に力を得たのか。お前はどうだ?母親と同じ力を使えるようになったとして、何の為にその力を使う。誰の為に使うんだ?」

「何の為に・・・誰の為に・・・。」


ミユはもう一度剣を握り直し、腕がプルプルと震えながら焚火に向けて剣を構えた。汗を流しながら剣を構える事に集中しすぎているミユの肩にシェリルは手を置いて優しく揉む。シェリルのお陰でリラックスしてきたミユ。腕の震えは治まり、持つ事に集中する事から、剣を振るう事に集中していた。


「・・・私は。」


剣を振り上げ、自身の想いを示すように勢いよく燃え上がる焚火の炎を斬り裂いた。斬り裂いた炎が瞬く間に元の状態に戻る頃には、ミユの覚悟は出来ていた。


「覚悟は決まったようだな。」

「うん・・・シェリル、ありがとう。」


ミユはシェリルを見上げながらニッコリと微笑むと、それに返すようにシェリルはぎこちない笑顔を見せた。するとその時、また茂みの中から物音が聴こえ、シェリルはミユから剣を取り、ミユを自身の後ろに隠しながら茂みの方へと剣を構える。

茂みから現れたのは二つの青い光であった。光を見るや否やシェリルは剣を納め、後ろで震えているミユを前に出そうとする。


「どうして剣を構えないの!?」

「落ち着いて。」

「落ち着けないよ!だってすぐそこに―――」

「怖いというだけで目を逸らすな。目で見て、相手を知るんだ。」


怖がって前に出ようとしないミユを優しく諭すシェリル。ミユはシェリルのコートを片手で握りながらゆっくりと前に出て、閉じていた目を開いて青い光をじっと見つめた。最初は怖かった光だったが、見ている内に恐怖は和らいでいき、それと共に青い光の本来の姿がミユの目に見えてきた。

青い光の正体は二人と同じ人間で、体を失って今は魂だけの存在となった霊体。霊体の姿がハッキリと見れるようになる頃にはミユの心には恐怖は無くなり、自分からシェリルの元を離れて霊体に近づいていく。


「・・・こんにちわ。」

「こんにちわ、ミユ。」

「え、どうして私の名前を・・・?」

「どうしてって、当たり前でしょ。あなたは私のたった一人の大事な娘なんだから。」


霊体の言葉に戸惑いを隠しきれず困惑するミユ。そんなミユの頬に霊体は手をソッと近付け、撫でるように手を動かした。霊体の為、直接触れる事は出来ないが、ミユの頬には確かに温かい温もりが感じられていた。その温もりで目の前にいる霊体が自分の母親だと知ったミユは一筋の涙を流し、頬に当てられている母親の手に触れる。


「そんな・・・じゃあ、本当に・・・。」

「ごめんなさい、沢山怖がらせて。」

「・・・ぐす・・・違う、謝るのは、私の方・・・なんで、気付かなかったんだろう・・・なんで気付けなかったんだろう・・・お母さん・・・!」

「ミユ・・・シェリル、あなたに感謝します。娘を守り、そして私の存在に気付かせてくれて。」

「気にするな。それに、これで聞きたい事が聞けるしな。」

「ええ、分かっています。この森に何故変異体がいるのか。そして、村にいるミユの母親を名乗る者の正体についてですね。ええ、全てお話します。二人共、私についてきてください。」

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