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エルグラドの冒険者(推敲及び改訂中)  作者: 井伊嘉彦
第一幕 女神のコイン
30/86

28.『姫百合の謝罪』



 頭の中で、ひどく赤黒い感情が渦巻いていた。


 どんな本にも、これ(・・)を現す言葉は見つけられなかった。


 言葉では到底表現しきれない。


 それはドロドロとしていて腸を煮えくり返らせる。


 それはゴロゴロとしていて胸を内側から傷つける。



 部室の扉を乱暴に開け、僕はサフィアの正面の椅子に跳び乗った。



「……」



 読書していたサフィアは一度目を上げて、また読書に戻った。



「サフィア、結界術の基礎を教えてくれ。なるべく簡潔にな」



 挨拶もなし、いきなりの要求をした僕に、サフィアが手にした本を閉じる。



「……レヴィ」



 嗜めるような声色だった。



「結界術の基礎構築に当たる部分だけでいい。ざっくり本質を掴めればそれでいいんだ」

「何を考えている」

「良いことさ」



 僕は口元を歪めてそう言った。



「もっと具体的に語ってくれ。でなければ俺とて教えられん」

「それは技術的な可否か? それとも倫理的な可否か」

「どちらもだ。結界術は術式の中でも世界に対する影響力が大きい」

「安心しろ。僕がやろうとしていることは世界にとって最も良い選択だ」

「最も?」

「――ふん、最もは言い過ぎか? ならば言葉に気を付けよう」



 僕は力ませた親指でコインを大きく弾いた。



「お前が僕に結界術のノウハウを授けようとも、世界には何らデメリットを生まない」

「結界術を使うと言うことは、大なり小なり空間に歪みを作ることになる」



 サフィアが僕を睨みつける。


 落ちてきたコインを捕まえて、僕もサフィアを鋭く睨み返した。



「その歪み以上のメリットは保証する。僕がやろうとしていることは、あくまでも世界に対する優しい選択だよ。何ら他者を害することはない」

「何をするのかを具体的に言ってくれ」



 サフィアのチャコールの瞳が、意思の光りに燃えている。



「今後発生するであろう、微細(・・)な危機を回避しようと言うのさ」

「危機とはなんだ?」

「ふん」



 僕は口の端を持ち上げて髪をかきあげた。



「世界の秩序の崩壊」

「なに……?」

「封じたいのは万に一つの可能性、ほんの些細な一要因だがな」

「レヴィ」



 サフィアの語調がきつくなる。



「ふざけているつもりは毛頭ない。世界の秩序崩壊を引きこしかねない可能性を、この落ちこぼれが封じてやろうと言っている。ろくに魔法も扱えない、この劣った体で出来る、小さな結界術でな」

「……」



 サフィアは腕を組んで考え込んだ。



「何が不満か」

「何が世界の秩序を揺るがす? どんな可能性を封じようと言うのだ」

「可能性が何かを語らねば、結界術の基礎は教えてはくれないのか?」

「んん」



 サフィアがしっかりと頷いた。



「そうかい」



 僕は冷笑してコインを小さく連続で弾き始めた。



「なら僕も、目に付いた本を手にとって、独力で研究に当たろう。君ほどの男が世界に対する影響力が強いといってはばからない結界術だ。基礎だけと言ってもこれはやりがいがある」

