偽りの世界
装暦2100年世界は機械が全てを制御するようになる
人は働く事を忘れ、ただ日々退屈な人生を歩む世の中
そんな植物みたいな人間がまさかあんなものを作り出してしまうとは
過去の学者は光の速度を超えることができればタイムスリップする事もできるだろう
全てを制御するPCが特殊な加速装置を製作しろとはじき出す
規模としてはドア一枚分ほどの薄い液晶テレビみたいなもののような
そのドアをくぐればどこに出るのだろうか
そして学生である栢山雄司が生産に成功させる
それを使った人々は失踪というより行方不明になる事件が多発し政府も回収を試みているが
設計図までも流れ回収は不可能の域にまで達していた
光の速度を超えた科学と機械の物語が今始まる
プロローグ 第0話
「ふわぁ・・・、眠いなぁ」
俺は神矢永智、こんな機械社会でも学生をやってるごく普通な高校生だ
ただ学校に行って勉強して帰ってきてネットをする、こんなつまらない人生しか見えなかった
「なんかニュースとかないのかなぁ・・・」
ただなんとなくつけたニュースそれが俺の生活、人生を変えてしまうことになるとは
『栢山雄司さんが転送装置を改良し加速装置を搭載した結果が人を消してしまう死の装置だった!?』
見間違いじゃない、テレビに映っているのは間違いなく自分の従兄弟の栢山だった、逮捕されている自分の従兄弟、すごく変な気分だった
完成したときはメディアは持ち上げて神だとか天才と持ち上げて何か問題が起これば手のひらを返す
「あいつ・・・これのせいで捕まったのかよ」
昨日栢山から届いた転送装置、使ってみようと思いつつ明日でいいやと今日使ってみるつもりだった
そしてテレビがこう続く
『この装置を使い消えた人は約10万人規模といわれており安否の確認などが最優先で行われています』
10万人・・・それだけの人が消えたのか
電話が鳴る
「ん?もしもし?」
「お~い、神矢く~ん、今浩介君とそっち行ってるからその転送装置使ってみようよー」
電話の相手は悠木佐奈、一番付き合いの長い友達だ、もう一人は仲林浩介、こいつとも付き合いは長い
「お前ニュース見ただろうが、危ないからだめだって・・・」
「へたれだなぁ、永智よ、男にはやらなきゃならないときがあるんだぞ!!」
浩介が馬鹿な事を言う
「やだぁ~こーすけくん、私女だよ」
どこのバカップルだよ・・・おい
「というわけで、もうお前の家の前まで来ているから出迎えよろしく!」
「あ、ちょ・・・」
ブツッと電話を切られる
部屋から外を覗くと手を振る二人の姿いつもの事だ
「空いてるから入って来い」
窓を開けて二人に向かって言う。待ってましたといわんばかりに乗り込んでくる
「ほぉ~、これが噂の転送装置かぁ~すごいねぇー」
佐奈がぺたぺた触りまくる
「よ、よせって」
俺が近寄った直後一瞬あたりが真っ白になった
「何だよ・・・これ」
部屋から移動した・・・と言うより部屋がなくなった、いや人だけ切り抜かれたそんな感じだ
「でれねーぞ、永智どうするよ?」
浩介は危機感なく笑いながら言う、佐奈も笑いつつも不安な表情が分かる
「どこに行くんだよ俺たちは・・・・」
こんな事をぼやくと景色はまったく変わった場所に出てくる
「な・・・どうなってるんだよこれ!!」
第1話 偽りの世界
「なんだよこれ!!」
浩介が絶句する、佐奈は黙ったまま喋らない
「佐奈?平気か?」
座り込む佐奈に俺は手を差し伸べる
「ごめん・・・ごめんね!私が触ったばっかりにこんな事になって・・・・ごめんね」
泣きじゃくる佐奈、かける言葉が見つからない
「大丈夫だって!俺ら3人でできないことなかったじゃんだから元の場所に戻れるって!だから佐奈泣くなよ」
俺は今気付いた、とんでもない違和感に、いつも見上げればそこにあった大型観察衛星がどこにも見当たらないそれに目の前に広がる景色と自分たちのいた場所はまるっきり違う、そして近づいてくる犬?
