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エルグラドの冒険者(推敲及び改訂中)  作者: 井伊嘉彦
第一幕 女神のコイン
61/86

57.「今ならお得な二つセットで」



「やッ、ふッ、せぇええええええッ!」



 胴、切り返して逆胴、剣を回しての斬り払い――



 アリオスがクレイモアを振り回して大通りを駆け抜け、雑魚を次々に蹴散らしていく。



「無双だな、おい」



 俺はアリオスが討ち漏らした敵の間を縫って、すれ違いざまに剣を抜いた。


 バタバタと魔物達が背後で倒れる。



 振り返れば死屍累々――



 もともと死体みてえな魔物も多かったけど。



「……マンフレッドさん、どう思ってるだろ」



 ふと、アリオスが足を止めて独りごちた。



「へッ、そりゃ考えるだけ無駄だ」



 俺は剣の血を切りながら笑った。



「無駄?」

「お前さんはもう飛び出して来ちまったんだ。誰がどう思うおうが、やることァ変わんねえだろ?」

「そりゃそうだけど、今回の件は俺が頼んだ事だったし……」



 アリオスの魔力がしぼむ。



「安心していいぜ。議会の参議サマってな、何処ぞの泣き虫小僧に心配されるほど底が浅くねえ」



 肩を竦める俺に、アリオスがムッとした顔になる。



「なろぉぉぉぉぉッ!」



 アリオスが右手でコインを構え、左手を右肩に当てた。


 魔力が一気に高まる。



銀の甲弾(スナイプ・ブリット)ッ!」



 ――タォォォンッ!



 八つ当たりのような高威力の魔法銀(ミスリル)が、複数体の魔物を貫通してなぎ倒した。



「おー、それアレか? 前に馬鹿犬狙撃した時の」



 俺も一度、剣を弾かれかけた技だ。



「なかなかの威力だろ」



 アリオスが振り返って笑う。


 気持ちの切り替えは、それなりに上手く出来るようになったようだ。



「どら、こんな感じで――」



 俺はアリオスが見せた動作を鏡映しに真似て、左手にコインを構えた。



「おらァ!」



 ――パシュッ……



 コインがすぐ目の前で消失した。



「ありゃ……?」

「普通のコインじゃそうなるよ。銀の甲弾(スナイプ・ブリット)は圧縮鍛造した強化コインじゃないとダメなんだ」



 アリオスがコインを一枚弾いてよこした。


 普通の女神のコインよりずっしと重い。



「っていうか、これ教の奥伝だよ? 普通はもっと丁寧に魔力を貯めないとだめなんだ。そう簡単に――」

「おらァ!」



 ――タォォォンッ!



「……え?」



 一直線に伸びる貫通弾が四〜五体の魔物を打ち抜いて駆逐した。


 射程距離も馬鹿に長げえ。



「おほー、こいつァいい、こりゃ気に入った! 気分爽快ッ!」



 普通のコインを弾いた時より親指の手応えが重く、「撃ったった」感がある。



「……」



 アリオスが無言になった。



「よォ、このコインってな値が張るのか?」

「え? あ、いや……普通の女神のコインの二倍ぐらいかな……」

「なら大したこっちゃねえな。ちょい分けてくれ」

「あ、うん……」



 アリオスが腑に落ちない様子でスラックスのポケットに手を入れた。



「これだけど……」



 アリオスが女神のコインの袋を俺に差し出した。


 ひと袋五十枚入り、普通のコインならコレで五ディールだから、強化コインなら十ディールって事になる。



「金は後でいいか?」

「お金は別にいいけど……」



 アリオスがなんとも言えない複雑な顔で言った。


 俺は強化コインを一枚手にとって自分の魔力をなじませ、マジックバッグからいつでも呼び出せるようにした。



「どれどれ」



 舌なめずりをして右手を構える。



「おらァぁああ!」



 ――タォォォンッ! タォォォンッ! タォォォンッ!