「……脅しているのか?」

「なぜ? 僕の言葉の何処にお前を脅かす要素があった? 魔法を満足に扱うことのできないこの落ちこぼれが、珍しく(・・・)見せた向上心だろうに」

「……」



 目を瞑って完全に黙りこくったサフィアに対し、僕はふと思い至って視線を宙に投げ出した。


 頭に血が上っていてすっかり忘れていた。



 僕がしようとしていることは、サフィアの結界術式理論をも出し抜かなければならない――



「考えてみれば……お前には聞かない方がいいのか」

「ん?」



 サフィアが目を開ける。



「お前に聞くのが一番確実かとも思ったが、そうだな――逆に、聞くべきではないことだった。失念と言える。すべて忘れてくれ」

「……どういうことだ?」

「ああ、駆け引きとして言っているんじゃない。知っての通り僕は思ったこと考えたことを口に出してしまう癖がある。本当に気が変わっただけだ、邪魔をしたな」



 僕は小さな体で椅子から飛び降り、左手をポケットに突っ込んだ。



「今の一瞬で、何をどう心変わりした?」

「語らうつもりが失せた。自分勝手もいつものことだ、気を悪くしないでくれ」



 右手で髪をかき揚げながら、クスッと笑う。



「レヴィ――」



 サフィアが何かを口にしようとした瞬間、部室の扉が開いた。



「よー、レヴィいるかー?」



 軽妙な声で割り込んで来たのはケインだった。



「何の用だ? 歯並びの悪い猪」



 興の乗らない気分のまま、ケインに目を向ける。



「なんだなんだ、一等ご機嫌斜めだな。俺は届け物をしにきてやったんだぞ」



 ケインがすきっ歯を見せて笑う。



「届け物? なんだ」

「ほれ」



 ケインが懐から取り出したのは、少し痛んでしまったノートだった。



「お前に返しておいてくれって、司祭端の彼女が。さっき廊下ですれ違ってよ」

「彼女とは? 誰のことだろうね」



 僕は薄ら笑ってケインを見上げた。



「誰ってお前、同じ部の仲良しさんじゃ――」

「俄かに思い出せないが、そのノートは確かに僕のものだな」



 ケインに歩み寄り、僕はノートをひったくってゴミ箱へと投じた。



「お前……」

「ケイン、気を悪くしないでくれ。届けてくれたことには礼を言う」

「え? あ、ああ……」

「僕は他人の魔力の香りが染み付いたものというのが苦手なんだ。特に、甘ったるい毒花の臭いなどはもうたまらなくてね」

「……ケンカでもしたのか?」

「誰が、何とだ? 主語と目的語を抜かれると理解が難しい」

「いやー、えーっと……」



 ケインが困ったような顔で笑う。



「例えば――その主語が僕であったとして、目的語に君が代名詞を使って『彼女』と差す人物が当てはまるのだとしたら、問いに対する答えはノーだ。僕はその『彼女』なる人物を知らないし、ケンカなど起こり得ようはずがない」


 一息にまくし立てた僕の言葉を受けて、ケインがサフィアに向かって肩を竦めた。



「要件はそれだけか?」

「ああ――まあな」



 ケインが苦笑いを浮かべる。



「そうか。わざわざこの部室まで届けに来てくれてありがとう。それからサフィア、邪魔したな」

「……んん」



 サフィアが困ったような悩まし気な顔で頷いた。



「ふん」



 僕は誰にでもなく、苛立たしげに鼻を鳴らしてケインとサフィアが残る部室を後にした。


 扉を乱雑に閉める。




 ――ダァンッ




「――ッ!」



 心臓に悪い音と共に、俺はベッドから跳ね起きた。



「なん、だ……?」



 何度となく見ている、覚えのない修行時代の夢だったような気がする。


 しかし、内容を追えば追うほど夢の映像は遠ざかり霞んでいった。



 これまでと、何かが違う――



「なんだ……?」


 急な覚醒のせいか動悸が鳴り止まず、全身に脂汗が浮いていた。



 ――ダァンッ



 再度鳴った音に俺は体を強ばらせた。


 自室の扉を、何者かが叩いている。



 自室――?



 ふと見渡すと、そこはラブリッサ商館の自室だった。



 ――ダァンッ!



 音と共に扉が揺らぐ。



 まだ夢か――?