「犬・・・?いやあんな牙を剥き出した犬がホイホイいてたまるか・・・」
ウルフ?だろうこっちに気付いて走ってくる
「浩介!佐奈を頼む!」
落ちていた木の棒を拾い立ち向かう
「永智よせって!逃げた方がいい」
浩介が止める、間違いなく向こうはこっちを殺すつもりでいるだろう
「もう遅い、頼んだぞ」
無我夢中で前進する、ゲームで見たような動きなら勝てる牙をむけ襲い掛かる、噛まれたらただではすまないというのが分かる
「こいつ・・・なんて力だ・・・」
木の棒を噛まれ引き離そうとするがびくともしない
「永智!!後ろ!」
背後にはもう1匹いた、だがもう遅かった
「いってぇ・・・体当たりかよ・・・」
木の棒を拾い構える
「やめろって永智お前が死んじまう!!」
浩介が必死に止める
「ここで逃げても俺らの足じゃ追いつかれる!引くわけにはいかない!!俺は大丈夫ださっさと行け!!」
「絶対死ぬなよ、助けを呼ぶからそれまでがんばってくれよ」
浩介は佐奈を背負って走る
「ははは・・・こりゃやべぇな・・・」
わき腹から血が滲む、体当たりといったがほんとは噛まれていた
ウルフの連携は完璧、恐らくかみ殺されるのも時間の問題だろう
「ゲームと同じ・・・、どうせ死ぬなら特攻して華々しく散ってやろう」
やああああああ!!こんな力どこに眠っていたんだろうか、自分の限界を超えているのが分かる
一撃で1匹を吹き飛ばし倒す
「あと・・・1匹!!」
みんなを・・・守る!
「くらえええええええええ!!」
上から木の棒を叩きつけ、下から殴り上げる、力なくウルフは倒れ、残ったのは自分一人になる
「はぁはぁはぁ・・・火事場の馬鹿力か・・・」
なんとか勝つことはできたが歩く力も残っていないとりあえず座って体力の回復を待つことにする近くの草むらからガサガサっと音がした
「誰かいるのか!」
音のした方に叫んだ
「逃したウルフがそっちにいったんだけど大丈夫だった?」
草むらから女の子が飛び出してきた
「だ・・・れ・・・?君?」
武装しているという地点で何かがおかしい気がした
「私は、シャイル・ファルティール、すぐ近くの村の住人です、あなたは?」
よくみると綺麗な顔立ちをした子だった
「俺は神矢永智、学生だ」
というか・・・言葉は通じてるけど名前の感じが違いすぎる
「カミヤエイジ?ガクセイ・・・?どれが名前・・・?」
自分は今気付いたこんなおかしな転送装置を使ったならこんなおかしなところにきても不思議じゃない
「永智でいいよ、とりあえず友達を助けに行く」
立ち上がり木の棒を持って歩き出す
「待って、そのままいけば君は死ぬよ」
そのまま・・・?どういうことだ、さっぱりわからない
「それ以上は、ボスウルフの縄張りよ一人じゃ危ないわ」
シャイルが先行して森に入る
「あのさ・・・俺この世界の事まったく分からないんだ、サラッとでいいから教えてくれないか?」
おかしな奴だと思われただろう、でも分からないのだから聞いて不便はないだろう
「この世界というよりこの大陸は新天地フィアティニスよ、たしか装暦2140年ぐらいに地殻変動でできた大陸なんだけどモンスターとかはいっぱいいるし、無人のはずなのに村があったり街やいろいろ存在してるんだ」
「ちょっと待って、今装暦何年だ」
自分の生きていた時間じゃない・・・、遥か40年先の話
「装暦ってもう終わったじゃない?今は平暦740よ?740年前に終わってるよ、それに装暦が終わったのは地殻変動で磁場が発生して機械が全部壊れて終わっちゃったんだよ」
俺がいた時間・・・2100年から40年後に壊滅して新しい大陸までもできてしまったというのか自分は今元の時代から780年先の世界に存在している
「転送装置とかはあるのか?」
これがあればこの先帰る事だってできるだろう