「速射かよッ!?」



 通りの魔物がまたバタバタと倒れていく。



「ほーん? こりゃ確かに狙撃に向いてんな。ちと指がだるいが」



 発射に指の力だけでなく魔力を用いてるせいか、反動は単発ブリットよりも小さく狙いが定めやすい。



「あ、あんた一体――」

「このコイン、どんだけの魔力に耐えられるんだ?」



 目を剥くアリオスに構わず俺は質問を被せた。



「え? ああ……あんまり出力を上げると真っ直ぐ飛ばないんだ。威力が高いだけに危険だから――」

「おぉぉぉらァッ!」



 ――ダォォォンッ!



 弾は真っ直ぐ飛ばず、右にスライスして家の煙突を粉みじんに砕いた。



「ありゃホント」

「な? 危ないって――」

「弾丸を安定させるプラスアルファがあればいいってこったな」



 俺はニヤリと笑ってまた右手を構えた。



「追い風 カマーン!」



 ――バフッ……



 俺の体を風が取り巻き始める。



「風を操って――あんた魔法も使えるのか!? 騎士なんじゃ――」

「頭に元がつくっつってんでしょー?」



 強化コインを構えながら肩を竦める。



「ありったけの魔力をこめてえ……風で包んで――」



 風を操る魔力が、肩に当てた右手から左手へと伝わっていく。



「ぶっ飛ばす!」



 ――ドォォォンッ!



 コインに乗せた魔力と風がぶつかり合い、強烈な発射反動で俺の体は後ろに飛んだ。



「おっほほー!?」



 風の制動でバク宙がてら着地すると、当のコインが風の衝撃波を伴って真っ直ぐ通りを突き抜けて行くのが見えた。



 ――ボッ、ボボボッ!