 俺は下着とシャツのままベット脇のスリッパに足を通し、揺るぐ扉を恐る恐ると開けた。


 瞬間、白い突風が吹き込んで、残像現象を起こしながら躍動した。


 目にも止まらぬ軸足の踏み込み(ステップイン)、一刹那の体重移動(シフトウェート)、腰の回転が伝達したコンパクトな腕の振りが、握り固められた拳を唸らせる。



 ――ドキュッ



「は、がぁ――ッ!?」



 という空気のマウスピースが口から溢れ落ち、胸部を覆う肋骨の下から二本が完全にへし折れた。


 角度も場所も申し分ない、聖なる魔力の宿ったリバーブローである。


 いっそ意識がハッキリとする激痛、文字通り目も覚めるような一撃に、とてもじゃないが立っていられない。


 俺は安々とダウンし、子犬のように体を震わせた。



「四時です」



 鈴鳴の声による時報に目を上げると、鎮守の森の湖畔を思わせるサファイアブルーの瞳が俺を見下ろしていた。



「――なに、が……?」



 どうなっていると言うのか。


 俺は確か、レアード卿の別邸でサフィアと――



 ――帰れ



 思い出そうとすると、サフィアのズドンな発言だけがハッキリとしていて、その他のことが朧ろげだ。



「早く着替えなさい」

「……」




     ○


 いつもどおりの灰色の神父服に着替えた俺は、彼女と肩を並べて城南地区のロードワークに出た。


 朝もや立つ街並みは、魔物と賊の被害のせいか早朝と言う以上にひっそりとしている。


 今日は木曜だそうで、レアード邸に居た日曜から既に丸三日が経過している事になる。


 もっともケインを治療し、サフィアと話していた辺りで日は越えていたと思うのだが、やはり記憶が定かではない。


 体を動かしていても、現実感がまるでなかった。



「ウィルが」



 ブロンドのテールを揺らしながら、彼女がチラリと俺を見た。



「ウィル?」

「ウィルが気を失った貴方を連れてきたのよ」

「……なぜウィルが」

「フラガラックの背後関係を探って貰ってた。援助者はマンフレッド・レアード卿なんですってね」

「――ッ」



 俺は呼吸を乱した。


 レアード卿の正門で、慣れ親しんだ気配を感じた気がする。



 そうか、あれはウィルだったのか――



 大聖堂監察の長である彼女が、フラガラックとレアード卿の関係を知ってしまったと言うことが、どういう事態を招くのが俄かに想像出来なかった。


 ケインは監察や騎士団にレアード卿が背後にいることを知られたく無かったはずで、自分の首で新結界案と冒険者雇用制度が通る事を望んでいた。


 もちろん俺は、極刑に処されるであろうケインの捕縛など望んでないが、彼の本懐を遂げさせてあげたいと言う思いもなくはない。


 アイリアと似た葛藤の境地にある。



 聖堂監察は、どう動くつもりなのか――



「まさかサフィアまで関わっていたなんてね。盲点だった」

「そんなことまで知ってるのか……」

「貴方をウィルに引き渡したのはサフィアだから」

「なんだって?」

「貴方が気を失った後で、ウィルがケイン達と接触したのよ」

「……」



 状況が全く理解できない。



「大聖堂はフラガラックの撲滅を見合わせた状態にある」

「なに?」

「……」



 彼女は何処か複雑そうな目をし、魔力を小刻みに揺らがせていた。



「謝まった方が、いいのかしらね」



 彼女が目を細めて蛾眉を顰めた。



「……何を?」



 俺はチラリとその様子を見やって聞いた。


 何をどう考えても、全力の謝罪が必要なのは俺である。



「私がラブリッサに顔を出さなくなった数日間は、貴方に与えたお休みのつもりだったのだけど」

「休みだったの!?」



 静まり返った早朝の街並みに、俺の裏返った声が響き渡った。



「逆に追い込んでしまったようね」

