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異世界転職: 『流者はつらいよ』  作者: 息忌忠心
【王都編】Ⅱ つぼみの流者 と ジミュコーネ
17/51

修行開始はつらいよ

 翌朝、目覚めるとジミュコ先生はスーツを着て、出勤直前の様相だった。

「ではタイガさん、今日からLV上げの特訓をしましょう」


「え。ジョブの入れたい放題なんじゃないんですか?」

「どこにそんなお金があるんですか?」

「17万Gぐらいなら持ってますが……」

「まともなジョブをお金で買うなら50万Gは必要です」

 ……はい。頑張って修行します。


 ジミュコ先生は、王都の地図を出し、その街路にジグザグした線を書いた。

「この地図の通り走ってきてください。ゴールはハンターセンターです」

 ひぃいいマジですか。

「ではでは行ってみましょう!」

「ぇぃぇぃぉ-」



 背を押されて地図を片手に彼女の部屋を出た。が、今どこにいるのかすら分からず、地図をぐるりと回す。

 中央広場がここでこれが新王通りで……ああ、これか。

 冒険の職歴書の振動がブルルッと、鞄から響いてくる。


 開いてみると『地図士LV1』を獲得していた。

 なんだか俄然やる気がでてきた!俺は地図を見ながら迷いながらも、がむしゃらに走り出した。



 ひぃ、ひぃ、はぁ……

 クタクタになりながらも王都一周を終え、ハンター・センターに無事到着する。

 ジミュコーネ先生は薬臭い緑色のドリンクボトルを片手に、満面の笑みを浮かべている。

「お疲れ様でした。鞄の中で冒険の職歴書がブルブル震えていたでしょう?」

「それはもうブルンブルンでした」

「さっそく見てみましょうか」


 俺は青臭い飲み物で喉を潤しながら、職歴書を開いて見せた。


〇就業ジョブ一覧 (CAP999)

 花葉装飾師 LV24(マスター)

 軽業師 LV24(マスター)

 脱捨士 LV22

 蹴球士 LV21 (↑1)

 狩猟士 LV6 (↑1)

 皿洗士 LV5

 浮流士(フローター) LV4

 警備士 LV4 (↑1)

 薬毒士 LV3 (↑1)

 配達士 LV2 (↑1)

 保育士 LV1

 洗濯士 LV1

 物語士 LV1

 地図士 LV1(new)


予備職(リザーブ)

 なし


「結構な距離だったとはいえ、走ってきただけでこんなに上がるんですか?」

「キャパが999もあるタイガさんは特別です。『親戚ジョブ』を同時に兼業すればするほど、その系統のスキルが早く成長するのです」

 おぉおおお!