「そんなものないない、あったら苦労しないよ、君っておかしな事言うのね、あははっ」
はじめて笑ったのを見た、可憐で美しい、高貴な感じまでもするのにどこか寂しさを感じた
「君はここで・・・」
と話しかけた途端、うわぁぁぁぁあ!、森に響く叫び声
「浩介だ!!」
俺は走り出す、だがその手を握って止められる
「待って、そんな武器じゃだめ、この武器どれかひとつ使って」
片手剣、両手剣、杖、弓といったところだ、カプセルに入っていて持ち運びは楽そうだという印象
「これを借りる!」
片手剣のカプセルを開ける
「へぇーそれが君の武器かーいいね」
赤い燃え上がるような刀身、剣の名前は・・・
「フレイムソード」
見たことはある、ゲームで見たものと同じ、剣を握り走りながら思う、手に馴染みまるで体の一部のように
感じるまで軽く、シャイルも後に続いて走ってくる
「浩介!」
開けた場所はありえない光景だった、血・・・というか分からない・・・考えたくない
「遅かった・・・、まさかこうなっちゃうなんて・・・」
目の前には浩介・・・もう息はない、死んでいる
「佐奈は!どこだ」
辺りを探す
「ここ・・・」
上から声がした
「佐奈大丈夫か、降りてこられるか」
ここで取り乱せば佐奈が自分を責めるだろう、だから俺は悔しさと悲しみを胸にしまって
「うん・・・ごめん浩介君が・・・私をかばって・・・」
なんていうかあいつも仲間想いだったから友達を・・・いや、好きな子ぐらい最後に守ってやりたかったんだろう
「浩介の分も生きて、俺たちは元の世界に帰ろう」
シャイルが近づいてくる
「君は・・・サナっていうの?君も戦う意思があるのならこの武器どれかひとつを選んで」
武器の並びはさっきと一緒だ、俺が片手剣を取ったからもう片手剣はないが佐奈はどれを選ぶのか
「杖・・・近距離は怖いから、せめて中距離で支援はしたい」
相当な覚悟だっただろう、あんな目にあって今度は戦うために武器を取れそれはとても残酷だ
「なぁあんた、俺らみたいな人は多いのか?」
手馴れているというより来るのが分かってたような手際の良さだった
「うん、多いよここ最近は特に多いかな、生き残っていたのは君たち二人合わせてちょうど50人」
50人・・・、学校で言うと1クラスとちょっとといったところか
「どれだけ死んだ?」
「ざっと1000人は死んでるよ」
生存率はざっと4~5%といったところだろう、その点を踏まえて自分たちはラッキーだったと考えるべきなのか
「ボスウルフを倒す・・・」
俺はシャイルにそういった
「無理だね、今の君じゃ勝てないよもちろん私がいても勝てない」
現実・・・勝てないのは事実だろう、ウルフでも苦戦したのに、ボスとなると数十体はいるだろう
「くそっ・・・」
己の未熟さを呪いながら森を出て村へ行く
「杖ってどうすれば魔法・・・というか技が使えるの?」
村に着いて佐奈はシャイルに魔法の使い方を教わる
「俺はどこか広場で寝る」
一人でうろうろし自然の絨毯をみつけて寝転がった
「俺の生きてた時代とか全然違うなぁ・・・」
ぼやいて目を瞑る
「お前、生き残りか?」
真横で声がした、声の主を探した、その男は太陽のように眩しく笑いながら俺に話しかけてきた
「友達・・・いや親友が一人殺られたよ」
目を瞑ったまま答える、思い出したくないけど、親友だった奴のことなんて忘れられるわけがない
「俺はディア・ファルスっていうんだ、兄ちゃんは?」
俺は起き上がり名前を言った、迷いなく真っ直ぐに
「神矢永智」
男は考えてからこういった
「日本人か、俺と一緒だな、本当の名前は杉崎裕也、ここでは本当の名前は隠すっていうのが掟だ」
名前を隠す・・・?なぜそんなことする意味がある、よく分からない無意味じゃないのか?