 直撃した魔物がくぐもった音と共に粉となり、付近にいた魔物までもが衝撃に巻き込まれて体を半壊させている。


 通りの魔物がすっかり片付く威力だった。



「極上ォ! こいつァ極上だぜ!」

「ばかな……そんな馬鹿な……」



 アリオスが唖然となって立ち尽くした。



「我がケット神剣に新たなる奥義が誕生! こいつを風の走者(ウィンド・ランナー)と名付けよう」



 俺は腕を組んで頷いた。



「け、剣術と関係ないんじゃ……」

「へッ、俺の流儀にゃ剣も魔法もコインもねえ。オールマイティ、オールラウンド、我がケット神剣に死角なし!」

「ええ!? つか、ええ……!? こんなことって……」



 アリオスがしきりに首を捻る。



「ふッ……なんでか出来てしまうんだよ。俺にゃ」



 俺は顔の前に手を翳してニヒルに笑った。



「おっし、掃除も済んだこったし進むぞ。魔盗改めの防衛ラインまでもうちょいだ」

「あ、ああ――」



 未だすっきりしない様子のアリオスに構わず、俺は通りを駆け抜けた。


 レアード邸宅からこっち、徐々に魔物のレベルが上がってきている。


 進めば進むほど、魔物の気配が濃くなった。



 こいつァ思った以上に楽しめそうだ――



 レヴィとのガチの勝負を神官長に譲ってドッチラケだったが、どうやら四日寝た分の大暴れはできそうだ。



「ウィル! 前!」

「あん?」



 ふと目を上げると、広い通りを完全にふさぐ大きさの猛牛獅子(モーライオン)が突進してきている。



「アリオス、止まんなよ! そのまま抜けんぞ!」

「あんなデカいのほっとくのかよ!? 街がめちゃくちゃになっちまうよ!」

「へッ、冗談――仕留めるに決まってんだろ」



 俺は右手で剣を抜いた。


 刀身を風が包み込む。



「しゃァぁぁぁらァぁぁぁああッ!」



 走った勢いのまま剣を全力投擲、



 ――ズドォッ



 剣はモーライオンの眉間に深々と突き刺さった。



『ゴゥロゥゥ――』



 足と舌をもつれさせながら迫り来るモーライオンを、俺達は飛び越えて大通りを駆け抜けた。



 ――ドシィィッ



 背後からモーライオンの巨体が転がる衝撃がする。



「って――剣は!?」



 隣のアリオスが駆け足を緩めようとする。



「心配すんな。勝手に戻ってくる」

「勝手にって――」



 ――カシャッ……



 俺の腰で音がなった。



「え……?」

「お前さん、さっきから呆けてばっかだな」



 投げた剣が腰の鞘に収まっている。



「すげ……! それ、なんて武器!? 希少(レア)武器じゃないのか!?」



 アリオスが走りながら興奮した。


 中々お目にかけることの出来ない価値ある一品を、俗一般に稀少(レア)と呼ぶ。



「こんな見てくれパッとしねえ稀少(レア)なんてあんの?」



 俺の剣は片刃の直剣、両手剣とも片手剣ともつかねえ中途半端な長さで、切れ味が特別いいわけでもねえ。


 廃れた武器屋の隅で埃かぶってそうな代物(しろもん)だ。



「ま、頑丈さだきゃァ一級品だがよ。何しても壊れやがらねえ」

「壊れない剣かあ……! そういえば、初めて会った時もいつの間にか手元に戻ってたっけ」



 アリオスが緋の瞳を輝かせながら口早に言った。


 力量はさて置き十代の少年だ、武器の話題ではしゃぎてえ気持ちは分からんでもない。



「ま、そんかし、装備してるだけで魔力吸われちまうけどな」

「え……?」



 またそれかよ。



「でも、稀少(レア)武器なんだしそれぐらいは……手元に戻って来るってだけで十分凄い特殊効果じゃないか」

「物心ついたときから装備してんだけどよ。捨てても落としても鞘ごと腰に戻って来んだ。他の武器持つと鞘が分からなくなるらしくて、俺の体に刺さろうしやがる」

「……」



 アリオスが黙った。



「これが相手にすると厄介でなァ。何しても壊れねえからもう強ええのなんの」



 昔は「いい加減ぶっ壊れろや」という気持ちで振ってたもんだが、今はもう「これでいいや」になっちまった。



「ウィル……それ呪われてるんじゃないの? それ呪いの武器って言わないか?」

「便利だよね」



 俺はサラリと言ってやった。



「……その剣、名前とかあるの?」

「名前? あー……」



 俺は走りながら宙に視線を向けた。



「昔、のっぱらの草刈るのに使ってたっつーことで、『クサカリバー』ってなァどうよ?」

