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エルグラドの冒険者(推敲及び改訂中)  作者: 井伊嘉彦
第一幕 女神のコイン
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73.「開錠」



 それなりに、覚悟はしてきたつもりだった――


「……ごめんなさい」



 雨の降りしきる公園で、彼女がぽつりとそう言った。



「なにが?」

「ごめんなさい……」



 彼女は質問には答えず、ただ謝った。


 彼女が謝る度に全身の血が逆流する。


 血の気が冷めて行くのに、体はじっとりと汗ばみつつある。


 湿気を帯びた風が肌にベタ付く。



「――。」



 言葉を口に出そうとして、やめる。


 話を聞くと言ったのは僕だ。


 話をさせてと言ったのは彼女だ。


 僕が何かを口にする場面じゃない。



 最近、彼女は僕を避けるようになった――



 部室で会おうが廊下ですれ違おうが、態度と魔力が妙によそよそしい。


 僕と相対する時、彼女の顔からは必ず表情が消えた。


 それは気を許した者にしか見せない彼女の「ひめゆり」と呼べる一面で、僕に対する信頼とも取れないことはない。


 でも、彼女は僕の魔力を取り込む訓練を一切断るようになった。


 それが解せなかった。



 ずっとずっと、気にかかっていた――



「レヴィ」

「うん」



 僕はぼんやりと、東屋(ガゼボ)の天井を眺めながら相槌を打った。



「私は、これ以上貴方の研究に協力出来ない」



 野を流るる清流如き涼やかな声色だった。



「――貴方と、今の関係を続けることが出来ない」



 僅かに混じるハスキーな響きが耳に残る。



「なぜ」



 僕は目を瞑って柱に首を預けた。



「貴方は、どうしてそんなにあの術式に拘るの?」

「大聖堂に雁首並べる諸教父、賢者と呼ばわれる高僧ですら解き明かせていない謎だ。人が無理と決める難題を落ちこぼれが解いて見せたら、それは痛快な事じゃないか」

「……それだけ?」



 彼女は目を伏せて声を響きを鈍くした。



「それだけ、とは?」



 僕は目を瞑ったまま質問の意図を聞き返した。



「あんたの研究への拘りようは、尋常じゃない」



 頭の中で思考のコインを弾くのに専念すると、彼女は己を律し戒める常識が消し飛んで、顔から表情が消える。


 言葉遣いが荒くなる。


 自分を整える事すら怠慢して、思考のコインを弾き続けるのだ。


 凛然とした修道女の面影は露と消え、いっそ毒とも取れる非常識を平気で口にする「ひめゆり」になる。



「君に僕の魔力を馴染ませるのが楽しい。あれが四六時中出来るのなら、別に研究でなくてもいいんだけど」



 僕は口の端を持ち上げて、研究に非協力的な彼女の態度を皮肉った。



「逃げないで」

「逃げる?」



 僕は目を開けた。


 皮肉ではあったが、半ば本気の事でもあった。


 いつまでも、彼女に一緒にいられるならば研究など必要ない。


 でも、それでも、それゆえに、ほとぼりが冷めた頃、僕は研究を再開するだろう。



「誰が、何からだ? 主語と目的語を抜かれると僕には理解が難しい」

「それだけの事なの?」

「何が、どうそれだけ(・・・・)だと言うのか」



 僕は髪を中途半端にかき揚げて、ひめゆりの気の抜けた半眼を睨み返した。



「あんたが噛み破ろうとしている常識は、世界の理に限りなく近いんだ」

「僧侶冥利に尽きる」

「冗談じゃない」

「冗談ではない」



 僕と彼女は、瞳孔を引き絞った瞳で見つめ合った。


 一触即発の、獣のにらみ合いのようだった。



「君とて、興味があるから承諾してくれたんだろう? それとも、理論を聞き出せれば後はもう用済みか」

「……」



 彼女がサッと目を逸した。



「あんたは、自分を縛る規則(ルール)を極端に嫌う」

「君になら縛られてもいい」



 僕はニッコリと笑った。



「常識という社会の規則(ルール)を噛み破って、人の意表を突いた抜け道を探そうとする」