「し、しかし、商館周りのあの監視の量は――」

「ああすれば、間違ってもフラガラックには走らないだろうと思っていたのだけれど」

「いや、抜け出しても、ケインに会う度胸は無かったんだが」



 本音である。



「二人とも、ガールズバーで騎士団の密偵に捕まったんですってね」

「ご存じですよね……」



 アイリアに何を言われても主な矛先はケインだったので気にならなかったが、彼女に差し向かいで言われると強烈な後ろめたさを覚えた。


 今は盾に出来るものが何一つないのである。



「すみません」

「何に対して?」



 サファイアブルーの瞳がジロリと俺を見る。



「いや……」

「今は私が謝っている途中よ。貴方に謝罪なんか求めてない」

「すみ――」



 反射的に口をついて出る謝罪を飲み込んで、俺はちょっと考えた。


 以前、頭を掻こうとしたとき、「止めなくていい」とか言われたような気がする。



 彼女はこの場合、何をどう求めるだろう――?



「謝罪を求められていないのに、謝ってすみません」



 理路整然と謝ってみた。



「受け入れないと、尾追い行動(テールチェイシング)になりそうね」



 彼女に言われて俺はふと首を捻った。


 謝罪を求められていないのに謝ってすみません――と、謝ってすみません――と謝って――以下略。


 謝罪の無限ループが可能なロジックを作ってしまったようだ。



「――フラガラックに、走ったなら走ったでね」

「うん?」

「貴方を追い立てて、ケインの側に置いておこうと計画していたのよ」

「……え?」

「思い通りにはいかないものね。今回はつくづくそれを痛感させられた」



 彼女が感情の消えた声で言った。



「ケインの側に、俺を……?」

「過激派なんて呼ばれてるフラガラックの行動は、現状では唯一の結界維持の方法です」



 戒律の番人が大結界への不正接続を容認した瞬間だった。



「「……」」



 俺は走りながら黙って彼女の言葉を待ったが、彼女も押し黙ってしまった。



「……でも、君はケインを捕まえようとしていただろ? そのためにウィルに騎士団との連携の『渡し』を頼んだんじゃ――」



 彼女がチラリと俺を見る。



「まさか貴方に邪魔されるとは思っていなかった。……サフィアや、ケインの事は覚えているのね」

「え?」

「……」



 彼女がまた黙る。


 リディアの南城門までたどり着き、俺と彼女はロードワークの折り返しに入った。



「ケインを捕まえられないなら捕まえられないでね」

「うん?」

「貴方を送り込んで、『渡し』にしようと思っていたのよ」

「『渡し』?」



 橋渡しの、「渡し」に違いない。



「……」



 俺は頭の中で、事実を整理する事にした。



 彼女は騎士団と連携してケインを捕まえようとした。


 俺をケインの側に置いて「渡し」にしようとした。


 彼女は今、フラガラックの活動を容認している。



 それはつまり――



「……君は、ケインを救おうとしていたのか? 活動を大聖堂に認めさせようと?」

「思い通りにはいかないものね」



 彼女が自嘲気味にそう呟く。



 本当に――?



 起き抜けリバーブローで、何かの度に鞭シパァーンで、ワイン瓶で火打石の香りを再現する彼女が、本当にそんな事を?


 しかし、そう考えれば全ての辻褄が合うようにも思う。


 俺は足を止めた。



「……台無しにしているのは、全部俺か?」

「貴方のせいではないわ。私のやり方が不味いだけ」



 彼女も足を止めて振り返った。



「監察の捕縛計画を邪魔したのは俺だ。密かに与えられていた『渡し』役をこなそうにも、結局サフィアに追い返された。ケインが極刑を免れる機会は、これまで何度もあったのに……」

