ボクは、作家になった。〜伝説の教室〜
なろうラジオ大賞2、応募作品です。
普段、長文連載をしているので、1000文字以内にまとめるのに苦労しました(笑)。
ボクは、作家になった。
世界がウイルスに怯えていた頃、ボクはいじめに怯えていた。
だから、学校が休校になった時、ボクは嬉しかった。
大好きな小説を、家で思い切り書く事が出来たからだ。
やがて学校が再開した。
ボクは残念だったけど、とりあえずは学校に行った。
学校は、何もかもが変わっていた。
授業は職員室から教室へのリモート。
みんなとは距離を取って座らされ、マスクをして友達とのお喋りも許されず、タブレットから流れる先生の声を聞くだけ。
嫌いないじめっ子でさえ、「こんな学校になんて来る意味がない」と怒り、ボクも初めてコイツと意見が合った。
何故だろう、全員揃っているはずなのに、より深くなる孤独。
学校で感染者を出しちゃいけないのは分かるけど、先生達は何も答えてくれない。
そんな先生達を、無理矢理学校再開へと追い込んだ、もっと偉い大人達。
3日後、ボクらは遂に、学校再開の意味を知りたくて、職員室に集まった。
普段は優しくて、ボクの小説も褒めてくれた先生が、ボクらが集団になっているだけで、今までで一番怒っている。
ボクは我慢が出来なくなり、クラスの誰よりも先に、学校の再開の意味を問いかけた。
マスクはちゃんとしていたし、大声でもなかったけど、先生はボクを怒鳴り付けて注意した。
密になるなと言っただろ!
声を出すなと言っただろ!
お前は小説を書いているんだろ?
喋らなくても伝えられなきゃ駄目だろ?
ボクは怒った。
大声で泣いて怒った。
いじめられた時にも見せなかった涙は、小説にも表現出来ない、やりきれない哀しみだった。
クラスメートも、いじめっ子も、ボクの味方になって声を上げた。
目の前の先生が悪い訳じゃないと、みんなが理解していた。
ただ、学校を再開する意味を知りたかっただけ。
でも、先生達には、ボクらクラスの全員が悪いと写っていた。
ボクのクラスは、謹慎になった。
あれから2年。
ウイルスも落ち着いて、クラスのみんなもどうにか卒業した。
そしてボクは、作家になった。
言いたい事を言わなくちゃ。
口をふさがれても、言葉は死なない。
いじめっ子も、ボクの本を買ってくれた。
ボクを作家にしてくれた、先生にも今は感謝している。
感謝の言葉は口では絶対、これからも絶対言わないけど。