 彼女は僕の言葉に取り合わず話を続けた。



「抜け道を、見つけだしてしまう……」

「魔力中枢が歪でね。持って生まれた性質だ」

「分かっているのに、直そうとしない」

「治らないんだ」

「そうやって、また逃げる」



 僕は首を竦めて返した。



「この先研究を続けて、あたしが魔力を全部飲み込めるようになったら、その時はどうするつもり?」

「それが分からない、ひめゆりでもないだろう」



 全ては、研究のためにしていることだ。


 それでも、僕の中で研究は、彼女のためにしていることだ。



「面白いとは、思うけど」



 ひめゆりが逸した目を僕に戻した。



「逃げるレヴィの研究には協力できない」

「僕が何から逃げているって?」

「それが分からない、レヴィの恋人にはなれない」

「……」



 逃げる? 僕が一体、何から逃げていると言うのか――



「君の言葉が確かなら、僕は修行僧ながら、世界の理に挑んでいるはずだけど」

「あんたは理に行き着いてしまうほど、視野を狭めて逃げ続けているだけ」

「理に辿りつけるなら、それは力じゃないか」

「だから、うん――」



 彼女は知恵の輝きに満ちたサファイアブルーの瞳で、僕を静かに見据えた。



「あたしの結論は変わらないかな」

「――。」



 抑えようにも、赤黒くドロドロとした感情が体中を這いずり回る。


 堪えようにも、目の前がチカチカして視界が白じむ。



「僕が、嫌いか?」



 彼女は首を横に振った。



「じゃあ、なぜ」



 抑えようにも、赤黒くドロドロとした感情が体中を這いずり回る。


 堪えようにも、目の前がチカチカして視界が白じむ。


 突き付けられた「手に入らない」と言う鎖に、関心の牙が疼く。


 歪に、激しく、燃え上がる。



 初めての、感覚だった――



「ごめんね」



 彼女は目を逸らしてそう漏らした。



「何がだよ」



 頭の中が煮えくり返る。


 彼女が何を言っているのかが理解出来ない。


 ひめゆりが何を考えているのかがわからない。



 分からない――



「君は、何をもって謝っているんだ?」



 それなりに、覚悟はしてきたつもりだった――



「あたしはレヴィを、弟のようにしか思えないんだ」




     ○


「とりあえず、裏返った愛で無理矢理にでも押し倒せばいいと、俺は思うわけだ」



 いや、姉ではないと分かったから思うことであって、実際行動に移していたなら間違いなく聖なる拳(ホーリーブロー)を股間に食らって男としてのデッドエンドだったことだろう。


 否、至極現実的に考えれば、彼女が「……」と、ひめゆりモードのままつつがなく行為が進み、一時の興奮と快感の後「……」と、お互い非常に気まずい思いで身だしなみを整え、五年後に再開した日には「……」の彼女を前に自己嫌悪が禁呪十連発規模の大爆発を起こしてリディアが滅ぶ。


 否、彼女も案外夢みがちなところがあったから「これって、呪いなんだ……」とか良くわからないエアリーディング能力を発揮して納得してくれたかもしれない。


 お互い聖職者なんだし、その可能性も決してゼロではない。


 極めて理系的に考えれば、世界に絶対など存在し得ないのだから。



 修道士と修道女の青春の一ページ――



「しかるに……!」



 俺は自意識の欠片の上に這いつくばって、脂汗を落とした。



「ぐ、ぅッ」



 目がくらむほどの吐き気に見舞われ、体が引きつって呼吸が出来ない。


 身体に走り続けるこの悪寒は一体なにゆえであるのか。



「インセスト・タブーより重く、非常識に幼稚だと……!?」



 ふられっぷりは幼稚である。


 走る悪寒はなお重い。



「まさか……これだけってんじゃ、ないだろ、な!」



 俺は視界の白じむ頭を振って、一人唸った。


 自意識の崩壊、無意識の侵食は俺とひとかけらの自意識の島、ワイズ・グレーがくれた輝く記憶の星一つを残して、完全に停止した。



 止まったと言うことは、記憶の喚起は成功したのだろうか?