「なんで名前を隠すんだ?」
俺は納得できなかった、嫌いだったけど親からもらった名前を隠して生活するなんて
「元の世界とは違う世界だから違う名前の方がいいってシャイルちゃんの話だ、まぁ真面目な話をするとあれだもしかすると自分の子孫に出会っちまう可能性があるんだ、だから名前は隠さないと仮に元の世界に戻ったとき歴史が変わってしまうからなんだとさ、まぁそんなところだろう、歴史は塗り替えられるもんじゃない」
あいつも偽名なのか・・・まぁどう見ても日本人だしなぁ、歴史・・・かあんな薄い機械だけの歴史必要ないと思っている自分がいる、自分をつまらなくしたつまらないものだと
「そうだな、じゃ俺は今日からラザラスって名乗るよ」
俺の知ってるゲームの主人公の名前、片手剣で、強くて優しくて誰かの為に戦ういい主人公
「ラザラス・・・いい名前じゃねかよよろしくなラザラス」
変な奴だなとか思ったけどすごくいいやつだった、陽だまりにいるかのような気分だった
「ラザラスよ、俺はこの世界で彼女と親友をなくした」
こいつも辛い思いをしたんだ、俺と佐奈みたいに目の前で親友をなくしたんだ、辛くないわけがない
「そうか・・・お前も辛い思いをしたんだな」
こいつはたぶん俺が自分を責めないように笑ってくれているんだなというのが分かる
「だからよ、お前は生き残ったあの娘を守るために戦ってやりな」
ディア・・・それがこいつの名前、こういう奴がいるからみんな笑っていられるんだな
「サンキュ、ディア、俺らは今日からもう親友だろ」
笑ってそう返してやった
「ちょっと話しただけだけどな、まぁ悪い気はないわ、これからよろしくな親友」
ガシッっと拳を交わす
「そろそろあいつのところに行かないと」
俺は立ち上がりディアの方を向く
「まぁラザラスよ、焦らなくてもいい、ゆっくりこの世界で生きてみるのもありなんじゃないか?」
確かに一理ある、この世界は充実していて元いたとこよりもなんというか生きているっていう実感がわく
元の世界は機械が道を決め、何をするか全てが機械だった、そんなくだらない毎日を抜け出すためにあいつは
転送装置を作ったのだろうか
「確かにな、悪くはない、でももし戻れるならたまには戻ってみたくなるじゃないか」
振り返ってディアを見る
「俺は帰りたくない、帰っても俺は・・・二人の両親に合わせる顔がない」
すごく寂しそうな顔でディアは言う、その寂しそうな顔はしないで欲しい俺はそう思った
「そうか・・・ってかしけた面すんなって、お前は笑ってヘラヘラしてるほうが似合ってるよ」
こいつの心の傷はどれだけ深いのだろうか、自分にはとても耐え切れないものだろうと思う
「へへっ、柄にもなかったな!ほら!行ってこいよ」
バシバシ背中を叩かれる
「痛いってディアよせって」
俺は佐奈のところへ急ぐ
「佐奈いるかー」
シャイルの家に入る
「いるよ」
出てきたのは魔道服、というかアニメでいう魔女みたいな衣装で現れる
「だ・・・だれ?」
呆然と眺めていると後ろからシャイルに蹴られる
「こら!ジロジロ見ない!」
1mは吹き飛ばされたんじゃないだろうか?背中が痛む
「それに今の名前は佐奈じゃない、ミレイズだよ」
いつもの明るい佐奈だった、それだけでなにか勇気付けられる気がした
「もう大丈夫か?まだ休んでてもいいぞ?」
俺は心配になって言った
「いつまでも落ち込んでいられないよ、私は生きたい」
覚悟を感じた、俺よりもはるかに強い覚悟
「君も覚悟が足りないんじゃないかな?」
シャイルがニヤニヤしながら顔を覗いてくる
「うるせぇ、俺はミレイズとシャイルを守る為に戦う」
この二人の顔を二度と曇らせないそう覚悟に決めた
「そういえば君たち、通信機器は持ってる?」
シャイルに聞かれる
「携帯ならあるけど磁場で壊れちゃったなぁ」