「凄く胡散臭いッ!?」



 アリオスが走りながら「ガビンッ」と身を強ばらせた。



 ちょい自信あったってのにこの野郎――



 そんなやり取りをしながらも、俺たちは激戦繰り広げる魔盗改めの防衛ラインに辿りついた。


 路地に立ちはだかる猛獣を相手取って、見知った背中が戦闘を繰り広げている。



「おおぉッ!」



 片刃の馬鹿にデカい斧、



燃える直球(ブェイズボーゥ)ッ!」



 ほにゃほにゃした締りのない爆弾投げ、



『グルゥゥゥゥァッ!』



 相手は人の背丈の三倍近い大きな熊、首に入った白い紋様、飲みすぎの中年みてえな胴回り、自分の体を掻けそうもない発達した爪――


 標準サイズより二周りはデカい親父熊(ダディベア)が爪の猛威をふるっていた。



「おぉっしゃァ! 行くぜクサカリの剣!」

「それでも胡散臭えよッ!」



 俺とアリオスが同時地面を蹴って、戦闘領域に躍り込んだ。


 ダディベアに俺とアリオスの剣が突き立つ。



『ガ、ァ……』



 気の抜けた断末魔と共に、ダティベアが地面に倒れ込む。



「ウィルくん! アリオスくんもッ!?」



 アヤが嬌声を上げた。



「エルカム」



 ビートが帽子を上げて無表情に言った。



「レイハは何処でえ」



 俺は剣の血を斬って聞いた。



「団長なら瘴気の直下に行ったお。押され気味になってたんで、前線に出るって」

「レイの指揮官突撃が出たか。クライマックスが近そうだな」



 防衛ラインの維持が大分しんどい状況らしい。



「俺たちも前に出るぜ、アリオス」

「ああ」

「オトモするお」



 ビートが斧を担いで言った。



「あたしも行く!」



 顎の下で両拳を構える乙女チックポーズのアヤに、男一同の視線が集中する。



「な、なによぅ!」



 俺は何も言わずビートを見た。



「……一人にするとロクなことしねえからな」

「ふんッ、素直じゃないんだかァ」



 アヤがニンマリ笑った。



「戦場でイチャイチャすんな。死ぬぞ」



 俺は真顔で言ってやった。



「この戦いが終わったら孕ませるんだお」

「恥ずかしいセクハラさァっと口にすゥな!」



 アヤが顔を真っ赤にして怒声を張る。



 お前の発言のが恥ずかしい――



 思ったけど言わない。



「……」



 隣を見るとアリオスが顔を赤くして俯いている。


 こっちはこっちで青少年しちゃってるし、ホント大丈夫かこのパーティ。



「さっさと行くぞ。祭りに遅れちまわァな」



 俺にやや遅れてビートとアリオスが並走し、アヤが後尾から付いてくる。

 隊員達が闘う魔物にちょこちょこ茶々を入れながら、俺達は中央区の中心地に向かって魔物の流れを逆走した。



「くそ……! なんて瘴気だよ!」



 アリオスが呻いた。



「感覚が馬鹿んなちまうな」



 魔物が放つ魔力が濃すぎて個々の気配を区別しづらい。



「こうして見ると、デカいタマねえ……」



 アヤがピンクの子虎の通名に恥じない際どい発言をする。


 空を見上げると、紫がかった黒雲が巨大な卵の様にまとまって渦巻いている。



「不元気玉だお」



 狼がのんびり言う。



「ウィル、あそこだ!」



 忠犬が指差した先、だだっ広い貴族議議事堂前で、馬上で剣を振るう騎士の姿があった。



 赤い袖なしの戦袍、立ち上る重厚な魔力――



「せぇええええええッ!」



 厚重ねの太刀が、群がる魔物を一刀でなぎ払った。



「よー大将、護衛もなしに大暴れたァご機嫌じゃねえか」

「ウィル! 来たか!」



 自身の体躯に見合った巨馬の馬首を巡らせてレイハが笑う。


 返り血だらけだが、馬にも本人にも傷一つ負った様子がない。



「ラブリッサの面々も一緒か。それから君は――」



 レイハが顔の血を拭いながらアリオスに目を向けた。



「どうも、アリオス・ウォークと申します。ご高名はかねがね」

「おお、大聖堂の英雄! よく駆けつけてくれた!」

「いえ、その――」



 アリオスが頭を掻いた。



「……アリオスって、名前で呼んで貰えませんか?」

「む?」

「魔盗改めの団長である貴方に、英雄と呼ばれるほどの器量が俺にはまだありません」

「はっはははは――魔物入り乱れる戦場の最奥地で動じた様子もない。左様な大丈夫が何を言う」



 レイハが快活に笑った。