「過去形で終わるな」



 彼女が厳しい口調でピシャリと言った。



「『もし』の話で自分を責めてどうすると言うの? 反省はいいけれど、貴方は振り返るばかりで改善をしようとしない」

「しかし、俺は――」

「私だって上手く出来てない。良かれと思ったことが裏目裏目に出てばかりいる。その度に出来る限りの改善をして――それでも上手く事は運ばない」

「俺が邪魔ばかりしているからな」

「自分の話ばかりするな」



 またピシャリと彼女が言う。



「……」

「レヴィ、私が言いたいのは『こんなに大変なの』じゃない。『貴方だけではない』ということ」

「俺だけじゃ、ない……?」



 俺は彼女の言葉を繰り返した。



「上手く行っていないのは貴方だけではない。皆が皆、生という苦しみの中、試行錯誤で前に進んでいる。暗中模索で歩いている。それが人の生というものよ」



 人生――



「ああ、それで思い出せた。サフィアがウィルづてに話したんだな」



 意識を失う前のサフィアとの問答を思い出し、俺は頭を掻いた。



「全てを完璧にこなせている人なんていないわ。誰しもが数多くの失敗を経て、納得の行かない成功を手にしている」

「その一つ一つが人生を歩み続ける力となる――と?」

「そんなところね」

「……恥ずかしい限りだが、俺は歩む力以前に理由と意味を探している」



 俺は髪をグシャグシャにして溜息をついた。



「んー……?」



 彼女は目を伏せて口元に拳を構えた。



「貴方は今、自分が何故生きているのか、その意味を探し求めていると言うのね」

「恥ずかしいだろ?」



 真面目に問われると、やっぱり恥ずかしい。



「生きる意味なんて、自分で決めていいことだと思うのだけど」

「それが決められないから、探しているんだ」

「決められないのはなぜ?」

「何を望むのが正しくて、何が間違いか、答えが出ないからかな」

「貴方は……何に対して正否を求めていると言うの?」

「自分以外の、全部」



 俺の答えに彼女が黙った。



「他者に対して間違ってないよう振舞っているつもりが、気が付けば破戒僧の遊び人だ。その原因が、無意識で逃げを打つ自分の性質だと言うのは、取り敢えず理解出来たわけで……」



 どうすれば、人に迷惑のかからない生き方になるのだろうか。


 どうすれば、俺は生きることを許されるのだろうか。


 どう生きれば――



 思考のコインがノーを大量生産し、意識が遠のき始める。


 「寝逃げ」を超える「落ち逃げ」を習得しつつある自分に、俺は頭を振って苦笑した。



「……これを貴方に返しておく」



 彼女は懐から一枚の紙を取り出して、俺に差し出した。


 俺がラブリッサを出て行く時に残していった書き置きだった。



「貴方の言葉通り、恥ずかし文面ね」

「……」



 俺は書置きを受け取りながら。頭を掻くしか無かった。



「大聖堂監察の神官長として命じます」

「何でしょう」

「その書き置きを、今後、破棄投棄しないこと」

「うん?」

「今の貴方は、それが『逃げ』だと言う事を自覚できるのでしょう?」

「ええ、まあ……」

「ならそれは大事にとっておきなさい。それが貴方の進んだ一歩を消さない方法」

「……」



 「逃げ」を自覚した今、逃げの結晶たるこの書置きは、今すぐにでも鼻をチーンして捨ててしまいたい一品である。


 しかし彼女は、捨てるなと言う。


 逃げた過去の自分から逃げることを禁じられてしまった。


 「目を背けるな、忘れるな」と、そう言うことらしい。



「『し』が抜けてて恥ずかしかった」

「え」



 彼女の追撃に、俺は自分の汚い文字を目で追った。


 文中、確かに「し」だけが脱落している。



「子供みたいな事をするのね。『しぬき』だなんて」



 そう言って、彼女はテールを振ってまた走り出した。



 しぬき――?



「いや、違う、違うぞ!? ただの脱字で――わざとじゃない!」



 俺は慌てて彼女の背中を追った。



 ――ごめんなさい



 背中越しに、彼女がボソリとそう言った気がした。


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