俺の携帯は壊れて電源すらつかなくなっていた
「ここに来た人、特に信頼の置ける人に渡すようにしてるんだけど君たちは十分に信頼できるからこの
機器をあげる」
携帯端末と言うより小さな機械だった
「これは身に着けているだけでいいタイプのもの、使い方は腰に固定して装着、それからこれはアイテムイベントリとしても利用できるの、その前に起動させるにはこの機械に意識を集中させて起動って命じるの」
言われた通りにやってみる
「システムが動いた、この目の前に現れてる文字は何だ?」
数字、英語いろいろ混ざっている
「それは君たちの脳から読める文字を分析しているんだよ、まぁあとは機械がやるから我慢してね」
やっぱり未来なんだなここは・・・というのを思い知らされた
「文字が消えたな、で、これで使うにはどうすればいいんだ?」
起動したのはいい、だが使い方は分からなければただの宝の持ち腐れだ
「頭で・・・なんていうかPCのデスクトップを表示しろーみたいな感じで命令するの、口出さなくても念じるぐらいでいいから、ってわかんないかぁ・・・」
デスクトップ・・・・というより普通にPCをイメージでいいと思うぞ
「ん、できた、アイテムイベントリ、クエスト、メモ帳、それにステータス?なんだこれ」
ゲームみたいなおかしなものだ、現実なのにまるで遊んでいるだけのような感覚にもなる
「ステータスそれはレベルって言えば早いかな、敵を倒せば多少なり技術、とか技とかは磨かれるわけだよねそしたらあくまで具体的な数字で表現しようとした結果がそれだよ」
筋力、体力、魔力、幸運、剣スキル、槍スキル、杖といったRPGのようなものまでがちらほら
「これHPがないよ?」
ミレイズが指摘する
「あなたは生身の人間よ、HPなんかで現せないと思うけど」
まったくもって正論だ、ゲームなら瀕死でもスイスイ動く事ができるだがこれは生身の人間だ
もちろんダメージを受ければ血も出る、瀕死になれば動けなくもなるだろう
「確かにな、俺らはこの世界に来たかったわけで転送装置を使ったんじゃない、でもこれは現実だ遊びじゃない」
日々退屈に思ってたあの世界はもうない、俺にとっては充実した世界、帰る術も分からずただ呆然とするより
「ただ呆然とするより、今を生き抜いて助け合って生きていこうよ」
シャイルがニコニコしながら俺とミレイズに笑いかけてくれる
「俺とミレイズは西暦2100年から来た訳だが、シャイルはいつの時代の人なんだ?」
これは聞くべきだったのかどうなのか・・・
「私は・・・2135年から来たのよ、両親は機械いじりのバカだったわ、私はそんな人生嫌だもの」
シャイルも自分のつまらない人生に嫌気が差していたんだなと言うのが伝わる
「俺も同じようなもんだ、確かに人生がつまらなく思ってたでも今の状況はただ追い詰められているようにしか思えないけど、生きるためなら戦う」
帰るための方法をあきらめたわけじゃない、でもここで駄々をこねても無駄と言う事は誰もが知っている事だった、そんなときだった、ディアの声が村に響く
「ウルフの群れだ!!みんな気をつけろ!」
夕方の出来事だった、夜行性のはずのウルフが襲ってきている
「俺はディアと合流して戦う、もう犠牲は出したくない!」
俺は家から飛び出す
「ラザラスそっちだ!」
ディアが叫ぶ
「ち・・・邪魔だ!!」
片手剣を振り上げ1匹を始末する
「こっちにこい!!」
ディアのほうへ走る、後ろから足音がする軽く4,5匹はいるだろう
「へ、まさか襲撃されるとはな、ラザラス蹴散らすぞ」
ディアの使っている武器は両手剣、軽い武器を使っているからか動きに無駄がない
「おりゃあああ!」
3匹一気になぎ払う
「すげぇなお前、今度教えてくれよ」
額に汗をかきながら言った
「いいけどよ、次来るぞ」
あっちこっちからウルフが現れる