 俺は全てを思い出したのだろうか?


 絶大なる興味関心から、世界の秩序を崩壊させようなどとテロを起こし、果ては中枢を燃やし尽くして死んだ俺は、現世に戻れるのだろうか?



 分からない――



「まだ、全てじゃないのか!?」



 ――全てを思い出せば現世に戻れる



 ワイズ・グレーはそう言っていた。



 ――これが最後の記憶喚起の鍵



 そう言っていた。



「かつての『僕』の、失恋が、鍵……?」



 それは錠を外すもののことだ。


 錠とはつまり何かを封じていると言うことだ。


 封じている何かが、あると言うことだ。



「禁忌……」



 俺は体中を駆け巡る悪寒の中で、必死に記憶の星を漁った。



「んぐぅぅぅ……!」



 これといって、パッと思い浮かぶものがない。



「ワイズ・グレーのやつ、投げっぱなしで無意識に逃れたのか?」



 無意識の逃げを()で言った事になる。



「ぐ、う、あ」



 あまりの気分の悪さに、俺は自意識の上に寝転がった。



 ――トテ、トテ、トテ……



 うんうん唸る俺の前を、一匹の猫が横切る。



「……へ?」



 黒い毛並みにエメラルドグリーンの瞳、愛嬌があるくせに何処か気高い。



「ね、こ……?」



 自意識の欠片の上、俺より少し離れたところで猫は足を止めて、左の前足で顎の下を忙しなく掻いた。



「猫……」



 黒猫は欠伸をしたり、寝転がったりとしばらくだらしない素振りを見せていたが、ふと素早い身のこなしで立ち上がり、全身の毛を逆立てた。



「……なん、だ?」



 何もない無意識の闇に身構えて、猫が唸り声を上げる。



「なんだよ、どうしたん――」



 ――ザシッ! ザシュッ!



 猫の体が左右に弾けて、小さな体に大きな傷が走った。



「え?」



 自意識の上に猫の血が飛び散る。


 傷ついた猫は、唸り声を上げて闇に身構えた。



「え、おい、ちょっ――」



 ――ザシッ! ザシュッ!



 猫が何かに斬りつけられて更に傷を負う。



「お前、何をやって!?」



 伸ばした俺の腕をかいくぐって、猫が自意識の舞台を駆ける。



 ――ザシッ! ザシュッ!



 猫の左の前足が斬り飛ばされた。



「――ッ!」



 俺はまともに動かない体を転がして、猫を庇うように身構えた。


 なんだ、猫は何と戦っているんだ?



 攻撃は何処から――



 傷ついた黒猫は斬り落された左手を咥えて、痛々しい足取りで俺の前に立った。



「前に、出る、な……!」



 俺は猫に手をかざし、治療(ヒーリング)を施そうとした。


 しかし、魔力が集まる気配がない。



 ――ザシッ! ザシュッ! ザガッ!


 満身創痍の猫の体が弾け、猫は最後に二本足で立ち上がり、石像の様に固まった。


 まるで、四方八方から見えない槍に貫かれているような有様だった。



「な、に――」



 黒猫は体中から血を吹き出させて、咥えた左足をぽてりと落とした。



「なん、だ?」



 ズタズタになった隻腕の猫は、やがて自意識の舞台の上に崩れ落ちて、そのまま動かなくなった。



「う、ぐッ」



 悪寒が一層強まって、俺は地面に突っ伏した。



 なんだ、どういうことだ――



 ――タ、タ、タッ……



 また足音がし、顔を上げると、ブラウンの毛並みをした銀眼の狼が立っていた。



「おお、かみ……?」



 狼は力尽きた猫の亡骸にチラリと見やって、その屍を飛び越えた。


 狼が闇に向かって唸り声を上げる。



 ――ゴッ!



