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拡散していくエネルギーと質量に、思いを馳せるの

作者: アワユキ

拡散していくエネルギーと質量に、思いを馳せるの。

拡散、希釈、散逸。

エントロピーの増大、増大、増大。

この言葉考えた人って馬鹿だよね。なんで増大するんだろうね。だってすべては零れ落ちるのに。

だったら減少するべきだよね。

減少、現象、原初。

宇宙、銀河、恒星系。

十一次元、電脳空間、三千大千世界。

ホップ、ステップ、スイングバイ。


だってすべては零れ落ちていくんだよ。

エネルギーと質量、そして生命。

拡散していくの。

薄まり、揺らぎ、無価値。


あなたが眠るあの空も。

きみが笑ったあの軒先も。

くすんでけぶる銀河のように。

泣いて叫ぶ矮星のごとく。


ああっ! また!

掬い取ったのに。

確かに、わたしが、この指で。

掌で。

腕で。

体で。

星で。

系で。

オリオンの腕で。

星雲で。

虚空で。


おかしくなりそうだよね。

だってすべては零れ落ちるんだから。

わかるよね。

わからないの。

そうなんだ。

そうだよ。

そうだね。


馬鹿だから。

わたしも、あなたも、きみも。

それでも、それくらいはできるはず。

拡散していくエネルギーと質量に、思いを馳せるの。


空を裂いた光も。

わたしを泣かせた石ころも。

生まれ変わった黒い原子も。


すべてが消えゆくなんて。

すべてが流れ去るなんて。

すべてが零れ落ちるなんて。


どこに行くんだろう。

拡散するなら。

どこかへ。

零れ落ちるなら。

どこかへ。


行きつく先があるんじゃないかな。

流れつく島があるんじゃないかな。


死んだ星が積もる場所が。

消えた命がまどろむ場所が。


そうか。

そうなんだ。

そうだよ。


すべてが零れ落ちるんだ。


疲れた宇宙の休む墓場も。

咲いた次元が横たわる花台も。


そうだね。

そうだった。

しょうがないね。

馬鹿だから。

わたしも、あなたも、きみも。


何もかも零れ落ちるんだよ。


安息も拡散するんだ。

夢も希釈するんだ。

魂も散逸するんだ。


だからやっぱり。

きっとそれしか。

ただただ、心だけが。


拡散していくエネルギーと質量に、思いを馳せるの。

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