「どこかにボスがいるはずだそいつを倒せば形勢は一気にひっくり返る」
自分の横すれすれにファイヤーボールが飛んでいく
「え・・・じゃなくてラザラス大丈夫」
ミレイズが走ってくる、その後ろにはシャイルもいた
「こっちにボスがいる二人とも手伝って」
シャイルが指示を出す
「はいよ、おまかせあれ」
ディアは前進する、続いて俺も走る、見た瞬間鳥肌と言うより身の危険を肌は感じた
ガルルルルルルルッうなる声、ゲームとはわけが違う、間違いなくこいつに負ければ死ぬだろう
「ミレイズは火の魔法で攻撃して、ディアとラザラスくんで抑えてもらう!」
シャイルは指示を飛ばし雑魚を蹴散らす
「よし!いくよ!我が内に秘めし小さき灯火よ、全てを焼く業火と化せ!フレイム!」
前衛は一気に後退しフレイムが直撃する
火だるまになりつつもまだ大丈夫そうなボスウルフ、こっちの体力も限界が近い
「ラザラス、俺が切り込むから死角から一気に決めろ」
ディアが突っ込む、続いて視界の入らないとこから襲い掛かる
「あたれぇぇぇぇぇ!!!!」
俺の持てる力を全てこの片手剣に乗せて渾身の突きを放つ
この突きは易々とウルフの体を貫いた
ボスウルフは力尽き弾ける
「これって弾けたあとどうなるんだ?」
武器をしまいながら聞く
「元素っていうかそんなんになるらしい、まぁ自然に還るみたいなもんだな」
自然に還るか・・・・浩介も自然に還ったのかな・・・と思った
「そっか、俺たちがこの世界に来なければ死ぬ事はなかったのにな・・・ウルフもかわいそうな・・・」
生きるために相手の命を奪う、なんだか嫌な気分になった
「嫌な気分だろ?自分が生きるには相手の命を奪わないといけないんだ、でも俺たちは死にたくないただ生きたいだけなんだ・・・・あー・・・」
ディアがいきなりうなりだした
「お、おいどうしたんだよ」
慌てて近寄る
「腹減った」
・・・、こいつ・・・
「ぷっ、あっははははは」
ダメだ笑ってしまった、こんな世界で笑う事なんてないと思っていたのに
「笑ったな~このやろー」
なんていうか充実した日だった、失ったものは大きかったでも新しく得たものもすごく大きいものだった
浩介はいなくなってしまった、代わりはいない、でもこいつと・・・ディアといればその暖かさを取り戻せる気がする
「でも、このままじゃここの危なくなってきたね・・・、街へ移動も考えないといけないね」
深刻な顔してシャイルは今のこの村の状況を言う
「確かにな、今日は4人いたから良かったが、仮に今日ラザラスとミレイズちゃんがいなきゃ間違いなく
この村は全滅してただろうな、何か防衛策とか考えないといけないなー・・・・なんだけど腹減った」
こいつ真面目なこと言ったと思ったら最後の言葉で台無しだな
「飯にするか、って食料とかあるのか」
よくよく考えたら何も採取してない気がする
「あぁ、大丈夫、アイテムイベントリに勝手に何か入ってると思うからそれ使って料理するよ」
シャイルがにこやかに言う
「とくになにもないなぁ・・・獣肉ぐらいしかないや」
シャイルに手渡す、ディアは木の実を手渡す
「なんでもいいから腹減った」
ディアがシャイルを眺めながらつぶやく
「はいはい、ちょっと待ってね、まぁ座っててよ」
ガラガラ音を立てて椅子を引いて座る
「しっかし、ラザラスよー最後の攻撃はすごかったなぁ、今日はじめて剣握ったんだろ?なかなか才能あるんじゃないのか?うらやましいなぁこのこのぉ~」
あくまでゲームの真似事でしかない、自分を磨くには自分の技を磨かなくてはきっと生き残れない
「いや・・・その点を考慮してもやっぱりまだ俺は初心者だ、もっと経験を積まないと生き残れないと思う」
そうだなぁ・・・と3人で考える
「考えてもお腹空いてちゃなにもできないよ、ほら食べよ」