「ただ、早く成長できるに越したことはないんですが。最終的に器用貧乏に終わりませんか?」

「早いだけじゃないですよ。親戚ジョブは能力的にもシナジーが乗りますから」


 ジミュコ先生は、冒険の職歴書を捲って、少し先のページを俺に見せた。


〇親戚ジョブ、成長加速(ブースト)相乗効果(シナジー)一覧

+短距離俊敏★★

 ・蹴球士、狩猟士、警備士、保育士

+長距離持続★

 ・蹴球士、浮流士(フローター)、配達士、地図士、狩猟士


「この星の数が相乗効果(シナジー)の度合いなんですよね?」

「そうですね。なおかつジョブLVの成長も早いのです」


+体術★★

 ・軽業師、脱捨士、蹴球士、警備士、保育士、

+手技★★

 ・花葉装飾師、狩猟士、皿洗士、配達士、保育士、洗濯士、物語士

+話術★

 ・保育士、物語士


「あれ? 手技に軽業師が入ってないですね」

「手技は曲芸士のジャンルです。軽業士はおもに跳んだり跳ねたりするほう」


+特効&耐性(水)★★★

 ・花葉装飾師、脱捨士、蹴球士、狩猟士、浮流士、配達士、皿洗士、洗濯士、地図士

+薬効&耐性(薬毒)★★★

 ・花葉装飾師、狩猟士、薬毒士、洗濯士

+空間★★★

 ・軽業師、脱捨士、蹴球士、狩猟士、配達士、地図士

+魅了眼★★★★

 ・脱捨士、配達士、物語士

+鑑定眼★★

 ・花葉装飾師、狩猟士、薬毒士、洗濯士

+隠密★★

 ・狩猟士、蹴球士、浮流士、配達士

+眼力耐性★★★

 ・軽業師、脱捨士、浮流士、配達士


「隠密と眼力耐性の違いがよく分からないのですが」

「隠密は見られにくくて隠れやすい、眼力をかわしやすい。眼力耐性は見られても影響を受けにくい、の違いです」


+武具(棒) ☆☆

 ・軽業師、脱捨士、警備士

+武具(旗) ☆☆☆

 ・軽業師、脱捨士、蹴球士、狩猟士、警備士

+武具(槍) ☆☆

 ・軽業師、脱捨士、狩猟士、警備士

+武具((ハサミ))☆

 ・花葉装飾士、保育士

+武具(球) ☆

 ・軽業師、蹴球士

+武具(足) ☆☆

 ・軽業師、蹴球士、警備士


「いろいろ聞きたいのですが、配達士ってそんなに強いですか?」

「配達士はあちこちに名前があがっていますが、幅広いステータスをちょっとずつ底上げしているイメージですね。プロ仕様じゃないので貢献度が表示されていませんが」

 確かにジョブ名の横並びだけだと、何がどのくらい上げているのか掴みにくい。


「ただ、これでも姫のガルベラ親衛騎士を超えられる気が……しないんですけど」

「そこは問題ですね。このまま行けば全体的には強くなっていきますが、決定的な攻撃力になりそうなのが『棒』か『槍』ぐらいですから」

「武具(足)では強くなれませんか?」


「『蹴り』で戦うには限度があります。この☆もあくまで相乗効果(シナジー)の底上げ量であって、武具そのものの力ではないのです。棒は旗や槍などにも乗るのである意味最強なのですが、いずれは『武具専門職』も欲しいですね」


 剣・ナイフ・鎌・斧・棒・竿・槍・ハサミ・スコップ・ハンマー・鞭・弓・拳・手・足・フォーク・球・カード・皿・輪・針・旗・雑具・鎧・ローブ・肩当・盾……


 長所から選ぶか好きこそモノの上手なれでいくか、自由すぎて迷うが。

 悪夢の卵戦でのあの強さを考えれば、やはりウルフニードルを真っ二つにした『剣』が欲しい。


「ということで休憩はおしまいです。午後からは『配達』で修行を兼ねたバイトをしてもらいます」

 うへぇ、またですか。



 『蹴球士』『狩猟士』『警備士』『配達士』などの走力系パッシブは充実してきているが、それでも1000通などとは、日暮れ前に配り終えられるのだろうか。


 不安を覚えながらも走り出すと、ダッシュの速度が体感できるほど上がっていた。走るほどに、鞄の中で冒険の職歴書がブルンと震える。

 疲れた時は活力発奮剤を一服。乱用は良くないと言われたが、なにせリリベル姫から貰った花葉装飾士のスキルだ。元気が出ないわけがない。


 一日も早くゴールを目指すため、俺はさらに自分へ負荷をかけることにした。

 何をするかって?ドリブルしながら配達するんだよ!

 花葉装飾士のスキルで草の球を具象化し、蹴球士のスキルで蹴りながら走る。

 もちろん地図を片手にポスティングしながらだ。これは絶対LV上げが捗るはず。


 ……途中でドリブルなんか始めた俺も馬鹿ではあったが。あまりの量の多さにチラシを水路へ流してしまいたい気分になる。

 しかも1枚3Gとかマジあり得ない。


 なにくそ、修行、修行。蹴球士の『猛疾駆(ダッシュ)★★』で乗り切ってやる!

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