「――だが分かった。近衛府直属、魔物盗賊改め方、シレン騎士団の長レイハ・シレンだ。俺もレイハで良い。非常時ゆえ、馬上からの挨拶を許せ」

「はい!」



 アリオスが顔を輝かせて答えた。



「どんな様子だ?」



 俺は剣を担いでレイハを見上げた。



「魔物は強力だが、湧きが収まりつつあるな。どうも折り返しに入ったようだ」



 議事堂前の広場を見渡すと、精鋭部隊の魔盗改めの中でも、特に手練と言われている複数人が思い思いに魔物の駆逐に当たっていた。


 劣勢と行った雰囲気はない。



「なーんでえ。熱い時間は逃しちまったのか」

「サフィア殿の計算が正しければ、ここからが灼熱地獄だぞ」



 レイハが刀の血をきって空を見上げた。



「第三段階、エルグラドの災厄ですね」



 アリオスが体から濃い魔力を立ち上らせながら言った。


 ここに来るまでにサフィアの計算の話はしてある。



「およそ十代らしからぬ魔力よな。頼りにさせてもらうぞアリオス」

「死力を尽くします」

「命は粗末にするなよ」

「はいッ!」



 レイハの言葉にアリオスがハキハキと答えた。


 アリオスに笑みを返していたレイハが、表情を引き締めて辺りを見渡した。



「さて――」

「魔物が湧かなくなったわねえ」



 爆弾を片手に、アヤが舌なめずりで辺りを見回している。


 あらかた片付け終わった手練の隊員、隊長らも、同じように状況を確認している。


 最後までで粘っていた一体が倒れ、辺りはしんと静まり返った。



 静寂――



「音が消えたお」



 ビートがのんびりと言った。



「嵐の前のナントやら、だな」



 レイハが濃い眉を眉間に寄せて呟く。



 ――ザワッ……



 場にいる全員の魔力が揺れ動き、大気を震わせた。



 背筋に走る濃い悪寒――



「う……!?」



 アリオスが身を抱いて震えだした。



「なに、なになになになに……!?」



 アヤがビートの体にしがみつく。



「……」



 ビートの体も震えていた。



「へッ」



 俺も体を震わせながら、口の端を持ち上げた。



「武者震いってな久々だ」



 恐怖、興奮、そういった意識もないまま、体の芯から来る震え。


 交感神経のホルモン分泌がどーたらと理屈はよく知らねえが、武者震いは体のリミッター解除の準備段階だ。


 手に握る汗は滑り止め、戦闘前の獣は必ず手に汗を滲ませる。



 どぎついのが出そうだぜ――



 広場にいる全員が体を震わせていた。



 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……



 大気の振動と共に、瘴気の渦が逆転して急速に収束していった。



「さあて、鬼が出るか蛇が出るか」



 レイハが魔力を漲らせていっそ楽しそうに笑った。


 都の精鋭騎士団で頭張ってるこの騎士も、根っこの部分はいち兵法者、剣を振るのが三度のメシより好きなクチだ。



「足して二で割ったもんじゃねえの?」



 俺は肩を竦めて言った。震えはもう止まっている。



「鬼と蛇って、足して二で割ると何になるんだ?」



 アリオスが緊張した面持ちで、引きつった笑いを浮かべて見せた。


 こういうときに無理に笑おうとするたァ、立派に英雄してやがる。



 ――ジ、ジジジジッ……



 収束した瘴気が上空にスパークを走らせた。



『ゴァアアアアア――!』



 それは雷鳴のような咆哮を上げて議事堂前に落ちてきた。



 ――ドゴォォォォッ!



 石畳に亀裂が走り、激しい土煙が上がる。



「ひッ!?」



 アヤが声を上げてビートの腰にしがみついた。



 吹きすさぶ禍々しい魔力の風――



「流石は猫の目だ。物事をよく見抜く。確かに足して二で割ったものが出た」



 レイハが苦笑する。



(ドラゴン)かよ――ッ!?」



 アリオスが目を剥いて叫んだ。



「ちゃんと二で割れてないんじゃないかねえ」



 大して動じた様子もなく、ビートが帽子に手を当てる。



「超ラッキー」



 俺は顎の下を掻きながら、議事堂より背丈のあるドラゴンの長い首に目を向けた。



「頭が二つついてらァ」



 双頭の竜ツインヘッド・ドラゴン――



 やる気のない素振りとは裏腹に、俺のテンションは最高潮に達しつつあった。


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