見たところ家庭料理のような感じだった
「こうやって囲んで食べるの何年ぶりだろうな・・・」
俺はあまり家庭環境が良くなかったというか親が共働きであまり構ってくれなかったっていうのもあったからかもしれない
「私も久しぶりかもしれないなぁ」
ミレイズもそうぼやく
「そういえば残りの46人はどうしてるんだ?」
村を見て回ったが自分たち4人しかいない
「他の人たちは北の方にある高い塀に囲まれた街にいるよ」
フィールドマップを取り出しおおよその距離を教えてくれる
「だが、この距離だと途中野宿することになるんじゃないか?」
迂回路を回るしかない直線で行くことができればすぐ移動できるだろう
「この辺りには凶暴な水のモンスターがいるから橋を架けるにしても危なくて断念してる、
退治できれば早いんだけど・・・」
4人でうなる
「この辺りの水域のモンスターは可能であれば対処する、無理なら戦力をそろえてからにしたほうがいいだろう」
ゲームのような考えでも、いざ戦うのは自分、作戦の失敗は自分が死ぬ事と同じ
「慎重に考えるべきだよ、相手が水場にいることが前提、こっちの戦力も限られてるし」
戦力が限られている、仮に全員集めて50人集まったとしても危うい戦力だろう
「これはやめるべきだよ、無理に危険を冒す必要なんてない」
ミレイズが止めにはいる
「確かに、これから人数は増えるかもしれないが、今は一人欠けたら今後どうなるか分からない」
俺は一旦この作戦は保留にする事にした
「俺はまぁ疲れたから寝る」
しゃべらなかったディアが寝ると言い出した、まぁ他人まかせなんだろう
「ちょ、ちょっとここで寝ないでよ」
シャイルが慌てて起こしにかかる
「zzz・・・・・すぴー」
もう寝ている、お構いなしな奴だ
「そっとしといてやれ、明日街に移動しよう」
迂回路で途中野宿するということで話し合いは終了した
「ここの正面の家で寝てくれるー?ちょっとこの家じゃ流石に4人はきつくて」
シャイルが困り気味に頼んでくる
「あぁ・・・こいつどうするんだ?」
ディアを指差して聞く
「このままでいいんじゃないかな・・・今は暖かいし」
ということは俺一人むこうか・・・
「寂しいな・・・」
ブツブツいったがまぁ仕方ない
「じゃ私も向こう行きますねー」
ミレイズが走ってくる
「いいのか?シャイルと一緒の方が安全だぞ」
内心自分は嬉しいと思っている、一人は寂しいからその申し出はありがたかった
部屋の構造はシャイルの家と反転しているだけだった
「じゃ俺は明日に備えて寝るから、お前もさっさと寝ろよ」
ミレイズに一言言ってベットに潜る
「ねぇ、生き残る為に戦うって言ったけど私は戦うのが怖い」
ミレイズが俺に向かってそう言った
「俺だって怖いさ、でも生きるために戦うそれは仕方ない事なんじゃないかな」
仕方ない、これで済ませれば楽だけどそれでも納得できない事がある
「浩介君のことも仕方ないで済ませるの?」
「あいつのことは俺も悔しい、言葉じゃ表せないぐらいむかついてるさ」
くやしい、悲しい、自分を責めたくなるでもそれで後ろを向いたってあいつは戻ってこない、誰だってそうだ、わけの分からない土地で死にたくないだろう、俺も死にたくないだから戦う
「俺はまだ生きたいんだ、だから元の世界に帰ることをあきらめない」
別に帰ったところでまたつまらない人生を歩むんだろう
「ごめん、変な事聞いた忘れて」
俺は安心したのだろうか・・・すぐ闇の世界へと堕ちていった
最後まで読んでいただきありがとうございます
どうも作者のラザにゃんと申します、今日1日で1話仕上げたのでやや薄い内容だったかもしれませんが、評価次第で話の長さを変えていこうと思っています。
ニコニコのユーザー放送もさせていただいているので知っている方も知らない方もよかったら評価の方をお願いします