夏ボーナスの危機
お題『ゲーム化した特上のカルビ』
制限時間:30分
夏のボーナスが出た──が、昨今の価格高騰によって会社の資金も潤沢ではなく、皆が楽しみにしていたボーナスの削減が行われた。
大きな会社であれば、労働組合などを発足させているだろうが、俺たちが勤めているのは、ご家族経営なアットホームが売りの小さな会社。
まぁ、分かるよな? なっ?
ということで、部長である俺は、なけなしのボーナスで部下たちを焼肉に連れていくことにしたのだが、思い立つのが遅すぎて、食べ放題の店はどこも予約でいっぱい。
部下が「ここ美味いらしいですよ!」と検索して見せてくれたのは、カルビ一皿五千円とか白目になりそうな、店だった。
「お、おん。そっ…………そこ、良さそうだな。だが今から入れるかな……? アレなら別日に――――」
「四人、今から大丈夫だそうですよ!」
「ぅ……うわぁい! 金曜のこの時間にラッキーだったな!」
うん、ラッキーだったよな? ラッキーだよな? だって、予約なしで入れるんだからさ……?
会社からは車で三十分の店。
俺は飲まないからと運転手を買って出た。飲まないってか、飲む気分になれない、五千円。
荷馬車に乗せられた子牛のような気分で自ら運転し、焼き肉店に到着。
店構えは古き良き、昔からある個人経営の焼き肉店。
木製のドアを恐る恐る押し開けると、カランカランとカウベルならぬドアベルの音が鳴り響き、俺の中の子牛が半泣きになった。
「いらっしゃいませー! お待ちしておりましたー!」
店内には明るい雰囲気のおばちゃん店員と、ビールジョッキ片手に談笑しているスーツ姿の男性たちがいた。
おっ、良い感じの店だな。
初めはそう思った――――。
飲み放題含め、遠慮なく色々と注文する部下たち。
いやまぁ、俺がそう言ったんだが。
総額八万くらいに突入した辺りで、ボーナス全部飛んだなと覚悟した。
そう、俺のボーナスは十万だった。ドン引きだ。給与一ヵ月もないなんて、まじでドン引きだ。
「部長ぉ! この店一番のオススメらしいんすけど、頼んでいいっすか!?」
「んひゅぅ、うん、いいいいぃいぃよぉ?」
変な声が出た。
だって、メニューに『A5ランク 特上カルビ 12000円』って書いてあるもんだから。
奢るって言ったんだ。男を見せろ俺。
そうして飲み食いしていると、スーツの先客たちが会計前に何やら店員と騒いでいるのが見えた。
耳を澄ますと『誰か一人』とか『滑らない話』とか『一番高い皿がタダ』とか聞こえてきた。
更に耳を澄まし、更に更には盗み見もする。
スーツ客の一人が何やら身振り手振りで話すのを、おばちゃん店員が微笑んで聞いている。
おばちゃん店員の手にはマルバツブザーが握られていた。
スーツ客が話し終わりドヤ顔。仲間たちはゲラゲラ笑っている。
「ブッブー」
店内に響く、無情な機械音。
スーツの先客たちは、滑らない話を披露した仲間の背中を叩きつつ、ゲラゲラ笑いながら金を払って帰って行った。
それらを見送ったあと、テーブルの片付けをしていたおばちゃん店員に勇気を振り絞って声をかけた。
「お、おばちゃん、さっきのなに?」
「あぁ、この店のイベントでね、会計が十万越えたテーブルは、私が気に入った滑らない話をしたら一番高い一皿タダにするってゲームなの」
――――ゴクリ。
喉が鳴った。
俺のやることは決まった。
ここ一番の滑らない話をする時だろう。
結果か?
勝ったさ。
勝負には勝った。
何があったか知りたい?
まぁ、俺と飲む機会があれば教えてやってもいいぜ?
―― 終わり? ――
読んでいただきありがとうございます!
とあるイベントで書いたものかです。
おま、30分あったらもっとやれたろ! 俺たちの旅エンドじゃねぇか…… なんか知らんが頑張ったな☆とかいう感じでいいんで、ブクマや評価など入れていただけますと、作者が大喜びしますヽ(=´▽`=)ノ




