表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

一 : 当主の苦悩(7) - 仕込み

 一直線に館の外まで突き進むと、用意された愛馬へ流れるように跨った。

「猿!!」

 馬上から大声で信長が呼び掛けると、直ちに黒い影が側に寄ってきた。藤吉郎だ。

 意外にも、藤吉郎は胴丸に鉢金と戦装束の姿をしていた。乾坤一擲の勝負に打って出ることは誰にも漏らしていないし、覚悟を決めたのもつい今し方の出来事だ。

「お呼びでしょうか?」

 その声は普段と比べて、幾分浮ついているように聞こえた。暫しまどろんでいたか、突然の呼び出しに動転したか。

「俺が動くと分かっていたのか?」

「そりゃそうですよ。殿は座して死を待つくらいなら、最期の一時まで足掻かれる性分のお人ですので」

 出撃前で張り詰めた空気が辺りを包む中、いつもと同じように軽い調子で答える藤吉郎。その調子を楽しむように、信長は口元を綻ばせながらフンと鼻を鳴らした。

「これから駆けて熱田神宮で待つ。猿には急ぎ頼みたいことがある」

 信長が伝えた内容に、藤吉郎は困惑の表情を浮かべた。その反応を見た信長はニヤリと含みのある笑みを浮かべるのみで、それ以上語ろうとしなかった。

「分かったな。屹度申し付けたぞ」

 念押しするように言い渡すと、信長は愛馬を促して走り去っていった。一方、その場に残された藤吉郎は呆然と立ち尽くして遠ざかる信長の背中を見送るしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