第6話「無能の評価が変わる日」
翌日。
署内の空気が、妙にざわついていた。
「昨日の件、知ってるか?」
「殺人未遂、未然阻止だってよ」
「しかも単独らしい」
(広まってるな)
俺は何も言わず席に着く。
その時――
「神城」
係長に呼ばれる。
(来たな)
「ちょっと来い」
会議室。
扉が閉まる。
「お前、何やった?」
「何もしてません」
「ふざけるな」
資料が机に叩きつけられる。
「昨日の件、お前が関与してるだろ」
(やっぱりバレてるか)
「偶然です」
「通用するか!」
声が荒くなる。
「今までのズレた報告……全部これか?」
沈黙。
係長が睨む。
「……お前、本当は分かってたのか?」
(やっと気づいたか)
「どうでしょう」
濁す。
その時、ドアが開いた。
「失礼する」
氷室だった。
空気が一変する。
「この件、こちらで預かる」
係長が固まる。
「は……?」
氷室は一歩踏み込む。
「神城隼人を外したのはお前たちだ。不要なら、こちらで使う」
沈黙。
完全に場が支配される。
「ち、ちょっと待ってください」
係長が声を絞り出す。
「命令だ」
氷室の一言で終わる。
反論は許されない。
係長は黙るしかなかった。
氷室がこちらを見る。
「来い」
会議室を出る。
廊下を歩きながら、俺は聞く。
「いいのか?」
「何がだ」
「現場から外したんだろ」
氷室は淡々と答える。
「無能は使わない」
一瞬、間を置く。
「使える奴は使う」
(評価が変わったな)
「だが勘違いするな」
氷室が続ける。
「お前はまだ“管理外”だ」
「知ってる」
「だから監視する」
(やっぱりか)
だが――
(それでいい)
「逃げるなよ」
氷室が言う。
「逃げるのは犯人だ」
短く返す。
氷室はわずかに口元を緩めた。
「……気に入らないが、合理的だ」
その言葉を聞きながら、俺は思う。
(完全に流れが変わったな)
昨日まで“無能”だった俺は、
今、捜査一課に引っ張られている。
だが――
(まだ始まったばかりだ)