 激しい衝撃音と共に狼の頭が沈んだ。



「お、い……!」



 またしても、何か不可視の何かと戦っている。



 ――ゴッ!



 再びの衝撃に狼がぐらつき、体を左右に揺らして耐えながらも、結局は自意識の舞台に伏した。



 ――カフッ、カフッ



 口を喘がせて狼が血を吐く。


 ぼんやりとした銀色の瞳が、俺をじっと見つめていた。


 狼は必口と鼻から血を垂らし、何かを訴えるように喘ぎ続けていた。



「なん、だ……なん、だよ!?」



 俺は体を這わせて狼に手を伸ばした。


 どこをどことも見定めない狼の瞳は、やがて光を失って、口を開けたまま絶命した。



「これ、は……!」



 背筋に走る悪寒がなお増していく。


 それは彼女と再会した時に、身体に走った不快感。


 彼女に触れた時、極まった嫌悪感。


 湧き上がる度に、レヴィ・チャニングの中のワイズ・グレーは魔物を都に沸かせていた。



 感情を乱し、意思をも挫く甚大なストレス――



 ――テ、テ、テッ


 新たな足音と共に、淡い桃色の毛並みをした子供の虎が俺の目の前を横切った。


 真紅の瞳が、不思議そうに横たわった猫を見つめている。



「よ、よせ……」



 俺は嫌悪感に身を震わせながら、子虎に腕を伸ばした。


 子虎は俺にも目を向けて、ポカンと呆けた様子で首を傾げた。


 何が起きたのか、分かっていない様子だった。



「やめ、ろ……!」



 子虎はやがて狼の亡骸を見つけ、その前に座った。


 小さな前足が死んだ狼の顔をチョンチョンと触る。


 狼は動かない。



「やめ、ろよ……!」



 動かない狼を前に、子虎は寝転がって愛想を振りまいて見せた。


 全く反応を示さない狼に、子虎が瞬間激高して唸り声を上げる。


 唸っても威嚇しても、やはり狼は動かない。


 やがて子虎は急に態度を変えて、甘えるように狼の懐に潜り込んだ。


 狼の喉元に顔を擦り付けて、幸せそうに喉をゴロゴロ鳴らした。



「やめ、て、くれ――!」



 狼の亡骸に添い寝をして、幸せそうにじゃれついた。


 必死に必死に、じゃれついた。



「やめろぉぉぉぉぉおおおおッ!」



 ――ザシュッ!



 狼の亡骸の腕に抱かれた子虎は、何かに貫かれて手足をビンッと伸ばした。


 それでも子虎は狼に顔を摺り寄せて、真紅の瞳を幸せそうに細めて、絶命した。



「あ、あ、あああ……ッ!」



 俺は獣達の血にそまる舞台の上で泣き叫んだ。


 赤く染まった自分の手が嫌に小さい。



「なに、が……なんだ、よ……?」



 声が、妙に甲高かった。



「ああああああああああああ――ッ!」


 僕になって、俺は叫んだ。



「違う、違うッ!」



 嫌悪感とはつまり、ストレスだ。




     ○



 ――バチィッ!


