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掌編小説集1 (1話~50話)

歴史について

作者: 蹴沢缶九郎

昔々の天下泰平のとある国。平凡な毎日に退屈していた彦兵衛という男がいた。


彦兵衛は筆と紙を前に何やら考え込んでいる。その様子を見かねた、隣りに住む長介が「何を悩んでいるのだ?」と尋ねた。


すると彦兵衛は、


「未来の人間へ嘘を書き残そうとしているのだが、良い嘘が思い浮かばんのだ。」


と答えた。


「何故そんな事を?」


「意味などはない。あえて言うなら暇潰しだ。未来の人間がこの書き残しを読んで信じ、騙される所を想像すると面白いではないか。」


長介は「なんとまあ性格の悪い男だ。」と思ったが、しかしよくよく考えると、「これも一興かもしれない。」とも思えてきたのだった。


「よし、彦兵衛。俺も書くぞ。」


「うむ、だが問題はつく嘘だ。幽霊がいたとかはあまりにも大袈裟だ。かといって、毒まんじゅうを食って誰々が死んだなんて嘘も過少で面白味がない。その間ぐらいの嘘が丁度良いのだが…。」


「そうだ、実在しない架空の人間を存在させるとか、もしくは、ありもしない戦や出来事があった…といった具合の嘘はどうだ?」


「おお!!それは良い!!」


かくして、二人は未来の人間へ嘘を書いて残す為、その作業に取りかかる。



「未来の人間へ、嘘を書き残そうとしている奴らがいる。」



そんな二人の噂は瞬く間に全土へと広まっていった。これは面白いと、一人、また一人と作業に参加していく。


未来へ嘘を残す為の作業は徐々に熱を帯び始める。



「こんな名前の武将がいた事にしよう。」


「ここではこんな戦があったというのはどうだ?」


「この土地が発祥にしよう。」



初めは稚拙だった作業も、だんだんと巧妙になっていく。代表的な武士や武将、発明家に歌人といった架空の人物を何人も作り上げ、ボロが出ないよう一貫性を持たせた。


より真実味を与える為、全国に城や石碑も造った。


気がつけば、初めは二人から始まった作業も、もはや国全体を巻き込んだ作業となった。



未来の人間は残された書物、はたまた建物を見て、過去に想いを馳せるのだろう。だが、その全てが過去の人間が仕組んだ嘘なのだ。タイムマシーンでも発明されない限り、その時代の真実など知りようがないのだった…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お隣さんが、悩んでいるのを、見て、たすけてあげたことが、いいところ。 [気になる点] なんで、嘘をつこうとしたのか。 [一言] 嘘をつくのはダメだと思う。
[一言] ……それが現代に伝わる古事記であるw(適当) 登場人物がアベルとソドムなら新約聖書や0ーランかもですね☆
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