第1話:与え合う
よりによってここ...
街の中心に位置する湖に近いラブホ。
ここは同棲してる彼と遠恋してる時いつも使ってた。
...8年くらい前だっけ
『カノジョときたりする?ここ?』
『たまぁに』
そういう翔のドライさがアタシに合ってると思った。
...アタシだって彼と来てたホテルに入ってるんだから翔と似たようなもん。
『もうちょっと照明落とせない?』そういうアタシに素直にベッドヘッドのボタンをいじってなおしてくれた。
『先、シャワーはいってくる』
そういってバスルームへいきながら服を脱ぐ姿をみて
...アタシの子供でもいい年齢だもんな。
23年下のコといるアタシを再確認。
シャワーからあがってきたとき取りやすいようにバスタオルをドアの近くまで移動させた。
ついでにトイレに入ろうとしたらばっ!とシャワールームのドアが開いた。『あ!』と慌てて前を隠す、翔。
『別にみないよ』笑いながらトイレに入った。
『アタシも入ってくるね』そう言って服を脱ぎながらベッドルームから出た。
思い切りよく全部脱ぎシャワールームに入って髪を濡らさないように簡単に流した。
...簡単なもん。
同棲してる彼とは春以来、一回もシテない。セックスレス。
彼が朝帰りをする度、携帯が繋がらなくなる度、疑った。
...こんな簡単なんだもん、セックスすることなんて。
はっきり言ってアタシはセックスなんてご飯食べるのとおんなじ感覚だ。
ちょうど一週間前、翔とはじめて携帯で話した日に聞いた。
『オレ、ちょっと変な考えかたかもしれないけどカノジョってお付き合いしてるヒトじゃないですか、それはお付き合いしてるだけで好きなヒトって好きなヒトだし』
ハタチの翔はそう言った。
その感覚がアタシにちょうどいいと思った、思ってしまった。