「……ッ!」



 レヴィの体から魔力が迸り、私の体は祭壇から弾き飛ばされた。


 サフィアが私の体を受け止める。



「大丈夫か」

「え、ええ……私は大丈夫」

「レヴィのことだ」

「……」



 彼に当分春は来ない。



『なんと言うことだ……』

『遺体が魔力を発揮するなど……!?』



 諸教父らが驚愕に震えていた。



『魔力中枢が、再構築されつつある』

『妖脈が走り出しているぞ!?』



 口々に驚嘆の声を漏らし、レヴィの状態を確認しあっている。


 諸教父の一人が、私が送り込んだ魔力を帯びるレヴィに手を触れようとした。



「さわるなッ!」



 私は魔力を漲らせて吼えた。


 瞬間瞬間の制動に特化したレヴィの魔力は、その質が酷く荒い。


 一瞬でなければ、感情が高揚して脳が焼ききれる。


 簡単に、人の常識や良識を吹き飛ばす。



「まだ終わってない」



 私は髪を宙に漂わせて、諸教父らを睨みつけた。



 それはあたしが失った、あたしが得ようとしてる、あたしのものだ――



 彼の魔力に刺激され、心の奥底のひめゆりが首をもたげる。


 術式は思う限り完璧に結ぶ事が出来た。


 でも世界に絶対は存在しない。


 あとは彼の魂が、現世に帰ってくるだけの答えを出せるか否かにかかっている。


 死に臨み、自己の中に潜む絶望を超えられるかどうかにかかっている。



『……反魂だ』



 諸教父の一人が、ぼそりと呟いた。



『監察の神官長が使ったのは、反魂の術ぞ!』



 ――ざわッ



 滅多に乱れる事のない諸教父の魔力が、一斉に乱れ出した。



『魔力中枢に手を付けるは、教の絶対禁忌ぞな』

『なんということをしやった!』

『こともあろうに、大聖堂の祭壇で……!』



 ハッキリ敵意と分かる意思を灯した瞳が、私とサフィアに集中した。



『異端者だ! この者らは異端者ぞ!』

『出会え出会え! 監察神官!』



 諸教父らが叫び、聖堂の扉向こうに駆けつける人の気配がし始めた。



「ごめんなさいね、サフィア」



 私は魔法銀(ミスリル)の剣を構えて、背後のサフィアに謝った。



「んん?」



 サフィアが首をさすりながら疑問符を返してくる。



「貴方なら、結界の構築を担当する神官長になれたかもしれないのに」

「謝るなら、ケインにだろうな」

「え?」

「俺はかつてのレヴィの絶望に追いつけなかった。ケインの理想に追いつく事が出来なかった」



 サフィアも、身体に魔力を漲らせて、私と並んだ。



「お前の様に業を背負ったまま、神官長を勤められるほど肝が座っていない」

「……真面目だなー」



 サフィアは学生時代から誰よりも敬虔な教徒だった。


 誰よりも物事を深く考えて、取り込んだ情報、世に存在する常識の中、一人静かに先を見通し、聖職者たらんとし続けていた。


 眠れる獅子は、聖職者の中の聖職者だった。



「お前達が変わっているだけだ」



 ――ジャキッ



 一塊になった女神のコインが、サフィアの胸の前に現れた。



「貴方も素質は十分だと思うのだけど」



 数百枚のコインを一気に扱う情報把握力と、それを可能にする魔力の馬力は、私やレヴィにはないものだ。



『『お静かに』』



 保守派の長老と、革新派の若年寄りが声を揃えて言った。



『異端者かどうかは結果が決めることじゃ』

『神官長足り得るかはこれから分かること』



 騒然とした場が俄かに静まり返る。



『反魂が成功したとて、それは不出の秘事たる偉業』

『反魂が失敗すれば、それは教に置ける禁忌の醜聞』



 長老、若年寄りが諸教父らを見渡した。



『レヴィ・チャニングを拘束する術式の用意をせよ』

『ステラ神官長並びにサフィア教区司祭を、取り押さえなさい』



 二人が揃って微笑む。



『『お静かに』』



 諸教父らが、息を殺して魔力を漲らせた。


 大陸の聖典として、全土に伝播しつつある教を取り仕切る賢者高僧十数名、扉の向こうには教の選りすぐりの監察神官、かつての私の部下達の気配が集結しつつある。


 どうあがいても勝ち目がない。


 それでも私は抑えられなかった。


 私の中のあたしの我が儘を、抑える事が出来なかった。



 燃やしているのではない、燃えているだけ――



 ――ダァンッ



 背後で聖堂の大扉が開け放たれ、僧侶たちが押し入ってきた。


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