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第8話「警察を超える瞬間」
現場付近。
パトカーのサイレンと無線が交錯している。
野次馬がざわめく。
「遅い」
俺は呟く。
氷室が部下に問う。
「状況は?」
「被害者は軽傷、犯人は南方向へ逃走中です」
(予測通り)
「逃走ルートは?」
「まだ特定できていません」
「南だ」
俺が言う。
氷室が一瞬だけこちらを見る。
(判断するか)
「南を封鎖しろ」
即断だった。
無線が飛ぶ。
部隊が一斉に動く。
(悪くない)
だが――
「次は右だ」
「何?」
氷室が振り返る。
「十字路で曲がる」
「根拠は?」
「再現だ」
沈黙。
一瞬だけ迷い。
そして――
「従え」
指示が飛ぶ。
数分後。
無線が入る。
「犯人確保!」
空気が止まる。
氷室がこちらを見る。
「……本当に見えているのか?」
「言ったはずだ」
「再現してるだけだ」
氷室は小さく息を吐く。
「警察より早いな」
(当然だ)
「だが問題がある」
「何だ」
「お前がいなければ、止められない」
(核心だな)
氷室が続ける。
「だから使う」
「完全にだ」
(依存が始まったな)
その時、俺は理解する。
(これは危険だ)
警察が俺に依存する。
つまり――
(俺がいなければ崩れる)
氷室が低く言う。
「次はもっと大きい」
「もう見えてるのか?」
少しだけ考える。
そして答える。
「いや」
一拍置く。
「これから来る」




